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スペシャルインタビュー【成長するベンチャー企業に共通する人事戦略とは】

FUNDINNOスペシャルインタビュー企画、前回の「マーケティング」を中心としたベンチャー企業分析記事に続いて・・・・
今回は人事戦略がテーマです!

業界シェアNo.1のタレントマネジメントシステム『カオナビ』の開発・提供を行う株式会社カオナビの取締役副社長 COOである佐藤 寛之氏にお話をお伺いしてきました!

移転直後のオフィスにお伺いしたところ、あまりにも先進的なオフィス風景に圧倒されてきました。

同社のIPOまでの軌跡、多くの成長企業の人事領域を支援されてきた佐藤氏が考える『これからの人事戦略』について、ベンチャー企業経営の視点だけでなく、投資家視点でもヒントが盛りだくさんです!

株式会社カオナビ 取締役副社長 COO 佐藤 寛之 氏
2003年上智大学卒業後、株式会社リンクアンドモチベーションにて組織変革コンサルティングに従事。その後、シンプレクス株式会社にて、人材開発業務の責任者を務める。2011年より株式会社カオナビにて創業者の柳橋とともに、タレントマネジメントシステム「カオナビ」の事業を開始し、現在では約1,900社以上に利用される業界シェアトップクラスのサービスにまで成長させている。
インタビュアー:日本クラウドキャピタル  CMO 向井 純太郎
2001年上智大学理工学部卒。日本ヒューレットパッカードにて、主に金融機関向けにエンジニア/ITコンサルタント/プロジェクトマネージャーとして従事した後、2011年にライフネット生命に入社。システム企画部に配属後、マーケティング部WEBチームにて、ウェブマスターを担当。その後、お申込みサポート部部長として、CX(カスタマーエクスペリエンス)の強化に取り組む。インバウンドセールスチームの立ち上げや国内生保初のLINEサービスの立ち上げ等に従事。その後、GRCを手掛けるSaaSベンチャーにて、BtoBマーティングと採用マーケティングのチームを立ち上げ。現在に至る。

カオナビ様

向井)
本日は、お時間を頂きありがとうございます!
まず最初に、株式会社カオナビ様(以下「カオナビ」)の事業概要を教えください。

カオナビにとってのIPOとは何だったのか?

佐藤さん)
カオナビは『社員の個性・才能を発掘し戦略人事を加速させるタレントマネジメントシステム』です。人の才能や個性に特化したクラウド型のSaaS事業を提供しています。

向井)
2019年3月に見事、東証マザーズへ上場されましたね。

FUNDINNOで資金調達をするベンチャー企業は、IPOを目指している企業が多いので、ぜひ、佐藤さんのIPOに対するお考えを聞かせて頂きたいです。

佐藤さん)
大前提として、IPOは手段の一つとして捉えていました。決してIPOを目標においていたわけではありません。

しかし、結果的にはIPOをしたことは良かったと思っています。

なぜ良かったか?それは『自分たちの成長戦略や社会的責任を捉え直す機会』になったと考えているためです。

IPOや資金調達をすると、出資先に説明責任が必要となります。
出資先だけでなく、広くは社会に対して説明責任を果たすことが『自らの成長戦略を見直していくこと』につながると感じています。
このプロセスは全てのベンチャー企業が取り組むべきことだと考えています。

向井)
IPOをする上で、どんな壁がありましたか?

佐藤さん)
正直にお伝えしますと、大きな壁はありませんでした。
IPOは、審査プロセスの中で論点になりやすいことが決まっています。

一つには労務領域が論点になりやすいです。
ここは全くと言っていいほど問題はありませんでした。

次に成長戦略に関する論点です。
我々のSaaSサービスは、会計処理とビジネスモデルがシンプルであるため、そこも大きな問題も発生しませんでした。

上場をゴールと設定していたわけではなかったため、上場した日も社内の雰囲気はいつもと変わらずでしたね(笑)

ポイント
IPOや資金調達は自分たちの社会的責任や成長戦略を考え直す機会となるイベント

向井)
ありがとうございます!
ここからは、本題であるベンチャー企業の人事戦略について教えてください。

ベンチャー企業、その中でもシリーズA、B、Cの事業フェーズにおいて、ぶつかりやすい人事課題があれば教えてもらえますか?

