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出川哲朗が泣いた日 すべての表現者と応援するファンに捧げたい言葉


出川哲朗はすごい。

8/17の25:00〜27:00でオンエアされた出川哲朗のオールナイトニッポン。

普段はナインティナインの2人が務めるこのラジオ枠。一日だけ代わりを担当したのはナイナイとの関係性は言うまでもない出川さんだった。

還暦を迎える出川さんが横浜で「男・出川哲朗 還暦祭り」を開催することは、今年2月のオールナイトニッポン55時間スペシャル内のウッチャンナンチャンのANN(コンビとしては15年ぶりだったらしい)を聴いていたので知ってはいた。


ただイベントの場所もゲストも発表されておらず、その詳細が先日8/17の出川哲朗のオールナイトニッポン内で初めて明かされたのだ。

発表役を担ったのは、同ラジオに駆けつけた同じマセキ芸能所属の後輩バカリズムさん。

出川さん自身は開催場所がどこで、誰がゲストかは知らされておらず、ラジオの生放送の中で明かされるサプライズ形式。

横浜のどこかでイベントが開催されることだけは決まっていて、出川さんはこの日までずっとそれが頭から離れず不安で仕方なかったという。

その不安は以下の一点に尽きる。

ちゃんとお客さんが来てくれるのか



出川さんは「集客をナメるな!!!」「ラジオのリスナーは裏切らない。けどオレなんてただのテレビタレント、テレビ屋ですよ。お客さんはなかなか来てくれない」と力説。


冗談口調でなく、本気で心から思っているのが伝わるほどの熱量で集客を不安視していた。


だから開催場所についてもシュウマイで有名な崎陽軒の宴会場でやりたいと語り、「横浜アリーナとかいったらやらないからね!!」「腹切るから!!みんな笑ってっけど腹切るからな!!」と熱弁。

横浜アリーナとか絶対ないよな!?
そう何十回もマネージャーに確認したとのこと。


アイドルやアーティストのライブで、ツアーファイナルとかで「東京ドームコンサート決定!!」「武道館ライブ開催!!」

そんなスクリーンがサプライズで出て、ファンと一緒に驚きながらも泣いて喜び抱き合うようなシーンをメディア越しに見たことがある。

目標にしてきたステージ。
憧れの舞台。夢に見たフェス。

アーティストでも役者でも、目標とすべき場所や立ってみたい舞台(劇場)があるという話はインタビュー等でもよく聞く話だ。

ニューヨークのブロードウェイやアポロシアター。ロッキンやサマソニ、フジロック。東京ドーム、武道館。本多劇場、ブルーノート東京、なんばグランド花月。

各々のジャンルに規模の大小関わらず憧れを集めるステージが存在する。

その場に立つのをひとつの夢や憧れとしていたら、叶って喜びが溢れるのは当然である。

テレビならミュージックステーションに出たい、笑っていいともに出たかった、さんま御殿に、徹子の部屋に、朝ドラに大河に…とか。


出川さんは基本的にテレビで活躍する芸人さんなのでステージというと少しポジションは異なるかもしれないが、そもそもは劇団で役者やっていた人。また現在の知名度も過去の実績も言わずとも知られたところ。

ここ10年は特に活躍が顕著で、子供から大人にまで愛され、好感度も高い。
しかも一般人からの認知や支持にとどまらず芸人仲間からも信頼が厚い。

何かで本人も言っていたけど、出川さん自身は特別なにか変わったわけじゃない。はたから見ても芸風や振る舞いを変えたとも思わない。

見た目が丸っこくなって親しみやすいポケモンみたいになってきて、キャッチーになったのは一つあるかもしれない。

でもそれ以上に、芸風やプロのリアクション芸を崩すことなくプライドを持ってただただ愚直に続けてきた成果だと思う。

本当にこの人は素直で愚直な人なんだ
裏表もないこのまんまの人なんだ
リアクションってすごいんだ


続けてきたことによって、その変わらないことがいかに凄いことかを知らしめたのだろう。
逆もいえる。

変わらずに何かひとつのことを続けていくことの凄みを知らしめたのだ。


そんな圧倒的なテレビスターである超一流芸人が、自分の人気や集客力にまったく持って自信を持てていないのである。

いやすごい。

この人の偉ぶらないところ、この長く濃厚なキャリアの間ずーっと過信することなく等身大の物差しを持ち続けていることに私は驚きを隠せなかった。そんな人柄だとは伝わっていたけど、マジ過ぎると。謙遜でも上っ面でもなく本気で言ってるんだこの人は。



