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防災ブラチャリリ7 〜防災備蓄の買い出しめぐり〜

気象予報士の加藤史葉@WeatherDataScienceです。
防災に関する設備や記念碑などをめぐり、防災に関する知識・興味を広げていく『防災ブラチャリリ』シリーズをnoteで公開しています。

今回のブラチャリリは、防災備蓄量の考察と、チャリで防災備蓄品を買い回りするという内容です。

それでは、2021年3月初旬某日、防災ブラチャリリ 〜防災備蓄の買い出しめぐり〜 行ってみましょう!

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防災備蓄、何がどれだけ必要??

「災害時のための食料は、最低でも3日分、できれば1週間分、家庭で備蓄しておきましょう!」

とはよく聞く話。
お家の限りあるスペースを考えると、最低ラインの3日分で手を打ちたいところだけど、「できれば1週間分」という “大は小を兼ねる” な発想が、いざという時の家族の支えになるかもしれない…
うーん、どっちにしたらいい?!

初っ端からここで夫とかなり議論しました。
「住んでる場所や環境の違いで最適な目安日数も異なるはず!」
「災害備蓄が売りのマンションを買ったんだから、それも当てにできるはず!」

ということで、我が家にとって防災備蓄 “何日分?” の最適値を定義するため、改めて、災害に対する住環境のスペックについて再点検することから始めました。

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・私たち夫婦と、母(60代後半の健脚)の大人3人暮らし。
・住まいは、東京都江東区の湾岸エリアにあるオール電化マンション。
・マンションは最新の耐震基準を満たしており、倒壊の可能性は低い。
・立地は、地震による市街地大火が発生せず広域的な避難をする必要がない『地区内残留地区』と都が指定したエリア。
・水害に対しては、江東区ハザートマップ(上図)のいずれでも緑線で囲まれている『避難地区(=地盤が高く浸水しない地域)』と指定されたエリア。
・マンション側で用意している防災備蓄のうち、1住戸あたり18リットルの飲料水と軍手1組と、非常用簡易トイレ数回分が配布される予定。
・上記の他にマンション側で備蓄している物品は、マンション全体で共同利用するための、大型の炊き出し器やカセットガスコンロや石油ストーブ等がそれぞれ複数個。

以上の条件より、震災時も水害時も、発災から災害収束までずっと在宅避難する想定で備蓄品の最適日数を考えます


ライフラインの復旧状況をシミュレーションしてみる

まず、地震について。
今後30年間に70%の確率で起きると言われている首都直下型地震に対して、自分の住まいはどのような状況が想定されるか、『あなたのまちの直下型地震』というサイトから、防災科学研究所が開発した被害予測シミュレーションをやってみることにしました。

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上図左側は、M7クラスの地下直下地震の震源となる可能性のある断層を示しています。私たちの住む湾岸エリアから最も近い3つの断層を黄色マルで囲んでみました。

上図右側の『あなたのまちの直下型地震』シミュレーション条件に、この3つの断層 “都心東部直下” と “羽田空港直下” と “東京湾北部地震” を選択。
この他の条件は、地震発生時の季節は “春”、時刻は “0時”、ライフライン復旧想定は “普通” と “遅い” を選択し、地図から自宅ピンポイントを指定してシミュレーションを実施してみました。

上表より、巨大地震によるライフラインの復旧状況について、
停電日数は、平均で約4日、最大で7日、
断水日数は、平均で約30日、最大で58日、
下水道支障日数は、平均で約25日、最大で41日
とのシミュレーション結果が出ました。

マンションはオール電化なので、ガス停止日数は考慮する必要はありませんが、暮らしの生命線である電気については、停電日数が平均約4日、つまり発災から5日後に供給再開されるという想定で備蓄内容を考えることにします。
断水も下水道支障も、それぞれ平均日数を検討の目安にしていくことにします。


我が家の防災備蓄を定義する

まず、食料の備蓄方針について。
マンション管理会社に訊ねたところ、食料についてはマンション備蓄を当てにせず、各家庭でしっかり準備しておいて欲しいとハッキリ言われました。
また、発火の恐れのある物品の住戸内持ち込み禁止なので、災害時でもカセットコンロをご家庭では使わないでください、と言われました。

以上のことと、停電日数が平均約4日という想定より、我が家のサバイバル方針【食料編】を以下のように定めました。

・電気の復旧までは、温かい食べ物を諦める。
・食料の備蓄は、加熱なしでそのまま食べられる物品を4日分とする。
・電気が復旧したら、自宅で日常ストックしてある食料・食材を使い、IHクッキングヒーターや電子レンジで調理する。
・電気の復旧に想定以上掛かれば、マンションコミュニティでの炊き出しに食材持参で参加しながら繋いでいく。