ベンチャー企業の人事戦略は『採用』が命

佐藤さん)
シリーズA、Bの人事課題は『採用』であることが多いと考えています。
もっと言うと、『経営課題=採用』であるケースが多いと感じています。

カオナビもベンチャーキャピタルから採用は大丈夫か?と何度も聞かれてきました。

採用は第一ボタン

リクルートでは、採用は第一ボタンと言われています。
第一ボタンである採用を掛け違えてしまうと、全てのボタンがズレてしまいます。

ビジョン・ミッション、カルチャー、事業フェーズに合わない人材を採用してしまうと、成長戦略そのものが崩れてしまいます。だから採用する人を間違えてはいけない。

よく聞く話かつ、カオナビ自体がぶつかった課題としても
・そもそも優秀な人材を採用することが難しい
・入ってくる人のスピード感が合わない
といったところですね。

向井)
ベンチャー企業にとって、採用が成長のための生命線であることは私自身も強く感じています。
佐藤さんが考える、採用課題を乗り越えるポイントはありますか?

佐藤さん)
まずは、経営者の役割、ボードメンバーのミッションを『言語化』することが重要です。そして、何がEmployee Value Proposition(企業が従業員に提供する価値)なのか、も定義して採用候補者に提示することが重要です。

まだ、何者でもないベンチャー企業にとって、優秀な人(CxOクラス)にジョインしてもらうのは、正直難しいと思います。
一方で、シリーズA、Bの事業フェーズは、ボードメンバーの採用が成長し続けるために重要になります。

ベンチャー企業にボードメンバーとしてジョインしてもらう『意味』を言語化することが人事戦略を考える上で重要です。

ポイント
・シリーズA、Bの人事課題は『採用』
・ボードメンバーの採用が重要。採用する人を間違えると成長戦略が崩れる。
・とくにCxOクラスには、ジョインしてもらう意味を『言語化』する

向井)
もう少し踏み込んだ話を聞かせてください。
シリーズCあたりから人事責任者を採用するケースが多いと思います。
ベンチャー企業に求められる人事担当はどんな人でしょうか?

佐藤さん)
まず、人事は経営者の仕事であることが大前提です。
ただ、シリーズCあたりから、人事の仕事全てを経営者が担うのは難しくなりますよね。

人事責任者に求められるのは『経営者視点』だと考えています。
経営者と同じ視座で経営を捉えて、成長戦略と人事戦略を連動させて考え、動ける人が必要だと考えています。

向井)
とても共感します。
ただ、経営視点がある人事担当を採用するのは難易度高いと感じています。
カオナビの支援企業や、注目されているベンチャー企業で、人事責任者をうまく採用できている企業はありますか?

人事責任者は社内登用も選択肢に入れる

佐藤さん)
人事の責任者を外から採用できているところは少ない印象です。

うまくいっているのは、人事責任者を『社内登用』しているケースですね。

成果を出していた営業担当や、会社のバリューを理解している人材を、人事にコンバートする。
組織において重要な、バリューやミッションの理解、組織全体を俯瞰的に眺めることができることが社内登用のメリットではないでしょうか。

サイバーエージェントの曽山さんも、もともとはトップセールスでしたが、今は人事責任者についていますよね。

無理に外部から人事責任者を採用するよりは、社内登用の可能性を考えることは、ベンチャー企業の人事戦略において重要ポイントだと考えています。

向井)
続いて、人事戦略のトレンドについて聞かせてください。
コロナによって、人事戦略の在り方が大きく変わってきていると思います。
コロナ禍で適応しているベンチャー企業に共通している点はありますか?

