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スペシャルインタビュー【ベンチャー企業のマーケティング戦略を読み解くための『マーケティングトレース』】前編

FUNDINNOインタビュー企画、前回の「会計」を中心としたベンチャー企業分析に続いて・・・・

第二弾はなんと!「マーケティング」がテーマ。私、日本クラウドキャピタル CMO向井としても気になるテーマです。そこで、このテーマにぴったりの方にお願いしました。

7,000人を超えるマーケターが集まるコミュニティ「マーケティングトレース」を運営する黒澤さん「ベンチャー企業のマーケティング戦略を読み解く」をテーマにインタビューさせてもらいます。

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黒澤 友貴(くろさわ ともき)
1988年生まれ。ブランディングテクノロジー株式会社 執行役員 経営戦略室CMO。中堅・中小企業のマーケティング成功メソッド開発や、マーケティング組織課題を解決するコンサルティングを行う。「日本全体のマーケティングリテラシーを底上げする」をミッションに7,000人近くのマーケターが集まる学習コミュニティ#マーケティングトレースを運営。2020年2月に書籍「マーケティング思考力トレーニング」を出版
note:https://note.mu/tomokikurosawa
Twitter:https://twitter.com/KurosawaTomoki
インタビュアー:日本クラウドキャピタル  CMO 向井 純太郎
2001年上智大学理工学部卒。日本ヒューレットパッカードにて、主に金融機関向けにエンジニア/ITコンサルタント/プロジェクトマネージャーとして従事した後、2011年にライフネット生命に入社。システム企画部に配属後、マーケティング部WEBチームにて、ウェブマスターを担当。その後、お申込みサポート部部長として、CX(カスタマーエクスペリエンス)の強化に取り組む。インバウンドセールスチームの立ち上げや国内生保初のLINEサービスの立ち上げ等に従事。その後、GRCを手掛けるSaaSベンチャーにて、BtoBマーティングと採用マーケティングのチームを立ち上げ。現在に至る。

マーケティングトレースとは?

向井)黒澤さん、本日は宜しくお願いします!
あらためて『マーケティングトレース』って何ですか?

黒澤さん)宜しくお願いします!
マーケティングトレースとは、企業のマーケティング戦略をフレームワークに落とし込んで分析し、言語化や図解をしながら思考力を鍛えるトレーニング手法です。自分が2年前につくった造語です。
企業のマーケティング戦略を構造化し、自分自身がテーマ企業のCMO(最高マーケティング責任者)になった想定で、戦略の仮説作りまでを行います。

マーケティング戦略の読み解き方

向井) 具体的にどんなフレームワークを活用するのでしょうか?

黒澤さん)戦略を考える時の、基本となるマーケティングのフレームワークを抑えています。
基本は下記4つ!

PEST
5Forces

STP
4P

※画像①フレームワーク全体像の図解↓

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下記のマーケティングトレースワークシートをご覧頂くとイメージしやすいと思います。
このワークシートを活用すれば誰でもマーケティング戦略の概要は掴むことができるようになっています。


※画像②マーケティングトレースワークシート↓

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※ワークシートはこちらのnoteからダウンロードできるようになっています!

向井) ベンチャー企業分析にもこの型は活用できそうでしょうか?

黒澤さん)はい、FUNDINNOで2回の資金調達に成功したオールユアーズさんのマーケティングトレースをしたことがあるのでご紹介します。

FUNDINNO様用マーケティングトレース.004

向井)このワークシート、俯瞰的にビジネスを理解できて良いですね!

ベンチャー企業のマーケティングトレースする時のポイントを教えてもらえますか?

ベンチャー企業のマーケティング戦略を読み解くポイント

黒澤さん)ベンチャー企業の場合は、下記3つのポイントを抑えられると良いのではないかと考えています。

①既存業界の常識をどのように壊しているか?
②戦略の裏側にある組織文化や体制の強みは何か?
③顧客にどのように価値を届けているか?

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オールユアーズさんの分析を例に、一つひとつ説明させて頂きます。

ポイント①業界の常識をどのように壊しているか?

ベンチャー企業を分析する場合は、そのビジネスモデルが業界にとって何が新しいのか?既存のプレイヤーと何が違うのか?を最初に考えて整理します。

5Forcesのフレームワークでは、ベンチャー企業は既存業界にとって新規参入者or代替品の立ち位置です。

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ベンチャー企業の新規性が、ポジショニングマップでどのように表現できるかを考えるとわかりやすいです。

オールユアーズの場合は下記のように「新規性=既存プレイヤーとの違い」を整理することができます。

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また、ベンチャー企業の場合は新規性を分析すると同時に、そのベンチャー企業にとっての『脅威』は何かは考えておけると良いですね。

面白く魅力あるビジネスであればあるほど、資本力ある大手が模倣してくる可能性は高く、また領域によっては海外企業が新規参入してくる可能性があります。
もし、パワーある会社が参入してきた時にどのような対策を取るべきかを投資家目線で考えておくことは大切だと思います。

ポイント②戦略の裏側にある組織文化や体制の強みは何か?

