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夏の空 * チェンマイ俳句毎日

【チェンマイ俳句毎日】2024年6月13日

清しゃなる煙昇るや夏の空


youtubeで安里勇さんの「島々清しゃ(かいしゃ)」を聞いた。
沖縄の民謡が好きだが、言葉が分からないところがあるので、私はよく歌詞を見ながら聞いている。


島々清しゃや (清しゃぬ) 城に御願所よ 
前の田んぼによ
夕陽赤く燃えてよ (サーユイヤサー)
畑で草焼く白い煙の 煙の清しゃよ

この1番の歌詞の、夕焼けに畑で草を焼く白い煙が美しい、というところにはっとした。

先月の中頃のことだ。近所の田んぼの脇で草を焼くおじいさんがいて、その時は朝の光の中だったが、鳳凰木の赤い花とその上の青空へ向かって昇っていく白い煙がとても綺麗で写真を撮らせてもらった。

近年の北部タイは、3~5月の雨期入りまでの煙害が酷く、その時期の野焼きは厳しく禁止されていている。

煙害の大きな原因は、大企業による山地での大規模なトウモロコシ栽培のための野焼きや山火事だといわれているが、昔ながらの伝統的な農業で行われてきた小規模な野焼きであっても、区別なく禁止されている。
近所のおじいさんも含め、何十年も農業をしてきた人たちは、その年ごとの自然を観察しながら、野焼きをしたり、田に水を入れたりする時期を決めてきたのだと思うが、今は法律に従わざるを得なくなっているのだ。

おじいさんが草を焼いていたのは、まだ雨期入りが公には発表されていなかった時だった(その2,3日後に発表された)が、雨はほぼ毎日降るようになっていて、感覚的には雨季に入っていた。それでも、バイクで通り過ぎる人の中に「焼いているじゃないか!」と罵声を浴びせる人もいた。

私はただただ、白い煙が昇る美しさに感動して写真を撮ったものの、人によっていろいろ考え方、感じ方が違うので、タイの人と繋がっているSNSにあげて、万が一、おじいさんに迷惑がかかってしまうといけないと思って控えた。


野焼きに関して、もうひとつ残念なことがあった。
チェンマイの隣、チェンラーイ県のカレン族の村の人たちが古くから行っている循環型の焼き畑農業という農法がある。
簡単に説明すると、一箇所で焼畑をするのは1年だけで、毎年、順繰りに異動し、7〜10年程度で最初の土地に戻ってくる。一周回って戻ってきた時には、7年前に農地として利用した斜面はすっかり豊かな森に戻っているという、環境に配慮した持続可能な農業だ。家族単位で行うので(作業は大勢で手伝い合う)面積も想像以上に小さい。その村には世界中から様々な分野の研究者が調査に入り、今ではその文化的価値が認められ、特別に許可を得てこれまで続けられてきた。
  先週、その村の畑のひとつに森林局の若い役人たちが村に断りなく立ち入り、植えたばかりの陸稲の苗を抜いたり、農具を壊したりしたというニュースがあった。(ニュースといってもカレンの人達がSNSにあげるだけだが)
森林を守る森林局の人であっても、広域の森林伐採による商業的農業と、古くからの智恵が受け継がれてきた持続可能な農業との違いに理解がない。私はその村の循環型の畑を何度か見せてもらったことがあるが、斜面で行う作業は大変だし、様々な準備と手間がかかる。ひとつ間違えると命にも関わる。それでも続けているのは、村人にとって1年の糧を得る場所というだけではなく、魂のような部分でもあるからだ。今回のことで村の人達は大きなショックを受けていると思う。


白い煙の 煙の清しゃよ 

安里勇さんは動画の中で、沖縄の人たちの清らかな心の美しさから、「清しゃ」という言葉が生まれたと説明していた。自然の中で生きる人の暮らしの美しさを歌う安里勇さんの声が、心に響いた。





https://youtu.be/XaAeobUDnTU?si=WTvCZ7Y4MMEY1CEq

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