鬼との交信
【2014年5月15日】娘は3歳9か月
今回の育児コラムを書くにあたり、ネタを思い付けないでいる。ネタの宝庫であるはずの娘だが、今、目前に迫った公演のことで頭がいっぱいいっぱいであり、ネタを吟味する心の余裕がない。娘よ、許してくれ。なので、思い切って奥さんに育児コラムの代筆を頼んでみた。が、もちろん断られてしまったので、結局はフルタが書いている。奥さんから「鬼のこと、書いたら」とアドバイスをもらったので、鬼のことを書くことにする。
前に娘が鬼を怖がっているということを書いた。一時、ヘラヘラしていた時期もあったけど、まだ鬼をひどく恐れている。本来は、節分の時ぐらいしかパブリックシーンに登場しない鬼だけど、我が家では違う。24時間365日体制で、鬼が待機している。もちろん実在はしない。しないが、鬼という概念、鬼という虚像、鬼という信仰が365日、娘を監視している。悪さをしたり、言うことを聞かない時は、「鬼が来る」「鬼に怒られる」「鬼に食われる」と言えば、だいたいが…しゅんっとなり、テキパキ動き出す。この神通力はすごい。もう鬼にみかじめ料を払ってもいいぐらいお世話になっている。
しかし、これが仇となり、困ったことが起きた。
保育園への登園が遅刻気味の時に限り、僕が抱っこの要領で娘を抱えて、保育園まで走らなければならない。けど、前に抱っこをねだられた際、「鬼が空から見ているから、抱っこはできないんだ」と説き伏せたことがあった。娘は空を見上げて、警戒しながらスタスタと歩き始めた。この時の教訓が利いているせいか、抱っこされると空に向かって鬼と交信を始めてしまう。つまり、この抱っこが、非常の事態であることを、鬼に向かって説明するようになってしまった。空に向かって、大きな声で一方的に話す。
「鬼さん鬼さん!きょうはちょっとおそいので、だっこしてもいいですか?!」
娘なりに、なんとかして鬼に了承を得ようとしているらしい。朝方の道路は
通行人も多いので、恥ずかしい。しかし、今更、鬼はいないとも言えない。
<文・フルタジュン>
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