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上履きの矜持

靴という靴の中で、最も虐げられているような気がする。ボクら上履きは。

何十年も変わらない質素なデザイン。汚れたって臭くなったってほったらかし。一週間に一度、ちゃんと家に持って帰って洗ってもらえれば、まだいい方。下手すりゃ終業式まで放置プレー。

男子も女子もかかと踏みつぶすし、もう、やってらんないよ。

やってらんないけど、この国を支えているのは偉そうな政治家なんかじゃない、ボクらなんだってプライドがある。

だって、子どもに夢を与えてくれるアイドルもアスリートも、縁の下で黙々と働き続けるエッセンシャルワーカーも、みんな、上履きで学校の廊下や階段や教室を踏みしめながら育ったんだから。

みんなの青春時代、僭越ながら伴走させてもらったんだ。

悲しいことがあっても、悔しいことがあっても、陽が落ちて昇ればいつもと変わらずゲタ箱でみんなを出迎えてあげたのは、ボクらなんだ。

みんなが心に秘めた気持ち、わかってるつもり。

今日も明日も、ゲタ箱で待ってるよ。

#短編小説 #ショートショート #詩 #現代詩 #エッセイ #上履き #400文字のショートストーリー

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