次に大切なのは、戦略の裏側にある組織文化や組織体制を読み解くことです。

ベンチャー企業は、その業界の常識に捉われない戦略を実行するため、組織体制や文化

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オールユアーズの場合は「共犯者を巻き込むオープンなカルチャー」が優位性につながっていると考えています。

アパレル業界であれば、トレンドに合わせて

仮に同じようなコンセプトで大手が参入してきたとしても、組織文化は簡単にマネはできません

ベンチャー企業の分析では、既存業界・大手企業にない組織文化に目を向けてみると「隠れた優位性」が見えてきやすいです。


向井)組織文化を理解するためのオススメ方法はありますか?

黒澤さん)組織文化を理解するためには、シンプルに創業者や経営メンバーのTwitterをみて、どのようなコミュニケーションをとられているかを見るのはヒントを得やすくオススメです。

TweetDeckというツールを使って、エンゲージメントが高い(リツイート数やLike数が多い)投稿を抽出し、ブランドとステークホルダーの間でどんなコミュニケーションが生まれているのかをチェックしています。

SNSでのコミュニケーションの他には、「ビジョンや理念」そこに紐づく「ブランドの世界観」を確認するようにしています。

ベンチャーの初期ユーザーは、プロダクトやサービスの機能性より「世界観の共感」からファンになるケースが多いです。

ユーザーは、このベンチャー企業の何に共感しているのか?を読み解くことは非常に大切だと考えています。

ポイント③顧客に価値をどのように届けているか?

最後にマーケティングミックス4Pを具体的に掘り下げて、具体的にどのように顧客に価値を届けているのかを考えます。

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ビジネスモデルが新しく成長の可能性がありそうだとわかっても、ビジネスにおいて最も大切なのは「顧客にどのように価値を届けているか」です。

顧客への価値の届け方は、マーケティングのフレームワークだと、4Pマーケティングミックスを踏み込んで考えられるとわかりやすいです。

読み解き方は複数あると考えています。

視点①
競合とマーケティングミックスレベルでどのような差別化が図れているか?

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視点②
時系列でマーケティングミックスがどのように進化しているか?

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資金調達後は、事業を成長させるために大きくマーケティング投資をするケースが多いはずです。

オールユアーズの場合は、FUNDINNOで2回クラウドファンディングのプロジェクトを動かしていますよね。

この2回目の調達時は、マーケティングミックスレベルでどのような変化があるか?を整理すると、具体的にどんな成長をしているのかを理解することができます。

向井)なるほど!オールユアーズの場合どのようなことが読み解けますかね?

黒澤さん)2回目のプロジェクトページを読み解いてみます。

○オールユアーズのマーケティングミックスレベルでの変化
Product売物:特許取得が具体的に進む
Place売場:店舗が完成
Promotion売方:クラウドファンディングの進捗

上記の点が進化していることがわかります。

※2回目のFUNDINNOでのオールユアーズ募集ページより抜粋↓

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この整理から、オールユアーズは『「ファンコミュニティ=共犯者」が集う場活用』が非常に重要なマーケティング活動であることがわかります。

以上、この3つの視点を抑えてマーケティングトレースをしていくと、ベンチャー企業のユニークな視点を理解することができると考えています。

FUNDINNOはマーケターの筋トレにも使える!?

向井)FUNDINNOは黒澤さんのコミュニティでも時々ご紹介頂いていますよね?

黒澤さん)はい!以前に大手町のランダムウォーカーさんと一緒に開催した勉強会でも、FUNDINNOのプロジェクトをマーケティングトレースさせて頂きました。

ベンチャー企業は情報が少なく分析がしにくいのですが、FUNDINNOのプロジェクトページをみると下記の重要な3つのことが理解できるので分析しやすいですね!

①ビジネスモデル理解
②経営者や組織理解
③具体的なマーケティング施策理解

投資家だけではなく、マーケターにもFUNDINNOは活用して頂きたいですね!

FUNDINNOのページを読み込みながら、マーケティングトレースの基本フレームワークを活用するだけでも、ベンチャー企業の戦略は十分に理解できると考えています。

なんならエンジェル投資家になって、そのベンチャー企業を自分ごと化して考えると、戦略思考を鍛えたり、経営に当事者意識をもつことにも繋がりそうです。

最後に

ベンチャー企業分析のポイント

視点①その企業は既存業界の常識をどのように壊しているか?
5Forces・ポジショニングマップで、既存業界と異なる視点を構造化する

視点②その企業の戦略の裏側にある組織文化や体制の強みは何か?
ビジョン、理念のユニークさや、経営チームのTwitterで組織文化をチェックする

視点③その企業は顧客に価値をどのように届けているか?
4Pマーケティングミックスを読み解き、時系列でどのような変化があるかを理解する

向井)ありがとうございました!ここまでお聞きして感じたのですが・・・


FUNDINNOのマーケティングトレースもやってください!(笑)


黒澤さん)・・・・・・・・・・・・・・・・・

え!?(笑)

CMOである向井さんからフィードバックいただけるのであれば喜んでやらせて頂きます!

リアルにCMOからフィードバックもらうマーケティングトレースは前からやってみたいと考えていたので!

実際にCMOが考えられている戦略をフィードバックもらえるとマーケティングトレースの新たな可能性が見えてくるのではないかと考えています。

来週までに作成しますので、”リアル”マーケティングトレースやらせてください!!

後編へ続く・・・

presented by FUNDINNO


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