ラジオ内ではまず会場が発表された。


バカリズム
「発表します。男・出川哲朗 還暦祭り in 横浜アリーナ」(フラットなトーンで)



出川

「おいおいおいちょっと待てよウソだろ!!!!??馬鹿じゃないの??!!ありえないありえない!!」

(ほぼ絶叫と錯乱に近かった)

バカリさんが淡々と発表したことで出川さんのリアクションとエモーショナルが相対的に際立って面白かった。

続けて

「岡村隆史は何十年オールナイトやってると思ってんのよ!ラジオのリスナーは裏切らないから(だから成立する)!!
テレビのリスナーは裏切るから!!いやいや裏切らない裏切らないごめんなさい(ここまで早口で捲し立ててた)
だけど違うのよ!テレビで見るのとお客さんが来てくれるのは!お金払って来てくれるのは全然別モンなの!!!」


すごすぎない?

この謙虚さ。舞い上がらなさ。

今の人気や知名度にひとつもあぐらをかかず天狗にもなってない人間性。自力を知っていて色んな人や環境によって光らせてもらってると言わんばかりの清らかさ。

ひとのために時間やお金を工面することは簡単なことじゃない。簡単じゃないどころか、誰かにしてもらうことの中でいったら極めて難しい部類だろう。


横浜アリーナはキャパ12,000〜13,000

日本武道館を上回る。

ゲスト発表の前だったか、ウッチャンナンチャンの2人からコメントが寄せられた。2人は横浜アリーナでの開催とゲスト出演者も知ったうえで「テレビでやろうと思ってもけっこう難しい…集めるの」「俺ら出なくてもいいくらい」「(なんなら)邪魔だね」と。

ゲストの名前が発表される前、横浜アリーナを埋めるのは到底ムリだと喚き続ける出川さん。

「横浜アリーナはもう決まってるんで。嫌がる時間が長い」とクールに手厳しいツッコミ入れるバカリさん。

それを受け「お客さん来てくださいお願いします!!😭」と懇願。
どこまでも大真面目だった。

ゲストを聞けば「そりゃそうだよな」と納得すると説き伏せられる出川さん。


そしていよいよゲスト発表。


ほんとに豪華ですよと前置きしたバカリさん。

1組目のゲストは…

ナインティナイン


出川「おおぉ!!!」


感嘆の声があがった。

興奮しながらナイナイとのエピソードを話す。

「アイツらやっぱり裏切らねぇなぁ〜〜」と唸るようにしみじみと2度も言っていたのが印象的。

バカリさんは続ける。


続いてのゲスト…

有吉弘行さん



出川「ええぇーーー!!!ウソでしょ?!!すげーなぁ!すごいな!」

興奮を隠せない出川さん。

有吉さん大好きな私も同じリアクションだ。


「有吉そういうの出ないじゃん!ひとのイベントとかなんとか」「嬉しいわあ…有吉…サンキューサンキュー!!」


興奮冷めやらぬまま3組目が発表される。


バカリズム「3組目は…」

さまぁ〜ずさん


出川「えええ!!??待って待って!ホントのほうなのこれ!?…ナイナイ有吉さまぁ〜ず…すごいな!」

実感が追いついてない様子。

ここからさらにダチョウ倶楽部の名前が発表されると、感極まる出川さん。


バカリズム「ちょっと泣きそうになってる笑」

出川「わ〜〜…ちょっといろんな感情が…」



すべて発表された豪華出演者は以下の通り


CM明け、三四郎の2人もかけつけていた。
しばらく無言の出川さん。放送事故にならないよう必死に間を埋める三四郎とバカリさん。

CM明け直前に泣き出したらしい。


出川「ダチョウさんが…って言ったから」

鼻水垂らす姿に「ラジオじゃ見えない」とツッコむ3人。

バカリ「ラジオだとフツーに鼻水拭くんですね」
小宮「ダイヤモンドじゃないんですね」

平気で間をあけるからホント怖くなると語るバカリズム。

動揺や感動を隠せない出川さんをカバーしながら鋭いツッコミで盛り立てるマセキの後輩が頼もしかった。

とりわけ終始冷静かつ鋭利なツッコミを入れまくって出川さんを何度も怒らせるバカリさんはさすがだった。
出川さんも「自分が天才だというのをオモテに出し過ぎなのよ!!」と天才イジリでなんとかやり返す。何度も手を出しかける(てか出してた?)出川さん。

