この街も、夜明けが1番美しい
椅子は、自身の体格に合ったものを選ぶべきである。なぜなら、わたしは高さを間違えて今湿布まみれだからだ。ついでにいうと、冬の湿布は寒い。
ついにオールしてしまった。
昼夜逆転であっても、今までは朝日が登る直前に寝ていた。しかし東の空が明るくなるのを観測してしまったらもう眠れない。
親を起こさないようにそっとスニーカーを履いて家を飛び出した。
まだ薄暗くて、車は少しだけいるけれど歩行者はいない時間。あまりにも寒い。信号待ちが耐えられないからずっとぴょんぴょんして体温を上げようとしていた。
ランニングと呼べたのは最初の5分にも満たない時間だけだ。その後はもう徘徊と呼ぶべきだろう。
スニーカーの底が削れているのがよくわかるような私の足音が雑居ビルから跳ね返ってくる。決して無音ではない。どこかで烏が鳴いているし、誰かが乗った車が直ぐ側を通り過ぎていく。静か故に騒がしい。
近くに誰もいないからと、私は歩きながら東京事変の閃光少女を歌っていた。たぶんこの静かな街に似合う曲だろう、私はこの曲が大好きだ。
深夜とか早朝とかそういう、見慣れてない街の姿に心惹かれるというかときめくというか。
見知った街であれど、なんだか旅行先での朝みたいな気分になる。
水たまりに氷が張っていたからその上でスケートみたいなことをしていたところ、氷が割れ、刹那、私の左足は氷水に浸っていた。寒い。
あの道がものすごく滑ったのってもしかして泥濘んでるからじゃなくて凍ってたから?
白鳥が空を舞っていた。朝日に照らされた真っ白なそのからだはあまりにも美しかった。
君たちと一緒に歌う天性の才能があれば良かったなぁ……私はプリンセスじゃないけど、清々しい朝には歌いたくなるよ。
どうだい?私には寒いこの街も、君たちには暖かいのかい?
帰宅、生還。寒い、あまりにも寒い。体が冷えているのに加え、冷感湿布が猛威を奮っている。あったかいスープとか作ろうかな、インスタントだけど。
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