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人はなぜ対人関係で悩むのかを考える

こんにちは。
個人や組織の「変わる」を応援している凢内智香(おおち・ともか)といいます。

今回、日々の生活や仕事を通じて感じていることを発信し、共有するためにNoteを始めました。特に、多くの人や組織が抱える悩みについて考察し、その背景を解きほぐしてみたり、人生を豊かにするために役立つ行動・脳科学についても記していく予定です。

わたしのNoteが、少しでも皆さんの人生にプラスになる情報を提供できれば嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。

今回のNoteでは、企業や組織で起きがちな対人関係の悩みを取り上げて、その背景と解決のヒントをご紹介したいと思います。


すべての悩みは対人関係の悩みである


この言葉は、フロイトやユングと並ぶ心理学の巨人の一人で、「個人心理学」の創始者として知られている心理学者アドラーの有名な言葉です。

アドラーは、人間が抱える悩みや問題の根底には、必ず他者との関係があると考えました。分かりやすくいうと、職場でのストレスや家庭内の問題、友人とのトラブルなど、私たちが経験する悩みはすべて、誰かとの関係性の中で生じるものである、という考え方です。

アドラーは、これらの悩みを解決するためには、自分自身と他者との関係を見つめ直し、健全なコミュニケーションや相互理解を深めることが重要だとという考えに至りました。したがって、人間が抱える「悩み」を解消するためには、対人関係を改善し、他者とのつながりを強化することが必要だと説いています。

私たちは一人では生きていけません。毎日、誰かしら他人とコミュニケーションを取りながら生きていく必要があります。「袖すりあうも他生の縁」という日本のことわざは、このことをよく表しています。だからこそ、健全な対人関係やコミュニケーションを習得することで、自分自身もになるのです。

ひとは「正しい」では動かない



いわゆる賢い人に区分される論理的思考やフレームワーク、プレゼンテーションが得意なビジネススキルの高い人ほど、『わかりやすく論理的に説明しているのに、なぜか相手に通じない、動こうとしない。この人はやる気がないのか? 』と悩みの壁にぶつかることが多いようです。

多くの人が誤解している、もしくは乱用している「正しい(正論・論理)」の押し付けですが、結論をいうと、人は正しいだけでは動きません。なぜなら、誰しもが『自分が正しい』と思っているからです

衝突すると自分も相手もつらくなりますが、それでも人は変わりたくないと感じ、相手に勝ちたい、優位に立ちたいという心理が邪魔をします。自分が変わることを負けだと感じがちですが、実際には負けではありません。

実際、日本のビジネスの現場では、よくこの競争優位性に起因する心理対立が見受けられます。よく事故が起きるのは、管理職やリーダーと部下などメンバー間の対話の場です。このタイプの管理職やリーダーは、自分が正しいと思うことを押し付けるウラで、実は自分が優位に立ちたい、勝ちたい、相手を支配したいといった自己のメンタルモデルに気づいていません。

現代の日本企業における経営層・管理職層の多くはいわゆる「バブル世代(’65~’70年生まれ)」「ロスジェネ世代(’70~’82年生まれ)」が占めています。彼らは世代人口が多く同世代間競争が激しいという共通の経験をもっています。したがって社会システムとして幼少期から受検や昇格など序列が付けられ、その競争に勝つこと自体が自己のアイデンティと強く結びついています。

余談ですが、この二つの世代には顕著な違いがあります。それは競争への向き合い方です。バブル世代が競争に挑むとき、良きライバルの存在が励みとなる世代です。しかし、ロスジェネ世代は、個の能力で競争を勝ち抜くことに重きを置く傾向がありライバルの存在は重要ではありません。

とはいえ、両世代とも、管理職ポストについている=会社の評価が高い、すなわち『自分は周りと比べても優位性が高く「正しい」という評価を受けている存在だ』という価値観が無意識下にどっしりと鎮座しています。

したがって、この世代の多くは管理職研修などで傾聴・コーチングやD&I研修を受けたとしても、少子化で世代間競争が少なく、物心ついた時から不景気という中で育ってきた「ゆとり・さとり世代(’87~’04年生まれ)」などの異なる価値観や考え方に触れた途端に自己防衛が働き「競争」スイッチが入ってしまうのです。

あなたも見たことありませんか?

