見出し画像

我的2018年映画ベスト

タイトル写真は、行きつけの映画館であるフォーラム盛岡で撮りました。
オレンジと黒のフラッグは、毎年秋から初冬にかけて行われる「ラヂオもりおか音楽映画祭」のものです。

今年は映画祭や上映会を含め、映画館で映画を観た回数は118回でした。例年だと100回行かないときもあったのですが、ここしばらくは地元だけでも頑張れば100作品観られる環境になっています。これは喜ばしいことではあるのですが、実は不満もいろいろあって…と言い始めると血圧も上がっていくに違いないので、ここでは今年観た映画を洋邦別に紹介いたします。

日本映画編

日日是好日
今年の日本映画ベスト1。
この秋に樹木希林さんがお亡くなりになり、その直後に公開されて話題になった作品だけど、『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』からずっと注目していた大森立嗣監督が茶道をテーマに撮ると聞いて俄然興味を持ったのでした。
「茶道はまず形から入る、そこから心が入る」というような言葉や、長い時をかけて続けてきたからこそ見えてくることなど、同じ道である武道、ひいては功夫などにも通じることを見つけ、「うおおお、これはアクション映画と同じ精神を持っているね!」と心の中で唸りました。マスター希林さんと弟子の黒木華ちゃんのコンビも良かったです。

孤狼の血
ポスターもチラシも撮っていないので、(なぜか)写真は書店でもらってきたコースター。
原作は山形在住の柚月裕子さん、東映ヤクザ映画を狙った企画と演出がなんか賛否両輪を読んでいたそうだけど、まあヤクザ映画といえばジョニー・トーだよねー、ごめーん仁義なき戦いとかちゃんと観てなーい、と真面目な邦画ファンの神経を逆撫ですることを平気で言って私は楽しんでいた。
さすがに冒頭の豚小屋の拷問はキツかったけど、そこを我慢すれば昭和末期の広島での警察とヤクザとの駆け引きや、そこを渡り歩く二人の刑事の姿が非常に好みな感じで描かれておりました。トーリ演じる若い刑事の成長物語として見ることもできるのも良し。同じ日に『娼年』も観たけど、コールボーイよりこっちの方が断然よかった。

斬、
90分足らずで語られる、不穏な世界に乱される者たちの話。
自然光で撮られる画面と激しく重々しいアクションのリアルさも印象的。
『野火』も衝撃的だったけど、こういう映画が作られることは、時代がまた変わっていっているのだなと感じた。

万引き家族
パルムか、是枝さんもここまできたのね…と遠い目になったもんである(こらこら)センセーショナルな題名を嫌って観ないのは実にもったいない。ここ数年の作品的には『海街diary』が好きなのだけど、血の繋がりのない家族という点で共通するところが多いので、表裏の関係であったかなと思ったりしてた。

カランコエの花
LGBT(というより性的多様性といった方がしっくりくるのだが)をめぐっていろいろ騒がしかったこの1年。映画やドラマでもこのテーマが増えたのは喜ばしく、興味深く観ているのだけど、この映画は当事者以外の視点で捉え、答えは出さずに考えさせるという真摯な作りがよかった。

あゝ、荒野
これ、上映は今年の冬だったんですよ(地方にはありがちな上映遅れ)
今と変わらない混迷の近未来に、拳で運命を切り開く二人の主人公の生き様は鮮烈でした。

寝ても覚めても
上質な恋愛映画でもあり、どこか背筋が寒くなるサイコホラー的でもあり、人間の残酷さもどこか垣間見えたり。ありきたりの恋愛ものが苦手なんだけど、これはミステリアスなのでちゃんと観られた。

モリのいる場所
これも希林さん案件ですが、熊谷守一とその妻というテーマと、ただのほっこりで終わらせない(むしろ攻撃的に笑いを取りに行っている)物語展開が面白かったです。

彼女がその名を知らない鳥たち
白石和彌監督と主演の蒼井優ちゃんはいずれも別作品で入っているけど、この映画での業の深さも印象深かった。あ、こっちにもトーリ出ていたか。

ルームロンダリング
TSUTAYAの企画する脚本賞を受賞したオリジナル作品らしいけど、日本映画のためにもこういう作品は今後も出てほしいという期待が入ってます。

外国映画編

29歳問題
はい、これが外国映画ベスト1です。
29歳どころか、人生を折り返している身にも響く物語だった。
もっともっといろんな人に観ていただきたかった作品です。

判決、ふたつの希望
珍しいレバノン作品にして、民族間対立から生まれた裁判が引き起こす衝撃と希望を描いた映画。世界のリアルさを取り入れながら、絶望へは向かわせない展開がよかった。

シェイプ・オブ・ウォーター
去年のTIFFでこのポスターに一目惚れして、楽しみにしていた映画。
厳しい時代は50年前も今も変わらず、そこで生まれるロマンスはどんな形であってもいいし、社会批判的にも寓話的にも楽しめた。テーマとして流れる「You’ll Never Know」はしばらくヘビロテしていた。

バトル・オブ・ザ・セクシーズ
男女平等は決して同じ量の仕事や能力を求められることじゃないし、かといって男性が女性を下に見ることはあってはならない。自由であっても平等はない国でラケットを握るビリー・ジーンの戦いには見入ってしまった。

スリー・ビルボード
ミズーリ州エビングを怒りで突き進むお母さん。真実を知るための行動が人を変えていく。強引ではあるけど、ここまでやらないと真実はわからないし、納得しない。ハードボイルドで貫いた展開もよかった。

レディ・バード
高校時代を描く作品は多々あるが、共感できるものは意外と少ない。時代背景の描き方もよかったし、あるあるわかるわかる感でニコニコしたくなった。

フロリダ・プロジェクト  真夏の魔法
米国版『誰も知らない』とはうまい。フロリダの子供たちの日々を描きながら、深刻な貧困も語る。日本がそうなっただけではなく、今はどこの国でも貧困はあるのだということを改めて感じさせられた。

ペンタゴン・ペーパーズ
いま現在のマスコミの不甲斐なさには本当にウンザリしている。この映画のような心意気のある新聞社主と記者がいてほしい。

タクシー運転手   約束は海を越えて
光州事件が背景にあること、その現場に踏み込んでいった実話の重さ。自国の歴史の闇を客観的に描いた力量に感心した。ソン・ガンホもよかったよなあ。

希望のかなた
これも難民問題が背景にあって、いつものカウリスマキと違う感じででもいつも通り。そこがいいって思うのだ。

こんな感じで選んでみました。
今年は社会問題と同時代性を描いたものにいい作品が多かったと思いますが、それであっても「誰に選ばれなくても私が好きならそれでいい」という毎年ながらの基準で選んでいます。
本当に観たい映画は時間とお金をかけないと観られなくなったけど、来年は自分が観たい映画が地元盛岡でたくさん観られることを願います。
それは拡大公開の人気シリーズでもマンガ原作でもありません。アジア(特に中華圏)の映画です。よろしくお願いいたします。

というわけで、今年もお世話になりました。良いお年を。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?