【BookReview】年上の友達に配りまくりたい1冊:「老いてこそデジアルを。」

おはようございます。今日の1冊はこれ。

「hinadan(雛な壇)」というアプリを80歳を越えてから開発したことで、国内外で注目されているICTエバンジェリスト(伝道師)の若宮正子さん。ICTとはInformation and Communication Technology(情報通信技術)を表します。以前から私の憧れのシニアとして興味を持った方です。近々インタビューさせていただく機会を得られたので、前勉強を兼ねて、この一冊を読ませていただきました。

文頭

熟年世代が「デジタル」のスキルを身につければ、まさに「鬼に金棒」です。

と若宮さんははじめます。

若宮さんは、デジタル化とは、「すべてを数値で表すこと」とおっしゃっていて、そのことを「微妙な空間」や「空気」を読むのと違い、味も素っ気もない世界、と表現しています。でもそのおかげで、普遍性を得られるツールであることも説いています。

この本の中で、一番印象的だったのが、

高齢者が若い世代のためにやってあげられることが、ITリテラシーを高めること

だと言っていることです。その前提として、シニアたちは今「人手不足時代」の現状を理解することだと言っています。

そこで私がハッとさせられたのは、高齢者の人たちが「人に働いてもらうのに、お金がかかる」と思っていない可能性があることです

確かに、昔は「丁稚奉公」という世界があって、お給料の代わりに三度の食事と少しのお小遣い、そして「仕事を教えてもらう=キャリアを手に入れる時代」を生きた人にとって、もしかして初任給で15万、20万という仕事ができない時からお給料をもらえる世界は、とても想像できないのかもしれないことに、改めて気づかされました。

若宮さんは、この本の中で根気強くシニアに向けてデジタルの世界がどれだけ生活を豊かにしてくれるか、具体的に説明しています。そして、シニア世代だからこそ効くであろう言葉も散りばめています。例えば

外国語の学習も、デジタル機器の学習も、脳の活性化にはいちばん効く「薬」。認知症予防に役立つ、と思えば、ネガティブな先入観を捨てて、一歩を踏み出せるのではないでしょうか。

と言っています。

また、私個人はアナログからデジタルへまさに過渡期を経験したいわゆる「中継ぎ世代」なので、アナログの良さも、そしてデジタルの良さも両方分かると思っています。ですが、今回若宮さんの本を通じて、改めてセキュリティについての意識や、フェイクニュースなどデジタル世界の持つ脆弱さや、信頼性に対して疑問を持つ視点といった部分で、デジタルネイティブの子どもたちに比べて、「曖昧」であることを改めて痛感させられました。

それは一重になんとなく「独学」で身につけてきてしまった性だと思っています。逆になんとなくでは身につけにくいシニア世代は、改めて「学ぶ」ことを通じて、こうした不安要素は払拭できるはずであることも、この本を読んで気づかされました。

若宮さんが、とにかくシニアとデジタルについて楽観的、ポジティブでいることは、読んでいて気持ちいくらい感じます。まとめに向けて、さらに次のようにおっしゃっている部分が、印象に残りました。

新しい技術が、シニアの味方であるとすれば、「何が心配か」より、シニアにとって、差し当たり「何に役に立つか」を」考えるべきと思います。

物事の表と裏があるように、見え方次第でネガティブにも、ポジティブにもできる。それは力強い言葉に感じました。

米国に住んでいたとき、コミュニティークラスで出会ったクラスメイトたちは、60代以上のシニアでした。彼らは、みんなパソコンを駆使し自伝話を書き、売り出されたばかりのiPhoneを操りスケジュールやメールをチェックし、車を乗り回しているアクティブな人たちでした。地域的に、経済的余裕もある人たちでしたが、デジタルリテラシーの高いシニア層に、早いうちに出会えたことは、私の人生にとって、少なくとも歳を取ることへの不安を少し減らしてくれたように思います。

そんなシニアたちに比べて、今日本で私がお付き合いしているシニアたちは、携帯電話も持たず、パソコンも使わず、メールってなんですか?と話すシニアたちです。唯一、私の着物をケアしてくださる方は、昨年「スマホを駆使して年賀状を携帯で作って送った」と話してくださいました。嬉しそうに、そして「自慢気に」お話しされていた彼女の顔が印象的です。

多くのシニアが、若宮さんや私の着物ケアプロさんのようになれれば、私が米国にいるシニアの友人たちから感じたような、歳を取ることへの不安を減らすきっかけを若い世代に与えるに違いありません。そして彼らがデジタルの世界にもっともっと近くに歩み寄れるよう、私たち中継ぎ世代も積極的に関わっていくべきでしょう。

ですから、携帯を持っていらっしゃらない先輩仲間への次のお中元やお歳暮には、ぜひこの1冊を選びたいと思いました。


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