118 水を見たくなるとき
「ときどき、水を見たくなります。川の水。川は大きくても小さくてもかまいません。」
そう私が言うと、K先生は静かに頷きながらこう言いました。
「わかる、わかるよ。僕の場合は海だけれど、水を見たくなる気持ちはわかる」
よく晴れた仕事終わりの夕方。去っていく太陽はゆっくりと空の色を曖昧にします。
研究室の静かさは、空気をしんと濃くしていました。
K先生とは、何年か前、仕事の関係で出会いました。
循環器内科の医師であり、大学で教官も務めていらっしゃいます。
私と年齢は離れていますが