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夫と姪

私の兄の娘、8歳と4歳の2人の姪たちに約1年ぶりに再会をした。

彼女たちはもれなく私の夫のことが大好きだ。

会うなり、遊ぼう遊ぼうとまるで久しぶりに会う同級生のお友達の様に目を輝かせて懐いている。

夫の方もどちらかというと、大人としてというよりは子供たちとほとんど同じ感覚で楽しんでいるようだ。

私は毎年2人に会うのがいつも楽しみで大好きな存在であることは揺るぎない。

だが、それ以上に夫と姪2人の、3人の様子をみているのがなによりも好きである。


そういえば、お姉ちゃんの方の8歳の姪は、私たちを、夫婦にしてくれた張本人だ。

独身時代、初めて彼を実家に連れて行ったある年の正月、初対面の彼に普段は人見知りの姪が珍しくすぐに懐いて、2人で仲良くカードゲームで遊んでいた。 

これまで独身を貫くつもりだった自分が「結婚しても良いかもな」とその瞬間になぜか直感的に感じたのだ。

それに、せっかくできた夫と姪2人の友人関係を、無くしてしまいたくないと思った。

それは私にとって、初めての感覚だった。


子供のいない中年独身男性が、9歳の甥の面倒を突然みることになり子育てに奮闘しながら次第に理解し合い、共に心を通わせ成長していく物語、映画「カモンカモン」を偶然にも、観たばかりだった。

夫と8歳の方の姪は、2人でお手紙のやり取りをしたり、私の知らないところで二人だけの約束事をしたりするほど、波長が合うらしい。

なんとなくこの映画の中の2人の関係性にも遠くない。

夫はいつも彼女の小さなちょっと言った言葉をしっかりと覚えていて、その願いを必ず叶えようとする。
一昨年は彼女のために、実家の庭に本格的なブランコを作ったし、昨年は彼女の希望であるボウリングごっこをするために手作りの小道具を数日かけて用意していた。


つい昨日、実家で皆でいた時に私の体調が少し悪くなり(食べ過ぎだ)、リビングを離れて奥の部屋で横になって夫に足をマッサージしてもらっていたところ、8歳の姪が無邪気に部屋に入ってきた。
私は心配をさせたくなかったので、「今帰り支度していて疲れたから少しだけ横になってるんだよ」と普通に接していたつもりだったが、状況を察した彼女は、それ以上何も触れずにまたすぐにリビングに戻って行った。

実は、彼女はつい2日前、実家に来るなり「今日はFumiちゃんの家にひとりで泊まりたいんだけど、いい?」と言っていたらしい。

彼女にとっても私たちにも、それは、初めての経験である。
結局は、4歳の妹がかわいそうだと思ったのか、あるいはまだ少し不安があったのか今回は無しになった。

だが、あれは本当に嬉しかった。


あの時彼女に言われた瞬間から私たちはあたふたしながら部屋の大掃除をして夜寒くない様に暖かい布団を支度し、彼女の好きな食べ物を用意しに買い物に出かけたりした。読書が好きな彼女を想像して図書館で本を借りてこようとも考えた。

親になれば当たり前の事なのかもしれないけれど、私たちにとってそれはとても特別な時間であったのだ。

人が誰かを大切に考える時、そこには自分の意志以上に、尊重したい誰かの考えや、耳を傾けたくなる誰かの言葉がある。

わたしの2人の姪たちはいつもその大切なことを教えてくれるし、彼女たちを本当の血のつながった姪の様に考えてくれる夫もまた私に今まで経験したことのない感情をくれた。

私たち夫婦には子供がいないしこれから先もどうなるかは全くわからないけれど、大人として彼女たちの未来に責任を持たなければいけないなと切に感じる。

映画の中のジョニーが、最後に甥のジェシーに放った言葉が胸をつく。

「君は僕とすごした日々を忘れてしまうだろう。だけど、僕は覚えているよ」

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