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ふむもくエッセイ

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ふむふむと思ったことと、もくもくと感じたうれしいことを集めました。
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#言葉

199 まるみとあたたかさ

「まるみ」を感じると、やわらかなあたたかさが胸に広がる。 たとえば、しっかりと酸味のあるトマトをコトコトと煮て、味見をすると酸味がやわらいでコクのある味になっていたとき。 酸っぱさがまるくなった、と思う。 たとえば、誰かの言葉にショックを受けてさみしさがにじむ怒りを感じても、その思いを外に吐き出すことなく自分だけで上手に気持ちを切り替えられたとき。 まるみのある強さが少しは身についたかも、と思う。 または、冬の厳しい寒さの中に午後の陽がさしたとき。 冷たい空気がまぁ

189 「大丈夫」の強さとやさしさ

「大丈夫」という言葉には、強さとやさしさがあるなとしみじみ思う。子どもが転んで泣いているそばで、母親が「だいじょうぶ、だいじょうぶ」とおまじないのように言っている姿を見ると、やわらかい気持ちになりつつ、自分に言われているわけでなくても「そうか、転んでも大丈夫だ」と心強く思うものである。 また、いつもと様子が違う人に対して「大丈夫?」と聞くことがある。これは、相手を慮る質問。この言葉によって、相手が「実は体調がすぐれなくて」や「落ち込むことがあって…」といった、心の中で抱え

186 言葉にならない吐息

冬が舞い戻ってきたような寒さの夜。 街の灯は、てんてんと続いている。 明日の食パンを買うことを口実に家から出た。 夜の空気のつめたさが胸に入り込んでくる。 食パンを手に入れるミッションはあっという間に完遂してしまったので、食パン入りのエコバッグを気持ち振りながら遠回りして帰ることにした。 意外と車は走っているが、歩いている人や猫はいない。 濃紺の空には、チャコールグレーの雲が浮かんでいる。 ふぅ、と思わずため息が出る。 なぜ私はミスばかりしてしまうのだろう。 定期的に訪

185 心のぬくもりを抱きしめる

「少ない」というと、不安に感じることもあるかもしれない。 例えばストックが少ないと心配、お金は少しでもたくさんほしいなど。 もちろん、「もっとほしい」という気持ちは原動力になり、進歩や成長につながることもある。 しかし貪欲になり過ぎると、足りない気持ちが増幅して恐怖感にとらわれることがあるのではないかと思う。 そして恐怖から生まれる行為は、時として取り返しのつかない事態を起こし、恐怖の連鎖が始まる。 なんだかカタい始まりになってしまったが、「ほのぼの」という言葉を改めて

122 おまもりことば

いつか、どこかで出会ったことばが、ずっとずっと心の支えになることがあります。 私は、それをお守りことばとよんでいます。 それは、友人や家族、職場の人など身近な人との会話の中で出てくる言葉やTVや映画、CDプレイヤーから流れてきた言葉、本の中で出会うこともあります。 十代のころから、そういう言葉たちをノートに記録していました。 今は手帳に記録しています。 昔のノートを見返すと、こういう言葉から元気をもらったり、考えるきっかけをもらっていたんだなと、過去の自分に会えた気がし

080 はちみつを落として

ときどき、頭に浮かぶ言葉があります。 それはひとつではなくて、そのときそのときで色々な言葉が浮かびます。 ほとんどが本の中や映画、テレビ、誰かとの会話の中で出会ったもので、そういった言葉たちがひょいと、それはもう自然に顔を出します。 そして一度顔を出したらしばらく漂っています。 -------------------- 朝早くごみ出しをしたら、さむくて震えました。 でも、そのさむさが心地良くて、部屋に戻って窓を開けました。 外と変わらない、つめたい空気がすいすいと入ってき