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飲料水の備蓄方針について。
飲む用と調理用とで、水は1人あたり1日3リットルが目安とされているので、3人家族の我が家の場合は1日9リットル必要ということなります。
災害により断水が発生した際は、マンション備蓄から18リットルの飲料水が支給されるので、既に2日分の備蓄があるものとみなします。

いっぽう、シミュレーションより断水日数は平均30日。
マンション備蓄分を引いて28日分もの水を家庭内で備蓄するのは非現実的。
じゃあ、家庭備蓄の目安である1週間分×3人分を調達することにすると、我が家の場合は45リットル必要ということになり、これもスペース的に厳しい…。

ということで、自宅では最低限の飲料水を備蓄しておき、足りなくなったら災害時給水ステーションのひとつである東京都水の科学館で水道水(飲用可)を調達することにします。

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以上のことより、我が家のサバイバル方針【飲料水編】を以下のように定めました。

・飲料水は、最低ラインの3日分=27リットルを備蓄する。
・マンション備蓄から18リットル支給されるので、自宅で9リットル備蓄しておく。
・足りなくなったら、近くの給水ステーションへ貰いに行く。

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生活用水の備蓄方針について。
我が家はオール電化なので、幸いにも貯水容量460リットルのエコキュートがあり、断水時はエコキュートから水を取り出すことができます。
エコキュートの水が尽きたら、やはり、災害時給水ステーションからの調達で確保することにします。

以下のリンクから、お近くの災害時給水ステーションの場所を確認してみてください。

以上のことより、我が家のサバイバル方針【生活用水編】を以下のように定めました。

・エコキュートから水を取り出して使う。
・水の取り出し操作方法をエコキュートに貼っておく(下図)。
・エコキュートの水が尽きたら、災害時給水ステーションから調達する。

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トイレに対する備蓄方針について。
非常用簡易トイレは、1人あたり1日5回分が目安とされているので、3人家族の我が家の場合は1日15回分必要ということなります。
マンション備蓄もそれなりの量がありますが、各住戸にいくつずつ支給するかは状況次第という管理会社の回答だったので、あまり多くは期待しないことにします。

いっぽう、シミュレーションより下水道支障日数は平均25日。
家族3人×25日分→375回分もの非常用簡易トイレを家庭内で備蓄するのはやはり非現実的なので、家庭備蓄の目安である1週間分×3人分→105回分を調達することにします。

以上のことより、我が家のサバイバル方針【トイレ編】を以下のように定めました。

・非常用簡易トイレは1週間分の105回分を備蓄。
・使用の機会なく使用期限が近づいてきたら、そのタイミングで災害発生した地域へ支援物資として寄付し、新たに調達することでローリングストックする。

以上それぞれの備蓄内容と量の方針をもとに、実際に買い出しに出掛けます!


さっそく防災備蓄の買い出しへ

買い出しめぐり1軒目は、スーパービバホーム豊洲店。
大きな防災用品コーナーがありました。

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スーパービバホームで購入したもの。
加熱なしでそのまま食べられる食料、災害時給水ステーションへ水を貰いに行くためのタンク2個、非常用簡易トイレ100回分、入浴できない時に体や頭を拭くための手袋状シート、食品用ラップ。

災害備蓄用としてもアウトドア用としても活用できそうなおもしろい商品もありました。

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2階にあるマツキヨで購入したもの。
クリーム玄米ブラン3つ、66枚入り不織布マスク1箱、1000mlマウスウォッシュ。

スーパービバホーム2階には、マツキヨの他、王様のお菓子ランドがあり、ここでSOYJOY12本入りを箱買いしました。
SOYJOYは低糖質なので、避難中でも糖質を避ける食事としてピッタリ!

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買い出しめぐり2軒目は、有明ガーデン。

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有明ガーデン1階のイオンスタイルには、防災備蓄品コーナーがありました。

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イオンスタイルで購入したもの。
普段食べてる素煎りミックスナッツ、加熱なしでそのまま食べられる缶詰(カレー、魚系)を複数、玄米フレーク、グラノーラ。

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今回の我が家の備蓄用食品調達基準に合わず買わなかったけど、これはイイかも!と思った商品をいくつかご紹介。

下図左のカレーは、温めずに食べられ5年も保存できるのが素晴らしい!
ただ、ごはんは別に用意しないといけない問題が…
レトルトごはんを湯煎で温めることができるご家庭には良い備蓄食品だと思いました。

下図右は、宇宙ステーションが認めたやきとり缶詰。
ただ、加熱なしで食べると味が…というネットのコメント発見(^^;;
こちらもカセットコンロを使えるご家庭では、災害で気持ち沈んだ子供に「宇宙食を食べよう」と楽しく食べるきっかけになるかな、と…

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糖質を気にしている私たちに、以下の商品は刺さりました(笑)。
下図左は無洗玄米。
無洗米は白米しかないと思っていたので、玄米食の我が家にピッタリと思いました。

下図中と左は低糖質のレトルト食品。
災害時も糖質気にせず食べられるのが素晴らしい!電気が復旧した後にチンして食べる用の備蓄として良さそう!

