妥協を排し、手本なき究極を求めて ~菊姫の酒造り
石川県白山市鶴来。ここに、妥協を排し、手本なき究極を求めて酒造りをしている蔵がある。
この蔵の仕込み水も、霊峰白山からの地下水脈。加賀菊酒に関して、蔵元はこのように書かれている。
加賀菊酒酒考
日本三名山のひとつに数えられている「霊峰白山」。この山麓に住む私たちの生活は、この山によってはぐくまれてきた。 白山に源を発し、雪に濯がれた冷たく清らかな水。手取川をはじめとするこの地下水脈が、私たちと白山をつなぐ命水である。日本一の銘酒といわれた「加賀の菊酒」こそ、この命水の結晶だったのである。「天下の美酒」。「まぼろしの銘酒」などの讃辞をうけた加賀の菊酒には、実際、わからないことが多い。 「周遊奇談」に「金沢城下より四里はなれてつるぎという町あり。加賀国一の宮として白山の社あり。ここに米屋といへる酒店にて作る名酒を菊酒と呼ぶなり、菊酒の名はこの町に一河の流れありて是れを白山川ともいふ。この川水をもって造れる故にかく菊酒と呼ぶなり」と記している。菊酒を白山川、すなわち手取川の水でつくるものとし、その産地を「鶴来」としている。(加賀菊酒考より引用)
農口尚彦杜氏の存在
菊姫が有名になったその一つの要因 それは能登杜氏 農口尚彦さんの存在があることは間違いない。30年以上も前に初めて飲んだ「菊姫大吟醸」の味。木の香りさえするような感覚。美しい、それまでに飲んだこともないものに感動を覚えた。
その農口さんが定年を迎え、蔵を去ることになり、菊姫の味は間違いなく変わる。変わった酒の味を好きか違うと感じるかはその人の感性だが、あの「木の香 薫る」ように感じた酒ではなくなってしまったような気がしていた。
引退して珠洲に帰った農口さんを「年令に定年はあっても、技術に定年はない」と誘ったのが加賀市の鹿野酒造。「常きげん」は一躍有名な酒となっていく。15年間杜氏を務め引退。その後能美市で「農口」。自らの名前の入った酒を造るも2年で引退。この2年間の間に造られた酒を、今でも大事に残しているファンも多い(自分もその一人)。そして現在、農口尚彦研究所で現役杜氏として、若手の育成をされている。どの蔵も、農口尚彦の酒である。農口さんはお酒を飲めず、その感覚と経験、技術で酒造りをされているというから驚き。若いころから酒米や麹を口で確かめていたために、歯がボロボロになって・・・。というのは有名な話。
杜氏が変われば、酒の味が変わる?
真の日本酒メーカーをめざし
菊姫ではメーカーというものは、自社で設計図をかき、ノウハウを持ち 、自力で製造する力を持っている事だと定義します。たとえば、自動車メーカーがいつも設計図を他に頼み、組み立て方などのノウハウも全く知らずに他人任せで生産しているとしたら、果たしてそれはメーカーと言えるでしょうか? ところが蔵元の実態は、これと似ています。造り方のノウハウを知らないで酒造りをしてきた、といっても過言ではないのです。 それを知り、すべてをゆだねられているのは杜氏であって、厳密に言えば蔵元の側ではありません。ただ、蔵元が杜氏に味の希望を頼むのです。
酒造りの歴史は冬期間、農業や漁業をしている人たちが出稼ぎとして杜氏を頭に技能集団をつくつてこれに従事し、江戸時代にマニファクチヤーとして確立しました。 いわば蔵元が旦那さんで、杜氏に設備を貸して酒を「造ってもらってきた」わけです。杜氏が変われば酒が変わる、これをあたりまえに思ってきたのです。
メーカーとして大切な事は、どんなことが起きてもラベルの味が変わらない事であると菊姫では思っています。
真の日本酒メーカーをめざし より引用
この話を栁さんからうかがって、まさにその通りだと。農口さんが去った後、酒マイスター制度を取り入れ、杜氏の勘に頼っていた酒造りを、科学的に、どのようなことがあってもいつも安定して美味しい酒を造るために努力を重ねてきたからこその言葉だった。精米や仕込みなど、それぞれの担当に責任を持たせ、プライドを持って仕事をしている。2度の酒蔵見学で案内を務めて下さった喜本さん(製造部長)からも、その心が伝わってきた。
菊姫 酒蔵見学
菊姫は基本、一般の見学を受け付けてはいない。けれど、縁あって2回(2018年1月と2019年1月)も蔵を訪ねることができた。酒を愛する人への紹介は、こちらこそ大歓迎とのことで、細部にわたり、丁寧に案内していただき、最後には試飲もさせてもらうことができた。貴重な体験であった。
最高級の菊理媛(くくりひめ 5万円)から普通酒の菊 まですべて山田錦を使用。しかも1年以上寝かせた物を出荷している。まさに菊姫PRIDE。兵庫の山田錦を使わせてもらうまでにかかった年月の話。毎年米づくりにも参加している話。栁さんや喜本さんの話は、酒好きにはたまらないものであった。
酒菜やまさきでは、この菊姫のラインナップも充実させていきたいと考えています。まずは普通酒の「菊」を味わってみて下さい。
酒菜やまさき
本日2024年6月20日(木) 午後5時開店です。よろしくお願いいたします。
酒菜やまさき
小松市材木町47番地
営業 木~土 午後5時~10時
ラストオーダー9時 ドリンクオーダー9時半まで
070-7784-3838
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