コロナ禍に求められる人事戦略は「複線化」が鍵

佐藤さん)
人事戦略をうまく回せているところの共通点は、人事戦略を『複線化』できているか、だと考えています。

コロナ前から働き方の多様化や、複数の価値観をもつ社員に適応していくことの重要性は言われていました。
コロナによって、この多様化の流れが加速したと捉えています。

世の中、働き方が多様になっているのに、これ!と一元的な価値観で判断してしまってはうまくいくはずがないです。
わかりやすい例が、コロナになったから、みんなテレワークをしよう、もっとコミュニケーション数を増やせ・・・と単一的な人事施策をとってしまうことです。
複雑性が増してきている中で表面的な対応で成功はしないですよね。

向井)
たしかに、多様化と言われていながら、推奨されている単一施策で何とか乗り越えようとしてしまいがちですよね。
人事戦略を多様化・複線化するためにどのような取り組みが必要だと考えていますか?

人事戦略の鍵は、データをもとに個人の多面性を理解

佐藤さん)
これからはよりシステムによる効率化とデータが重要になると考えています。

多様化する人や働き方の全てを、人事担当や経営者がアナログ環境で理解することは難しいです。
となると、データをもとに多様な社員の状況を理解していくことが必要になってきます。

テクノロジーの力で、効率化する、データをもとに判断することは人事領域でもより一層必要になってくる流れになっています。

向井)
人事戦略を考える上で、データとどのように向き合うと良いのでしょうか?

佐藤さん)
まず、『人に対して多面的な捉え方をするためにデータがある』、と考えると良いのではないでしょうか。人事領域のデータは『人と企業の関係性の質を上げる』ことが目的です。

基本はこの2つです。
①データを活用して効率化するところは効率化する
②人と人が向き合うべきところに、時間を最大限使えるようにする

向井)
データ量が増えてくる中でデータに踊らされてしまってはダメですよね。
本日、新オフィスにお邪魔させて頂いていますが、このオフィス環境も社員の多面性を出すために設計されているわけですよね?

佐藤さん)
そうですね。このオフィスには、自分たちが考える人事領域で必要とされる考え方を反映させています。

これからの働き方は『選ぶ』ことが重要になる
個人が自由に選ぶことができる環境をつくることが組織にとって重要だと思います。

優秀な個人がパワーをもつ時代になっています。
その個人を組織がどう活かすか?という視点がある組織が求められてくると感じています。

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向井)
このオフィスには未来の働き方や人事戦略のヒントが詰め込まれているわけですね!

佐藤さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!

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成長するベンチャー企業に必要な人事戦略ポイント
1. ベンチャーは事業フェーズごとの人材要件を言語化する
2. 採用は経営の第一ボタン。掛け違いがおきないようにする
3. 人事責任者は社内登用も選択肢に入れる
4. 人事データは人の多面性と向き合うために活用する
5. 個人が『選ぶ』ワークスタイルをデザインする

【編集後記】
社員の個性・才能を発掘し、戦略人事を加速させるタレントマネジメントシステム「カオナビ」のCOO 佐藤さんに、人事戦略についてインタビューできるありがたい機会をいただきました。改めて、ベンチャー企業は、採用が重要であり、いかに優秀で自社にフィットした人を採用できるかで、事業成長戦略の成否が決まるというお話が印象的でした。FUNDINNOでの資金調達では、ミッションやビジョン、事業内容を詳しく社会にお知らせすることになるので、採用力アップにも繋がるのではないかと思っています。
また、上場・資金調達するということは、出資者に対して説明責任を果たす必要があり、それが『自らの成長戦略を見直していくこと』につながる、というお話も、FUNDINNOで資金調達するベンチャー企業のみなさまの、IR発信に繋がる話だと感じました。(向井)

presented by FUNDINNO



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