小宮さんの解説では「暴力ふるわれてる」「暴力ラジオ」「手が短いから届かないだけで」何度もバカリさんや小宮さん相手に暴れてたみたい


そんなワチャワチャもありつつ楽しいラジオはお別れの時間になり、出川さんひとりに。

心細さを隠さない言葉が並んだ。

30年前、1時間だけひとりで任されたオールナイトニッポンでは何もできなかったと語り始めた。
言いたかったことも言えなかったと。


BGMにはサザンの『旅姿六人衆』が流れだした。この曲にまつわるエピソードを語りだしたその声は、まるで泣き腫らした後かのような、あるいは号泣する直前かのような、何とも言い難いしみじみとしたものだった。

そのまま出川さんは劇団時代からの付き合いとなる盟友の1人、役者の入江雅人さんの話に入った。

入江さんの一人芝居を観に行った出川さんは、舞台に立ち続ける同い年の盟友の姿に感動し、大切なことに気付かされたようだった。

舞台そのものも素晴らしかったと前置きしたうえで、カーテンコールで入江さんがお客さんに向けて伝えた言葉にいたく感銘を受けたと。

「歳もとって同い年で還暦で。シラガ頭で…『白髪頭だけどこんな感じでやってくんで。でもそのためにはここに来てるお客さんが、お客さんが劇場に来てくれないとやれないから。これからも付き合ってください。よろしく』って。その挨拶がかっこよすぎて。ロックだなぁって」

「何が言いたかったかというとね」

そこから続いた出川さんの声と言葉は、人生経験に裏打ちされた説得力と優しくも芯の通った情熱が純度100%で詰まっていた。


「やっぱやり続けるってかっこいいなって思ったんですよね。一生懸命やってれば、誰かが見てくれてる。(30年前のオールナイトでは何もできなかったけど)30年後、やらせてもらえる。やり続ければ、一生懸命頑張ってればね、実現するんですね。やり続けるかっこよさ、好きなことを続けなきゃダメだなって」


かつて汚名のようなランキングでトップを飾り、街もまともに歩けないほどヤンキーに絡まれたり見ず知らずの人にイジられたり、たくさん嫌われたり。

出川さんのこれまでの歩みは、笑ってもらう以上に苦難の連続だったと想像する。
今じゃもう認知のされ方が全くといっていいほど異なる。

冒頭でも綴った通りだ。

出川さんはなにも変わってない。

ただただ人に笑ってもらいたくて、芸人としての矜持だけは持ち続けて、真っ直ぐに好きなことを続けてきた。

それがいよいよ多くの人の心を、仲間を、時代をも貫いた。

そして今がある。

還暦祭りに集まるメンバーは信じられないほどに豪華である。

すべて「出川さんのためなら」だけで集まってくれる人たち。

2024年1月の横浜アリーナで目にできる光景は、出川さんの生き様がそのまま現れた結果でしかない。出川さんが人のためにやってきたことの反射だ。

たまたま運よく今回の出川さんのラジオを聴けて(じっくりと聴いたのはタイムフリーでだけど)、私もチケットを買うことができた。


出川さんには感謝しかない。

私は少年時代、ウンナンとナインティナインのバラエティ番組で育った人間だから。


何より、生の有吉さんを拝める。


今年に入って、アイドルでも役者でもお笑い芸人でもアーティストでも作家でも、とにかく好きな人や尊敬する人たちに直接会いに行くと決めた。ライブ、トークイベント、サイン会、舞台挨拶、それこそマセキ芸人さんが集ったライブも含めてめちゃくちゃ足を運んだ。

でも有吉さんだけは絶対ムリだろうなと思っていた。あの壁だけは、背中だけは遠すぎると半ば諦めていた。

↑ 7/20時点のつぶやき


たった1ヶ月で奇跡は起きる。有吉さんに会えるよ。まだ信じられない。


何が起きるか分からないな人生。

だから当然イヤにもなるし、こうして嬉しくもなる。じゃあその日までは絶対なにがなんでも生き抜いてやるぞって思える。
だから面白い。

なんの保証も無くても、生きていくことだけは前提にしている。




出川さんがラジオの本当に最後の最後、メールもくれていたひとりのリスナーの名前をあげ、ホリケンさんと一緒にやってるラジオのことを引き合いに「(俺たちのラジオ)お前しか聴いてないんだよ…」と感極まりながらその言葉を発したとき、こちらまで涙腺がイカれそうになった。

そのリスナーさんから最後に届いたメールも最高で、出川さんは「たまんねぇな…」と涙ぐんだ声だった



人生だけはリアルガチ。
ガチだから、不安も期待も両方背負って今日この瞬間に生きるのをやめない価値がある。


出川さんのオールナイトニッポン聴いて、還暦祭りのチケットを買うことができて、あらためてそう思った。

サポートが溜まったらあたらしいテレビ買います