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窓辺で本を

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これまで読んだ素敵な本たちをふむもく視点でご紹介します。
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#読書記録

023 窓辺で本を-夕闇の川のざくろ-

雨が止んで、世界がみずみずしくなったので散歩に出かけました。 葉っぱの緑色は、雨が降る前よりも濃く見えます。土や家の屋根は水をふくんでどっしりとしています。 川はやはりカフェオレ色になって、いきおいよく流れています。 なにかを運んでいるように。ただひたすらに。 -------------------- 江國香織さんの作品で「夕闇の川のざくろ」というお話があります。 もともとは絵本だったようですが、私は図書館で『江國香織とっておき作品集』という本の中で出会いました。その後、

017 窓辺で本を-なくなりそうな世界のことば-

あなたは、好きな言葉を持っていますか? 私はたくさん持っています。 本を読んでいる時や人と話をしている時、テレビを見ている時、歌を聴いている時、道を歩いていても。そこかしこに言葉はあふれているので、さまざまな場面で琴線に触れる言葉と出会います。 私の場合、好きな言葉と出会った時はいつもびっくりしてしまいます。 「えっ」 と。そしてもう一度その言葉をかみしめて、しっかりと頭の中にメモします。 そういった大切な言葉たちが、ふとした瞬間に助けてくれることも多くて、言葉のちからを感

012 窓辺で本を-西瓜糖の日々-

何年か前、図書館で仕事をしていたことがあって、そこでさまざまな人に出会いました。 本を読むのが好きで定期的に来る人、子どものために絵本を借りに来る人、なにか知りたいことがあって来る人。そのほかいろいろ。 私に話しかけてくれる人は、たいてい何かを知りたい人でした。 あの映画の原作はありますか?ええと、作者はわかりません。とか。 血液型の歴史を知りたいのだけど、どうやって調べたら良いですか。とか。 どうしてこんな道徳的に良くない本を置いているのですか。とか。 二歳の子にどんな本

005 窓辺で本を-金曜日の砂糖ちゃん-

なんだか早起きしてしまった朝。 ベランダに出たらすでに少し暑くて、でも日中ほど暑くはないので、しばらく空や建物を見ていました。音はなくて、空はきれいな青色。雲は昨日よりもやや多い。 同じ朝はないみたい。 なんとなく、酒井駒子さんの絵本を思い出したので、本棚から出してきました。 『金曜日の砂糖ちゃん』 三つの短編からなる、薄くて小さな絵本。 絵が美しいだけでなく、言葉やストーリーが詩的で印象的な絵本。 今日はこちらの絵本に収録されている一つめのお話「金曜日の砂糖ちゃん」につ