見出し画像

中華電影鑑賞記@TIFF&フィルメックス2017

昨年からblogが更新できなくなっているので、blog未掲載分の映画の感想を簡単にまとめていきます。今回は昨年の2つの映画祭で鑑賞した4作品。
なお、『アリフ、ザ・プリン(セ)ス』と『ミスター・ロン』はblogに作成中の記事があるので除きました。

『メイド・イン・ホンコン/香港製造』

(チラシにあるフルーツ・チャン監督のサインは、今年のTIFFでの『三人の夫』上映時にいただきました)
昨年のウーディネ・ファーイースト映画祭で修復された4Kレストア・デジタルリマスター版。今年は19年ぶりに一般公開され、もりおか映画祭2018秋でも上映されました。
21年前の返還直前の香港の空気や街のノイズがクリアに伝わり、これがデビュー作となるサム・リーの躍動感も20年という時の流れを感じさせないくらいの鮮烈さがある。
でも、この映画でも描かれていた貧富の差は大きくなり、劇中にちらりと登場してきた大陸の影響力が民主主義に脅威を及ぼすようになってきている。そういう20年後の現在見ると、胸に残る苦さは強くなってきているようだ。
ま、それであっても、サム演じる中秋のベッドに飾られているイーキン・チェンのポスターに思わずニンマリしてしまうのであるけどね。

『怪怪怪怪物!』

この秋から主要都市の単館で特集上映もされているギデンズ監督のこの映は、『あの頃、君を追いかけた』以来の第2作。いかにも若者たちが喜びそうなスクールホラーに仕立てられている。
かつて呪いをかけられて怪物化した姉妹を発見したいじめられっ子といじめっ子のグループは、妹の怪物を拉致監禁して虐待を加え、彼女の体液を使って気に入らない女教師を死に至らしめたりする。やがて妹を探しに姉の怪物が街に現れ、妹をさらったのが学生だとわかるとすると、学校にやってきて…というプロット。
いじめっ子のリーダーを口汚く罵った挙げ句、無残にも殺される女教師が一番心がなく非人道的なキャラであったり(そういえばギデンズの映画には生徒に対して容赦ない仕打ちをする女教師が敵になることが多い。なにか恨みがあるのか?)スクールバスで繰り広げられる虐殺にあのYen Town Bandの曲が使われるなど、虐殺系ホラー好きが大喜びしそうな要素はてんこ盛りでうっかりそういう場面でヒャッハーしたくなったが、見終わってからしばらくすると、この映画の残虐性に不快感を生じてしまった。
これらの残虐さと同じレベルで、主人公のいじめられっ子は激しくいじめられ、妹の怪物が捕らえられてからはそれ以上の虐待が行われ、それに(仲間に入れてやるという名目で)いじめられっ子が加わることで残酷さが増してしまったと感じたからである。そのくだりがあまりにリアルで、どうしてこの子はいじめっ子たちと手を切らないのかともやもやしたのだが、姉怪物の襲来の後に生き残った彼のラストの行動が、いじめられた後にいじめてもいた自分のけじめを付けるための決断と思えば、納得もできたし、このラストはこれであって当然と思った。
いずれにしろ、怪物より怖いのは人間であるということで。

『超級大国民(スーパーシチズン・超級大国民)

1995年の東京国際映画祭で上映されて以来、一般公開はされなかった萬仁監督のこの作品がデジタルリマスター化。当時はまだ映画祭通いをしてなかったので全く知らず、これをいい機会と思って観に行きました。(その後、今年の春から全国各地で上映されている台湾巨匠傑作選にも入り、23年目にして一般公開決定)
第二次大戦後、国民党が台北を臨時政府に定めて権力を掌握し、多くの知識人が逮捕されて処刑された白色テロを中心に置き、それにより親友を処刑され、自らは生き残った普通の市民柯さんの、青年期(日本統治期)から老年期(90年代の現在)までを描いた作品。ちょうど『悲情城市』と『牯嶺街少年殺人事件』の間に入るような位置にあるので、台湾戦後史を映画で学ぶのにはちょうどいい教材になりそう。
ところで、この映画を観た数カ月後、紫波町での上映会で遅ればせながら『人生フルーツ』を観たのですが、その中にこの映画を彷彿とさせるエピソードが登場して驚きました。主人公である建築家の津端修一さんが、戦時中に同じ軍需工場で働いていた台湾人の少年工の思い出を語り、音信不通になってしまっても逢いたいと望み、津端夫妻の著書が台湾で刊行されることを機に渡台し、行方を探してもらったら、もうすでに亡くなっていて山の中に彼のお墓があった…というものだったのですが、『超級』にて白色テロで処刑された知識者は山の中にまとめて埋葬され、名前が刻まれた小さな墓石だけが唯一の手がかりだった…というようなくだりが重なり、全く違う映画の点同士がつながったことで、今までよりクリアに歴史を見ることができたように感じた。こういう出会いから見方が変わったりするから、いろいろな映画を観ることはやはり大切なのですよね。

『山中傳奇』

東京フィルメックスでのキン・フー再び。
『侠女』『残酷ドラゴン・血斗竜門の宿』をやっと最近観ることができ、これが中華圏のアクション映画のみならず、日本のるろけん(るろうに剣心)にもつながっていくのか…などと毎度ながら言ってしまってすみません。これまで日本で上映されていたのは短縮版、今回は3時間20分位のオリジナル完全版での上映ということで、侠女以上に長くて大丈夫だろうか…と心配になったのですが、果たして途中で意識が切れなかった…と言ったら嘘になります(はい、すいません、途中何度か気絶していました)
ただそれであっても、ラマ教の経典を巡って、僧侶から幽霊までが入り乱れるバトルロイヤルっぷりは楽しく、アクションはもちろん特撮も昭和期の特撮ドラマをグレードアップしたような痛快さを覚えましたよ。
そしてなんと言っても当時まだ10代だったというシルヴィア・チャンのヒロインが実に可憐でよかった…。上映時にはゲストとして登壇され、撮影秘話を披露されていました。

ゲスト登壇中のシルヴィアさん。これが上映された週末に台湾で行われた金馬奨の授賞式にて、共演した徐楓さんが終身成就賞を受けた時のスピーチでも、この時の話にも触れられていました。

以上、覚書程度の量でしたが、感想などを覚えている範囲で書いてみました。次は今年のTIFF&フィルメックスで観た映画ということになりますが、それは年明けくらいにまとめたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?