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これからは普通の人間として

手芸をしていたら
指に針が刺さってしまった
痛む場所をギュッと押したら
傷口から鮮やかな赤い血が
まんまるく指の上に乗った

自分の血は思ってた以上に
綺麗な赤い色をしていた

突然、私の口から言葉が飛び出た
「生きててくれて、ありがとう」

反射的に出た言葉に
何故か声を上げて泣いてしまった

私は今まで
信じていた人が私を雑に扱うのは
私の心と体の全てが
汚いからだと思っていた

自分のことをボロボロで黒と灰色の
マダラになった雑巾の様だと
いつも思い込んでいた

鏡を見るのも嫌になった

最近、知り合った人から言われた
「あなたは優しすぎるよ。
   きっと心が綺麗なんだね」

「優しい人の周りには
 人を支配しようとしたり
 人を利用しようとする
 タチの悪い人が集まってくるんだよ」

そう言われても
全然ピンと来なかった

だって私は汚れたボロ雑巾だから

でも血を見て気がついた
もしかして自分が思うほど
汚い人間ではないのだと

体の中はドロドロの
茶色く濁った血ではなく
綺麗な赤い血が流れている

心だって
こんなにたくさん傷ついて
我慢ばかりの日々だけど
自分から他人を傷つけないのは
心が汚くないからだと
思えてきた 

指に小さい絆創膏を貼る
傷口がズキズキ痛む
しばらくの間
血が滲んだ絆創膏を見つめていた


私はここ数年
何度も消えたいと思ってきた

でも、もしあの時消えていたら
自分の血が本当は綺麗だったことを
知らないままだった

自分が汚れきったボロ雑巾ではなくて
普通の人間なんだと知らないままだった

指の傷は痛むけど
気がつけてよかった

これからは普通の人間として
生きて行けるから


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