こんな夢をみた。 仕事先の誰かに頼まれごとをして、知らない場所に写真を渡しに行った。届け先はデザイナーだとか造形美術家だとか、そんなようなことを言われたが詳細は憶えていない。 訪れたのは、異様に高いビルに挟まれた谷間のような低層マンションで、そこの最上階である3階全体が届け先のようだった。 3階のドアの先、だだっ広くも物の散乱した、コンクリート打ち放しの部屋の中に居たのは、どちらかというと「ふくよかな」という形容の似合う女だった。全体に暖色系の出で立ちで、チョコレート
この夏、見事に辛い風邪をひいてしまった。そして実は今も、若干の咳が出続けている。 発病は8月の初旬だった。あまり心当たりはないのだが、その前々日くらいに、家の近所にあるショッピングモール内のフードコートで昼食を食べたのが災いしたのではと思う。その時、隣の席の家族連れの男の子が、さかんに咳をしていた、ような気がするのだ。 1日おいて「何だか調子が悪いな」と感じるようになり、近くの温泉施設に行って湯に浸かったりサウナに入ったりしてみたが効果は限定的で、その翌日から症状が明
こんな夢をみた。 私はまだ大学に居て、サークル活動に顔を出しているような歳だった。その頃の日課としてサークル棟に行くと、先輩たちが喧しい。聞けば、彼らの内で恋仲にあった二人が揃って行方しれずだという。駆け落ちだ、と後輩は決めつける。 騒ぐうちの一人が持ち出してきたのは、目と鼻の先にあるターミナルから出る長距離バスのことである。それは、熱海に行くものだというが、大学から熱海に直行しているバスというのはどうにも妙である。 ひとまずそのターミナルに行ってみようということにな
クーラーの音がうるさい。その割に効いていない。 低層マンションの2階、西側に面した私の部屋は、やはり8月の午後は仕事にならない。大窓には遮光カーテンを引いているが、その隙間から射してくる陽光が気になって、ディスプレイを見続けながらも私は今日いく度目かの舌打ちをした。 幸い仕事はある。あるが、納期か金額か、あるいはその両方が碌でもないものばっかりだ。それでも会社というものに所属していない私は、自分自身をなだめすかしてやっていくしかない。 分かってはいるものの、また外から
秋には「えもいわれぬ味ですな」と言いたい。私にそんな願望を植え付けたのは、川上弘美氏の『センセイの鞄』という小説である。前世紀末(こう書くと大昔に思えるけど、実際は1999~2000年)に書かれたものながら、2000年代に映像化や漫画化もされ、今でも割と知られた作品だろう。 栃木の山奥へ 語り手であるアラフォー独身のツキコと、彼女の高校時代の恩師で今は独居の日々を過ごしている老紳士「センセイ」との、友情も恋情も混淆した交流を描いた、というのが、だいぶ安直な同作の紹介と言え
お盆といっても、それに絡む何事も、したことがなかった。 だいいち仕事だった。 出版業界(とりわけ雑誌)でよく使われる「お盆進行」という言葉は、だいぶ人口に膾炙した感もあるが、印刷や製本が休みだとしても、編集にはやろうと思えばできる仕事は山ほどある。経営者が編集出身だったりすれば、やろうと思えばできる仕事をやらせようと考えるのは自然だろう。もちろん日程をずらして少しばかりの「夏休み」は取得するが、それが「お盆休み」でないのは明らかだ。 そんなような理由から、就職して以来