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アウトドア商品と防災備蓄品は相性良さそうと思い、有明ガーデン2階にあるアウトドア用品店スポーツオーソリティ アウトドアステージを覗いてみたら、一角に防災用品コーナーがありました!

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有明ガーデンには、関東最大級の規模の無印良品もあります。

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無印にも防災用品コーナーがありました。

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下図左は、いつものもしも備えるセット。非常用トイレ5回分や防寒のためのエマージェンシーシート等がセットになったもの。

下図中は、ミニサイズのカセットコンロ専用ケースに入れればスッキリ収納できそう。

下図右は、折りたみ式ヘルメット

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無印のレトルトカレーが圧倒的な品揃え。
美味しいと評判なので、ローリングストックしながら食べたい。

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防災備蓄にも良さそうなスープや缶詰の品揃えも圧巻。

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糖質が気になりつつも、無印のバウムもローリングストックしながら食べたい…

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防災備蓄の買い出しめぐり、終了!


調達した防災備蓄品と購入額

今回のブラチャリリで買ったもの!

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楽天で7年保存できる飲料水2リットル×6本購入。

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以上、総額29,798円でした!


もとから自宅にある防災グッズ

江東区から配布された、防災備蓄用ラジオ。
電源がなくても、ハンドルを手で回すことで、スマホが充電できたり、LEDライトを点灯させたりと、1台何役もある素晴らしい防災アイテム!

下の写真左側は、東日本大震災をきっかけに、母が購入したコンパクト太陽光パネルとLED懐中電灯のセット。太陽光発電でエネループが充電できます。
右側は、我が家のエネループストック。常に満充電状態でスタンバイしてます。

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玄関の足下にある、センサーライト。
引っこ抜くと、持ち運んで使えるLED保安灯になります。

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その他、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、生理用品、アルコールスプレー、除菌シート、ポリ袋、使い捨てカイロ等、日用品は普段からそれなりの量をストックしています。


必要な備蓄量をシミュレーションできる『防災備蓄ナビ』

防災備蓄、何がどれだけ必要なの?!という場合は、防災備蓄ナビでシミュレーションすることをお勧めします。家族構成を入力すると、必要な防災備蓄量を提示してくれます。

ただ1週間分の備蓄量が提示されるので、量がかなり多いことと、品目もかなり多いので、一瞬たじろぎます…
目標調達量と調達候補品目チェックリストとして活用し、少しずつ買い足していけば良いと思います。

我が家のシミュレーション結果(下表)を参考にどうぞ。

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住環境や家族の事情に合わせて備える

例えば、水害で浸水の心配は無いけど震災で住まいが倒壊する可能性がある、またはその逆で、耐震化された住まいで震災に強いけど水害には弱い等、災害によってはバッグに防災グッズを詰めて避難所へ移動することも想定し、備えておく必要があるかもしれません。

また、家族に小さな子供がいたり、足腰の弱い高齢者がいたり、持病や障害を持つ人がいたり、ペットがいたり、ご家庭それぞれに異なる家族の事情があります。

一度に全てを備えるのは難しいですが、避難生活について家族で想像力を膨らませながら会話を重ね、ご自身の家庭に最適な防災備蓄の内容と量とを洗い出し、少しずつ備蓄していきましょう。

障害者の災害対策ワークショップで開発されたという『自分でつくる安心防災帳』も備えを考える際の参考になるので、ご紹介します。


東京都防災アプリをいじってみる

昨日(2021年3月10日)に大幅リニューアルされた『東京都防災アプリ』。
お住まいが東京でなくても、防災に役立つコンテンツ満載で、ポップなビジュアルも楽しいアプリなので、ぜひ平時のうちにご家族みんなでいじって遊んでみることをお勧めします。

今回のリニューアルで、30以上のコンテンツから必要なものをピックアップし、マイホーム画面へ自由に配置するという機能が追加されました。家族それぞれに合わせたカスタマイズを平時のうちに完了させ、もしものときのアプリ活用を予行演習しておくのが良いと思います。

東京都防災アプリの取説的なnoteを書いたので、カスタマイズの参考になれば幸い!


次は行動の備えをプランニング

今回は私のリアルな住環境や家族に対して最適な防災備蓄量について、被害シミュレーションやハザードマップから考察する方法をひとつの事例として紹介しましたが、家族全員が在宅時に被災して、そのまま在宅避難生活に入るという想定で備えたまでに過ぎません。
特に、突然襲ってくる大地震は、外出時に被災することも想定する必要があります。

次は、家族それぞれのリアルな日常をもとにした災害時のアクションプラン(行動計画)や防災タイムラインを作成し、次回かいつかの防災ブラチャリリで、ある家族の一事例としてご紹介できればと思います。

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