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オカリナ * チェンマイ俳句毎日

【チェンマイ俳句毎日】2024年7月27日

もう20年以上も前になるが、これからタイに行くという私への餞別に、友人がオカリナをプレゼントしてくれた。透明のプラスチック製のおもちゃみたいなものだったが、私はそれを持ち歩き、どこで吹いてもまあまあ喜ばれた。

タイの隣国ラオスの古都ルアンパバーンを旅行した時のこと。小さな町を見下ろすプーシーの丘に朝登ると、家々から朝食の支度の煙がゆらゆらと上り、メコン川は朝日を受けてキラキラと反射している。そんな美しい景色を眺めながら、気分良くオカリナを吹いていたら、あとから登って来た西洋人の年配の女性が、「このビューティフルモーニングを忘れないわ」と言った。

チェンマイで本物のオカリナ奏者のコンサートがあったのは、それから何年かたってからだった。私は手伝いで舞台の照明係を受け持った。見慣れないスイッチやレバーが並ぶ機材を操作するのは、おっちょこちょいの私にとってかなりドキドキする作業だったが、本番はうまくできた。
オカリナ演奏家は、まだ焼いていないオカリナに指穴を開ける、というパフォーマンスも見せていたが、打ち上げの時にその「生オカリナ」を譲ってくれる、という嬉しいことがあった。
後日、夫に焼いてもらうと、当たり前だが、たいそう立派なオカリナになった。

久しぶりにそのオカリナを出してみた。何年も吹いていなかったので、一度洗ったら、オカリナの素焼きの肌に水が染み込んで、むせるような土の香りがした。

オカリナに大地のにほふ夕立晴


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