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よるとうみのはなし ―眠れない夜のエッセイ

こんにちは…いえ、こんばんは。Funtom―ふぁんとむです。

note初心者なので、どうしようなにしようと公式noteさんのアカウントを見て回っていたところ、『眠れない夜に』の企画を見つけました。

『夜』…。とっても好きな言葉です。
ただ、『夜』そのものは必ずしも大好きというわけでもありません。
幼い頃に見た恐ろしい夢、どこまでも暗い暗い時間…。昼間のうるささを離れてほっと一息つける時間である一方、怖くてしかたがなかった(今も怖いと思うときはたびたび…)思い出が、ふっと迷い込む時間でもあります。

プラスとマイナス、二つの気持ちや思い出が居座るふしぎな時間。
そんな時間に布団にもぐって、わたしが時折考えるのは、この表題のこと。

『よるとうみのはなし』、わたしの些細な空想の書き散らしですが、静かな夜に少しだけお付き合いくださいな。



わたしは『夜』を、『海』に例えるのがすきです。とおいとおい過去に、夜を海に例えたお話か絵を見た記憶があります。詳しくは覚えていませんが、きっとそれが確かに、幼いわたしのやわらかいところに触れたんでしょう。


わたしの家は、少し歩いたところに大きな道路があります。日中は車通りが多いですが、夜は少ない道路です。ただ全然無いわけではもちろんありません。

夜になり、静かな部屋の中で耳をすませると、車がその道路を通りすぎていく音が、遠く聞こえます。

この遠さが非常に心地よく、音が大きすぎるわけでもなく、小さすぎるわけでもなく…。
そうして、『コォー』と『ザァーン』を足して2で割ったような、なんとも表し難いその音は、波が寄せて返す音に聞こえるのです。


夜の車の音を、波の音に例えてみて、窓際にあるベッドに寝転がって。
そうすると、暗い暗い海をゆらゆらと漂っているように感じます。
その空想に身をゆっくりゆっくりしずめていくと、だんだんどんどん、ふしぎな気持ちになっていきます。

暗闇に身をゆだねるのは、いつもなら不安でいっぱい。海の水はひんやり冷たい。
けれど、ふしぎとこわくない。まるで暗闇がやわらかなベールになってからだを包み、海の水がゆっくりと、あやすようにゆすってくれているような心地。


『暗闇を克服する』と言うにはまた違うこの行為に名前をつける…とするならば、『暗闇をうけいれる』『暗闇と一緒にすごす』といった感じでしょうか。
これはどうにも言葉にしにくい感覚なのですが、本当なら『暗闇をゆるす』という言葉もいいなと思っています。『ゆるす』という言葉がすきなんです。
ただ、人によっては上から目線に、強めの印象に取られそうで、少し怖いです。

やさしいような、けれど少しばかりの不安が入り交じるような、そんな夜と(空想上の)海には、ひらがな表現がぴったりです。
特に夜なんかは、『よる』…このように、ひらがなにするとどこか不安定な心地を、わたしは覚えます。
…なぜでしょう。こればかりはどうにもわかりません。わたし個人の持つ、わたしだけの感覚かもしれません。
でもやっぱり、しっかりと立っているようでそうでもない、迷いのある形を、『よる』の二文字はしているように思うのです。

うみ』と『よる』をひらがなに変えて、ゆうらりゆうらり眠りにつく。

これが、『よるとうみのはなし』です。



もしも今この記事を夜に読んでいて、車の走行音が遠くに聞こえていたら、ぜひやってみてください。このふしぎな気持ちと感覚を、誰かにもわかってもらいたいのです。

わたしの取るに足らない空想の書き散らしに、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

どうかあなたの夜が、やすらかなよるになりますように。
おやすみなさい。



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