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スペシャルインタビュー【ベンチャー企業のポテンシャルを見極める分析法】後編

上場企業と異なり、公開されている情報量が限られているベンチャー企業はどのように分析するのか?

「財務諸表が公開されてない中でも、ベンチャー企業のポテンシャルを見極める分析方法はある」

そう語るのは、「日本人全員が財務諸表を読める世界をつくる」を目標に、5万人超が熱狂する#会計クイズを発信する大手町のランダムウォーカーさん!

著書「会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方」は発売開始14週目でなんと6万部突破の大人気!

今回は、FUNDINNOスペシャルインタビュー企画として、大手町のランダムウォーカーさんに、ベンチャー企業分析の方法を初公開して頂きました!

前編では、主に財務諸表からの企業分析方法を「基本」としてご紹介しました。そして、この後編では、公開されている情報量が限られてくるベンチャー企業の分析方法を「応用編」としてご紹介します。

このnoteを読めば、街を歩きながら、ネットで資金調達のプレスリリースを読みながら、さらには、FUNDINNOのプロジェクトページを見ながら、「この企業は伸びるな」「競合とはここ違う!」と語れるようになるかもしれません。

インタビュアーは前編に引き続き私、日本クラウドキャピタル CMO向井がつとめさせていただきます。

日本クラウドキャピタル  CMO 向井 純太郎
2001年上智大学理工学部卒。日本ヒューレットパッカードにて、主に金融機関向けにエンジニア/ITコンサルタント/プロジェクトマネージャーとして従事した後、2011年にライフネット生命に入社。システム企画部に配属後、マーケティング部WEBチームにて、ウェブマスターを担当。その後、お申込みサポート部部長として、CX(カスタマーエクスペリエンス)の強化に取り組む。インバウンドセールスチームの立ち上げや国内生保初のLINEサービスの立ち上げ等に従事。その後、GRCを手掛けるSaaSベンチャーにて、BtoBマーティングと採用マーケティングのチームを立ち上げ。現在に至る。

ベンチャー企業分析は、”数字を推測する力”と”熱量を感じる力”が必要です。

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すごいスピードで伸びてくベンチャー企業は腕が鳴る!

向井)「企業分析したい!」と思う、面白そうな企業ってどのように見つけるんですか?

大手町さん)例えば、上場を目指しているスタートアップを分析するのは面白いですね。すごい勢いで資金調達して、企業価値がぐんぐん大きくなる会社は、自分たちが予想できないくらいスピードでビジネスも伸びていきますから。一番勢いを感じたのは、ニュースキュレーションアプリ運営の株式会社Gunosy(グノシー)。創業から2年6ヶ月の速さでマザーズに上場しました。(現在は東証一部上場)
マザーズ上場前に資金調達を何回か行っていたと思うんですが、その情報からビジネスの伸び具合を図ることができます。つまり、企業価値が大きくなっているということは、売上や利益等が伸びているか、KPIがしっかりと成長している可能性が高いです。この情報を他の一次情報とともに更に深堀りしていくことで、企業の成長度を知ることが出来ます。

向井)資金調達の情報は、どのようにキャッチしているんですか?

大手町さん)『PRTimes』などを活用して、ウォッチしています。資金調達の金額が大きいとか、繰り返し何度もしているところは、着実に伸びている可能性が高いので、その企業を分析対象とします。

ベンチャー企業分析はファイナンスからはじまる

向井)多くのベンチャー企業は、財務データなど公開されていないですよね。どのように分析していきますか?

大手町さん)ベンチャー企業分析のスタート地点は完全にファイナンスです。ベンチャー企業は、上場企業と異なり財務データを公開していないことが多いので、財務データを推測するしかありません。
そこで、ファイナンスしたという情報や、関連する一次情報から「きっとこれは●●にお金を使ったのだろうな」という資金使途を推測していくと、「このビジネスモデルなら、こんな財務諸表になるのだろうな」という予測がついてきます。この予測力は、自分の『モノサシ』をどれくらい持っているかによって変わってくるかもしれません。

でも、FUNDINNOで資金調達を行ったベンチャー企業であれば、財務データも資金使徒も明らかになっているので、数字を推測する必要がありませんね。

さらに、ベンチャー企業特有の、全く新しいビジネスモデルに対しては、新たなの『モノサシ』を探す必要があります。
例えば、分析したいベンチャー企業のビジネスに近しい展開をする海外のスタートアップで、企業価値が大きくなっている会社があったら、そこをモデルにしてビジネスを組み立てている可能性が高いので、参考になりますね。
日本はまだまだタイムマシン経営が成り立つ分野も多く、起業家の皆さんもよくウォッチされている印象を持っています。
なお、海外のビジネス情報は、クランチベース(世界最大級のベンチャーデータベース)が情報ソースとして有効ですね

“熱量”は数字と並んで重要な成長ファクター

向井)ベンチャー企業分析ですが、財務データを推測しつつ、他に見ているポイントはありますか?