ミーティングの場で、異なる意見が出た時、その場で管理職などのランク(地位)の高い人物が、「正しさ」を持ち出して相手(おもに地位の低い人物)を言いくるめ、説得し、本人だけがご満悦の表情を浮かべ、相手は引きつった愛想笑いを浮かべている・・・といったシュールな場面を。

コミュニケーションとは、「正しい」を武器に相手を折伏する行為ではありません。相手の中にもある「正しい」や異なる価値観と向き合い、互いに理解し合うことです。相互理解を深めることで、関係性の土台が築かれ、初めて真のコミュニケーションが成立します。

そのためにも自分の思考のクセや価値観に気づくことが大事です。そうすることで、自己理解が深まり、共感力や柔軟性が高まり、自分の「正しい」にこだわらず、相手の中にも「正しい」があることを受け入れられるようになります。結果、信頼関係を構築しやすくなるため、より円滑で建設的な対話が可能になります。


IQ(知能指数)だけでなくEQ(感情知能)、そしてSQ(社会的知能)を鍛える



最後に、自分の「思考のクセ」を知る、自己理解を深め他者との関係性を高める方法のひとつであるEQ:Emotional Intelligence Quotient(感情知能)、SQ: Social Intelligence Quotient(社会的知能)について述べたいと思います。

バブル崩壊後、米国MBAを取得してきたエリートビジネスパーソンが日本に持ち帰ってきた論理的思考法は、各種思考法、フレームワークなどが紹介されていきました。

これらの手法は定量的なデータに基づき、論理的に仮説を積み上げ、説得力のある説明や提案ができるため、瞬く間に日本企業の人材開発メニューに、MBA経営戦略思考、ロジカルシンキング、ファイナンス、アカウンティングなどの必須スキルセットとして加わえられて行きました。

そして、いつしか、これらのスキルを使いこなす人たちが「賢い人」と区分されるようになり、トップタレントとして評価・登用する人事システムも導入され、現在に至ります。

現代のビジネス環境は、複雑で予測不可能な問題が多く、急速な変化に対応する必要があります。これまでのビジネススキル教育は、論理的思考法を中心に据え、個人のパフォーマンス向上に重点を置いてきました。しかし、今後は単に個人の能力を超え、周囲を巻き込み、関係性を築きながら成果を出すリーダーシップやチームワークがより一層重要になってきます。

従来の論理的思考を中心としたスキルセット、つまりIQ(知能指数)を刺激し活用するだけではこれからのビジネスシーンでは不十分です。これからのビジネスリーダーには、単なる「賢い人」としての振る舞いだけなく、EQ(感情知能)やSQ(社会的知能)といった能力を適切場所で、適切なタイミングで発揮することが求められているのです。

IQ : Intelligence Quotient(知能指数)
IQは、問題解決能力や論理的思考、情報処理能力を指します。高いIQは、複雑なデータを分析し、効果的な戦略を立てるのに役立ちます。しかし、IQだけでは人を動かすことはできない。

EQ: Emotional Intelligence Quotient(感情知能)
EQは、自分の感情を理解しコントロールし、行動に反映することで、周りの人と良い関係を築く能力のことです。高いEQを持つ人は、他人の気持ちに寄り添い、共感する力があります。これにより、相手の内面に響くコミュニケーションができ、信頼関係を築くことができます。感情の面で相手を理解し、サポートすることで、相手は安心し、積極的に動くようになります。

SQ: Social Intelligence Quotient(社会的知能)
SQは、自分や他者の感情を感じ取り理解し、その上で、組織内でどう行動すれば良いかを認識する能力のことを言います。EQをより社会性に焦点を当てた概念です。これには、チームダイナミクスを読む力や、適切なタイミングで適切な行動を取る力が含まれます。高いSQを持つ人は、組織内での人間関係をうまく管理し、協力を引き出すことができます。これにより、チーム全体が一丸となって目標に向かって進むことができます。

これらのスキルは、自己理解を深め、他者との関係性を築く上で不可欠です。自分のEQやSQを意識することで、自らの「思考のクセ」を知ることができます。この「思考のクセ」を知ることで己を客観視することが容易になり、自分の価値観に固執することなく他者の意見にも耳を傾けることができるようになります

また、このEQやSQは、生まれ持った才能ともいえるIQとは異なり、意識的な努力と練習によって鍛えることができます

まず、EQを高めるためには、自分の感情を理解し、適切に表現することが大切です。自己認識を深めるためには、日記をつけることや、感情を言葉にして表現する練習をすることが有効です。

次に、SQ、つまり社会的知能を鍛えるには、他者とのコミュニケーションや協調性を高めることが求められます。他者の感情や立場を理解し、共感することで、信頼関係を築くことができます。具体的な方法としては、チームでの活動に積極的に参加することや、異なる意見を尊重し、建設的なフィードバックを行うことが挙げられます。

これらのスキルは、一朝一夕に身につくものではありませんが、意識して練習を重ねることで、徐々に向上していくことができます。日々の生活の中で、自分自身と他者との関係性に注意を払い、EQとSQの向上に努めてみてください。


この記事が、あなたのビジネススキルの向上に役立つ一助となれば幸いです。

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