未来の海を繋ぐ架け橋へ。日本最大の海事都市-今治に30年ぶりに拠点開設。
造船の街、今治。
古くから瀬戸内海の阪神地域と九州を結ぶ、海上交通の要所として栄えてきました。造船業だけでなく、海運業、舶用工業が集積しており、「日本最大の海事都市」と呼ばれています。この今治の地に今年3月、古野電気は新たに今治営業所を開設、営業を開始しました。
実は以前にも今治営業所があったそうですが、一度は他の営業所と統合された経緯もあります。初代・今治営業所が設立されたのは1968年と今から50年以上前のこと。
その頃はフルノが初めて商船市場に挑戦し始めたタイミング。まだまだ商船向けの機器は数えるほどで今治営業所でも内航船を中心にレーダーなどを販売していたようです。しかしその後、国内営業拠点の統廃合の流れにより、1989年頃には今治営業所も広島県三原市の広島支店に一本化されたとのこと。
そこから30年近く経過し、なぜ再び今治営業所を開設したのか、現地に赴き話を伺ってきました。
今治に拠点を持つことで生まれる好循環
商船向け製品はフルノの業績を支える大きな柱となり、造船所や海事関連の企業が集まる今治は重要な拠点です。そんな場所に改めて営業所を設立する狙いを今治営業所の方々にお伺いしました。
まず開口一番に"今治営業所が出来たことはメリットが多い"と話します。
貝沼さん「いろんなメリットがありますが、一番は時間だと思います。以前は今治の造船所様や海運会社様に訪問するときも三原から車で行くと片道でも1時間以上かかっていました。今は営業所から10分20分のところに沢山お客様がおられます。訪問する回数が圧倒的に増えていますね」
ちなみに今はしまなみ海道がありますが開通したのは1999年のこと。それ以前はフェリーで2時間ほどかけて訪問していたのだとか。
また営業の渡邉さんも顧客との距離が近くなったことによる好循環を感じているそう。
渡邉さん「お客様と物理的な距離が近くなり、タッチポイントも増えたことでコミュニケーションが活発になっていると感じます。会話を重ねる中で質問も+αで様々なことを聞くことができています。そのため相互理解も進み、フルノの信頼度が増しているとこの数ヶ月でも感じます。
また三原からの日帰りだと既存の案件で精一杯で新規のお客様の訪問などはそもそも時間的余裕がありませんでした。今は移動の時間が無くなった分、営業活動にも時間を割けています」
海事都市の一員として感じるフルノへの期待
貝沼さん「今治営業所のお客様は船主様、造船所様、そして船の管理会社様などが大部分を占めます。造船所の場合は新造船がメインになるので、設計部門の方々と規則関係について打ち合わせを行ったり、資材購買の方々とは価格・納期調整などのやり取りをしています。
フルノ側でも船舶営業部だけでなく、開発部門や衛星通信部門、サービス部門など様々な部門が新造船案件には絡んできますので、その調整も重要な業務です」
また船を所有し、運航会社などに貸出をしている船主様には船の修理や検査点検といった運用メンテナンスの話などもしているそう。
商船はワールドワイドに動くため、フルノの各子会社や代理店と連携して、世界各国どこでも対応できるように技師や部品の手配をしているとのことです。
そんな市場において、今治営業所への期待も大きいと感じているそうです。
渡邉さん「今治には多くのメーカーや海運会社が集まっていますから、お客様も何か困ったことや連絡したいことがあればすぐに会って話が出来る環境に慣れています。そんな中でこれまでのフルノはまずは電話、次にメール、そしてようやく対面と、時間がかかっていたように感じます。
お客様側としてもフルノが今治に戻ってきたことを歓迎してくださっていると思います」
貝沼さん「フルノが不在であった長い期間、お客様をサポートしてフルノ製品の評判を高めてくださってきた地元の販売サービス代理店様各位には感謝の念に堪えません。これからも引き続き協力しながらやっていきたいと思います」
今治が盛り上がる一大イベント、バリシップで感じた海運の未来
今年の5月には今治で4年ぶりに"バリシップ"という国際海事展が開催され、多くの方々にご来場いただきました。フルノも出展しておりフルノブースは連日大賑わい、テレビ取材も受けるなど多くの注目を集めました。
まさに海事都市、今治を象徴する一大イベントで、今治営業所も会期中はブースに立って接客するなど精力的にブース運営に関わりました。
このように今治には多くの海事関係者が来られるとのことですが、その中で今治営業所にはハブ的な役割を期待していると貝沼さんは話します。
貝沼さん「今治営業所がフルノに限らず、海運の業界関係者が今治に来た時に寄っていただけるような拠点になって欲しいなと考えています。そしてそういう関係が築けるようにしていきたいですね。」
渡邉さん「そのためには色んな会社と横のつながりを持つことも必要だと考えています。もちろん営業活動に役立つ情報を得られることもメリットですが、造船や海運に関しての様々な知識を得られることが良いと感じています。私たちフルノの人間はレーダーや航海計器のプロであるのは当たり前ですが他のことは知りません、では深い関係を築くことはできないなと思いますね。」
貝沼さん「造船所様や海運会社様を取り巻く様々な企業と関係性を構築することで、営業の仕方も多角的になってアプローチのやり方も増えますよね。それだけのネットワークが今治にはあります」
現在、海運業界では船舶のDX化、そして無人運航船の機運が高まっています。フルノもこれまでの製品開発やセンサー技術を活かして「無人運航船の実証実験にかかる技術開発共同プログラム」に参画しています。
そんな時代の流れに今治営業所としても期待していると話します。
貝沼さん「無人運航船はこれからどんどんと伸びていく分野だと感じています。今後どういう風に進んでいくのかということは自分たちも大きく期待しています。無人運航船はフルノ一社のプロジェクトではなく多くの企業が集結して開発が進められています。
実用化が近づき、世に広めていくとき、次は営業部門やサービス部門で多くの企業同士の連携や関係性が大切になっていくと考えています。だからこそ、今治営業所のハブ化には重要な意義があると思いますね」
30年ぶりに再び今治の地に帰ってきたフルノ。日本最大の海事都市の一員として、そしてこれからの海運を支える重要な拠点として、沢山の期待が集まっています。
今治営業所の船出の先にはどんな未来の海が待っているのでしょうか。
執筆 高津 みなと
・今治営業所開設のニュースリリース