大手町さん)ベンチャー企業の分析においては『熱量』も重要です。
『熱量』とは、「そのサービスがないと生きていけない人がどれだけいるか」「熱狂的なファンがどれだけいるか」ということ。非常に重要な企業成長のファクターだと思っています。

例えば、フリマアプリ「メルカリ」で考えると、サービススタート当時は他にはないCtoCビジネスでしたが、今や、これがないと生活できない人たちが確実にいます。「メルカリ」のユーザー数がまだ少なかった時点でも、『熱量』を意識すると「このサービスがないと困る人がこれだけいる」という点に気づき、マーケティングのやり方次第で、どんどんユーザーが増え、ビジネスはスケールしていくと予測することができます。

また、コスプレの良さについて個人的にわからなくても、コミックマーケットの映像を見たら、「なんだ、この熱量は?!」という凄さを感じることができます。アイドルの世界も同じです。めちゃめちゃ『熱量』の高い集団がいるということは、マーケティング手法を工夫することで、もっとサービスを広げられる可能性を秘めているということになります。

向井)『熱量』を測る指標として、FUNDINNOで何人の投資家からいくら資金調達ができたか、も参考になりそうですね。社会に必要だと感じたサービス・プロダクトに投資する方も多いので。

大手町さん)投資家の皆さんが、一緒にサービス・プロダクトを育ててくれて、ファンとなってくれると非常に強い力になると思います

自分たちの著書『世界一楽しい決算書の読み方』も、発売からまだそれほど時間は経過していませんが、世の中には無数の財務分析に関する本が存在します。
その内容には大きな差はないかもしれませんが、私たちは、ツイッターで、多くのフォロワーの皆様を巻き込みながら#会計クイズを育ててきたので「同じ財務分析なら#会計クイズを選ぶよね」ということになっているのではないかと推測しています。笑

今や、マスマーケティングが通用しない時代です。ツイッターで、ある企業の公式アカウントが発信すると300リツイートなのが、個人で発信すると8000リツイートされたりします。まさに、企業よりも、熱量の高い個人の意見の方が、影響力が強いと言えます。そんな時代に「いかに熱量の高い個人に発信してもらえるか」つまり「いかにプロダクトやサービスのファンを増やすか」にかかってきます。そこに『熱量』は絶対に必要です。ファンがついていない商品は、絶対に伸びません

一番楽しい分析は、“フィールドワーク”

向井)数字と熱量について、色々お伺いできましたが、さらに「企業分析においてはフィールドワークが趣味」とお聞きしましたが、どのようなフィールドワークをされるのでしょうか?

大手町さん)まず、自分が顧客になってユーザーとして体験してみます。気になった商品やサービスは、とことん使います。もちろん、出費にはなりますが、これは投資コストと思っています。上場企業の例ですが、「出前館」を分析した時は、よく出前を頼んで分析をしていました。

また、企業の組織文化を、労働環境を「社員の声」でオープンにしている「OpenWork(旧Vokers)」などで、口コミ情報をチェックします。

https://www.vorkers.com/

さらに、求人情報、採用サイトも重要な情報ソースです。新規事業の情報が、求人情報に書いてある場合もあります。例えば、駐車場を中心としたサービスを展開する会社が、カーシェアビジネスをはじめようとしていた際、同社の求人情報に、カーシェアサービスに必要な技術を持っているエンジニア募集があり、どんなことを仕掛けようとしているか見えたことがありました。
逆に、あらゆる職種を募集している企業の場合は、組織体制が出来ていないということも推測できます。また、上場前に、CFOの求人情報があったら、その会社は財務データを握っているCFOが抜けたという危険な状態かもしれません。そして仕上げに、登記簿を見たら、大方のことはわかります。

ヒトとファイナンスの動きは要チェック

向井)企業分析でリスクの部分も気になりますね。求人情報以外にどのようにチェックすることができますか?

大手町さん)”人”と”ファイナンス”は、リスク要因になることが多いですね。
”人”については、先ほどもお伝えしたように、求人情報を見ると、エンジニアが足りなそうとか、CFOが必要な状況であることなどがわかります。

”ファイナンス”については、ビジネスモデルとそれまでの資金調達情報がわかっていたら「苦しいかどうか」が企業分析力が上がると見えてきます。

例えば、プラットフォームビジネスを展開している会社は、そもそも広告宣伝費がグロース原資になっており、最初は粗利率が悪化していてもいいのですが、後々、自ら広告宣伝費の原資を作らないといけない。よって、成長と共に粗利がどれだけ改善しているかが見どころです。つまり、自力で広告宣伝費を稼げるまで資金調達をする必要があります。しかし、成長の途中で、資金調達が難しくなってくると、グロース原資(=広告宣伝費)がなくなってくる・・・というリスクが出てきます。

向井)上場企業のように公開されている情報が少ないベンチャー企業でも、いろいろな側面から情報収集して、様々な数字を推測しながら企業分析を楽しめそうですね。とても、勉強になりました。ありがとうございました!

大手町さん)企業分析の面白さはまだまだありますよ。自分は財務データを中心に分析していますが、マーケティング視点で語れる友人にも、ぜひインタビューしてみたら面白いのではないでしょうか?

向井)はい!ぜひご紹介ください。

大手町さん)マーケティングトレースを主宰されている黒澤さんをご紹介します!

黒澤さんとは、会計×マーケティングを掛け合わせたテーマの勉強会を一緒に開催したり、最近ではFUNDINNOの案件を企業分析するイベント #30分企業分析 を一緒に開催もしています。
会計・ファイナンスとは異なる、マーケティング視点でのベンチャー企業分析方法を解説してくれると思います!

向井)ありがとうございます!楽しみです。

つづく・・・・

付録:ベンチャー企業分析に役立つツール5選まとめ

①クランチベース
海外ベンチャー企業の分析に!
https://www.crunchbase.com

②テッククランチ
国内外のベンチャー企業の分析に!
https://jp.techcrunch.com/

③Craft
海外企業のベンチマーク先理解に!
https://craft.co/

④PRTIMES
企業の直近の仕掛けを理解する
https://prtimes.jp/

⑤OpenWork
企業の組織文化を理解する
https://www.vorkers.com/

⑥Twitter
経営者やファンの熱量を理解する!
https://twitter.com/home

presented by FUNDINNO



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