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177 素敵なカラフル

ほんわか優しい雰囲気。
いつも笑顔で穏やかな性格。

そんなふうになりたいと高校生のころ思った。
そう思ったきっかけは、家庭科の授業。

将来、どんな暮らしがしたいかA3の紙にまとめるという授業があった。
みんなおしゃれな雑誌や不動産屋さんの広告を持ってきて、「こんな洋服が着たいな」「こんな家に住みたいな」「花屋さんに就職したいな」なんて楽しくおしゃべりをしながら、お気に入りを切り取っては紙に貼り付けていった。

できあがったA3の紙は、教室や廊下にしばらく貼り出されていて、それをながめるのが毎日の楽しみだった。あまり話したことのない子の将来の夢を見て「すごいな〜」と思ったり、仲良しの子でも「こういう家具が好きなんだ」と発見があったり。

女の子ばかりの学校だったから、パステルカラーでまとめる子が多くて、廊下や教室が華やかになっていた。

そんな中、私はベージュやグレーをメインにピンクをひとさじ、といったどちらかというと地味な色づかいだった。

家庭科の先生は、「どのポスターもとってもきれいね。誰がいちばんではなくて、それぞれきれい。みんなもそう思わない?誰ひとり同じポスターはないわ。それだけみんなの考えはカラフルだということね」と言った。

その言葉を聞いて、これまでみんなと同じ制服を着て、同じ勉強をして足並み揃えてきたけれど、こんなに頭の中は多彩なんだと気づいた。

色んな頭の中があって、自分とは違って当たり前。
それを楽しめるふんわりした人になりたいと、その時に思った。

社会人になって、他の人の意見を聞く機会が増えた。
仕事の意見交換は大学の討論と違って、なんというか真剣勝負だった。

相手が同じ意見だったら嬉しくて興奮するし、違う意見でもよく聞くことで納得できることもあった。どうしても納得できない、理解できない意見や考えに当たることもあった。
その度に「私は頑固すぎるのかな」と思って、落ち込んでいた。

毎日は、ふんわりにこにこして過ごせるものではなく、ときにキッと厳しい目をして過ごすものなんだと知って、このままでいいのかなと思い、眠れない夜もあった。

そんな中、仕事のクライアントからこんな言葉をいただいた。
「あなたと話していると、新しい発見があっておもしろい。波風立てたくないと思って、意見を封じてしまう人もいるけれど、思いをぶつけあった方が良いものができるから、これからもよろしく」

「えっそうですか。いつも細かいことを言ってしまっているかなと思っていたのですが…」
私は嬉しくなると、つい謙遜してしまうのだ。

「だからいいんだよ。細かいことに僕らは気が付かないことが多い。君が気付いてくれるからいいんだ。もちろん、君の意見全てを取り入れるわけじゃないけど、色んな視点があることが大切だよね」
クライアントはそう言って、電話を切った。

その時、私はあの色とりどりになった廊下や教室を思い出した。
みんなの頭の中は、どれひとつとして同じものはない。
私のように少ない色合いの人もいれば、暖色系、寒色系、パステル。自分と違う色づかいを見て何かに気づくこともある。

これからも意見がぶつかることはあるだろう。
でも、例えば却下された考えだって、完全な間違いではないかもしれない。
もちろん、理解できない考えだって、誰かにとっては譲れない考えなのだ。

色んな考えがあるからおもしろい。
同じ色合いのスーツを着ていても、頭の中の色までは揃わない。

そんなふうにカラフルな考えがあることが大切なのかもしれない。
そう思った瞬間、ふんわりと優しい自分に近づけた気がして、少し笑った。

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