見出し画像

映画『異人たち』あの人を思い平穏を祈る

自分の大切な人が実は大きな喪失を経験していることを言わずに心に留めていたりそれらを抱えて生きているかもしれないと思うことを絶対に忘れないようにしたいと思う。



山田太一原作、アンドリューヘイ監督作の映画『異人たち』を観て思った。



そして自分自身が経験してきた自分の寂しさや孤独を無かったものとして無味乾燥な人生を歩んでいなかっただろうかと。

同時に、この作品が「自分はもう大人だから」と日頃弱音を吐かずに平気そうに生きている人に届くものとなればいいと感じてもいる。

どんな人にも人生の中には悲しみや痛みや喪失があるし、同じぐらいの喜びや温かみや愛がありそれこそが生きている実感なのだろう。たとえそこに生命がなくともそれらが消えることは決してないのだと気が付かせてくれる。

誰かを失うことが怖い、いつか生き別れるのが怖い、極端に言えば死ぬことが怖いと思っていたけれど、本当はそんなことないのかもしれない。

誰しもが自分自身あるいは身近な人の個人的にもつエピソードに重ねて涙する作品だと思う。私自身は、夫がきっと家族に抱いているであろう思いを想像して中盤から終わりまでずっと涙が止まらなくなってしまった。
自分以外のことを思ってここまで泣いてしまう作品というのは後にも先にもないかもしれない。もちろん自分自身の温かな記憶や忘れかけていた家族との思い出を掘り起こされ心が張り裂けそうにもなった。

大切な人がどうか平穏でありますようにと祈るような思いでこの作品を観る人がきっと多いことだろう。あの人の悲しみや喪失がどうか癒されていますように。この美しい作品が多くの人に届くといいなと勝手ながらに感じている。


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?