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ノルウェーの国民的絵画「ロンダネの冬の夜」

ノルウェーの画家と言えばエドヴァルド・ムンク、代表的作品は「叫び」というくらい、ムンクの「叫び」が知られている・・・というか、他の画家が全く知られていませんよね。

でも、1995年にノルウェー国営放送のラジオ番組で「あなたが選ぶ国民的絵画 in ノルウェー」の投票を募ったところ、選ばれたのはムンクの「叫び」ではありませんでした。「叫び」を抑えて堂々の1位に選ばれたのが今回ご紹介する、ハーラル・ソールベルグ作「ロンダネの冬の夜」です。

ロンダネというのはノルウェー中部の山岳地帯の名称です。比較的登りやすい山々で知られており、今では国立公園として山歩きの人気スポットとなっています。

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この絵の作者、ハーラル・ソールベルグ(1869-1935)は1899年に友人の誘いで訪れたロンダネの雪山の風景に心を打たれ、それ以降これらの山々を描くことをライフワークとしていきます。他のモチーフの作品も多数残されていますが、「ロンダネの冬の夜」は同モチーフで20の作品を制作しています。

最初に描かれた1901年バージョンの「ロンダネの冬の夜」

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ソールベルグが画家として活動した1900年代初頭の美術界は、表現主義やキュビズム、フォービズムなど様々な新しい潮流が生まれるような変化に満ちた時代でした。ロマン主義的なソールベルグの作品は「古臭い」上にその独特のデフォルメから「描写がリアルでない」と批判を受けることも多く、ノルウェー国内でもあまり高い評価をうけることはありませんでした。運よく国に買い上げられた作品もありましたが、画家としての生活はかなり苦しかったようです。

ソールベルグは風景画を専門とする画家でしたが、自画像を残しています。なかなかのハンサムですね~。古ーい映画の嫌味な色男役っぽい。

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そんなソールベルグが魅了されて止まなかったロンダネの冬山、彼はその印象を「冬山は人の心を揺さぶり、沈黙させる。まるで教会にいるような感覚を覚える。ただ教会にいるより千倍強烈な感覚だ」と記しています。

ソールベルグの代表作「ロンダネの冬の夜」は、彼の感じたこのような印象を鑑賞者に伝えてくれる作品です。絵本の挿絵のようなデフォルメとナイーブさを持つ描写ながら、静謐さにあふれ、自然に対する畏怖を呼び起こすような不思議な絵です。

こちら↓は「ロンダネの冬の夜」の集大成と言われる1914年バージョン。オスロの国立美術館所蔵です。国立美術館は現在移転のため閉館中ですが、今年の6月11日には開館予定です。ノルウェーにいらしたら国立美術館で是非この絵の前に立ってみてください。1,6m×1,8mの大きめの作品です。(もちろん同館所蔵のムンクの「叫び」も忘れずにご覧になってくださいねー)。

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話はかわって、ソールベルグが「ロンダネの冬の夜」の制作スケッチを行ったであろう場所には「Sohlbergs plass(ソールベルグス・プラス)」という展望台が作られています(ほんのちょっと方向がずれている気はしますが)。オスロから車で約3時間の距離です。
去年、行ってきたのでその時の写真を。「ロンダネの夏の朝」(笑)です。実際の山々は絵画の描写よりもなだらかでしたが、山々の形状の類似はちゃんと確認できます。きれいな景色でした。冬の夜にも行ってみたいな~。

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