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静かな秋の夜長にみたい映画「パターソン」

「なにも起こらないのに面白い」というジャンルの映画がとても好きだ。最近はそういう作品のことを「スローシネマ」というらしい。最近ならジム・ジャームッシュが2016年に公開した「パターソン」は、正にその言葉がぴったりな映画だ。

ごく個人的な話になるが、約3年前、夫と付き合いたての頃、
台風が近づいている嵐の日に映画館で「パターソン」を観た。

詩を書くことが趣味のバス運転手、パターソンの7日間を、ただ淡々と描いた物語。
この映画でも、大きなことは、なにも起こらない。
愛妻と毎日キスを交わし、同僚と毎朝同じ会話をして、毎日仕事をし、家に帰れば、犬の散歩とお決まりのバーで一杯。

まるで、バスの窓から、ただ日常が過ぎ去っていくのをそばで眺めているような映画だが、淡々としているからこそ同じように見える毎日にも違いがあり、また平凡に映る日常にこそ、詩のような美しさがあるということに気が付かされる。あたりまえの日常が強烈に愛おしく感じてしまう。


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※個性的な白黒のモチーフが好きなキュートな妻ローラ(G・ファラハニ)と、そんな妻を温かく見守るパターソーン(アダムドライバー)の二人がとても素敵。


たとえがおかしいかもしれないが、
こんな映画を観終わったときに「で、結局何が言いたいの?」なんていう野暮な会話をしない人と仲良くなりたい、と、常々感じている。

「こういう日常っていいよね」

と、あの時映画館で、まだ当時恋人だった夫が言っていたから、私はこの人と結婚したのかもしれない、なんて思う。
(もちろん後付けだけど・・)

なにも起こらない映画の代表といえば、ジャームッシュの初期作「ストレンジャー・ザン・パラダイス」も、はずせない。

パターソンよりも、もっと無骨で気怠くて、若者の勝手自由な生きざまをのぞき見している気分になれるから、ちょっと生真面目に悩んでいるときにこそ、観るべき映画だ。

どちらも、「人生って本当はこんな感じでいいんだったよね」

と、きっと観た人みんなの気持ちを、緩ませてくれるはず。

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なんといっても、彼の作品は映像のどこを切り取ってもかっこいいのだ。

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