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2022年11月 一箱本屋PLOW店主が読んだ4冊

先月から、気温の変化なのか、生活の不安なのか、ずっとふらっふらの日々を送っておりました、PLOW店主です。

今月はびっくりするほど本を読んでいない、というか読んではいたけど、手をつけかけの本がどんどん溜まっている状況です〜〜

悪女について(有吉佐和子)

《自殺か、他殺か、虚飾の女王、謎の死》――醜聞(スキャンダル)にまみれて謎の死を遂げた美貌の女実業家富小路公子。彼女に関わった二十七人の男女へのインタビューで浮び上がってきたのは、騙された男たちにもそれと気付かれぬ、恐ろしくも奇想天外な女の悪の愉しみ方だった。男社会を逆手にとり、しかも女の魅力を完璧に発揮して男たちを翻弄しながら、豪奢に悪を愉しんだ女の一生を綴る長編小説。
Amazonより

職場の方に「古い小説だけど斬新で面白いよ〜」と勧められて読んだ一冊。

いやあ、こんなに手が止まらなくなる本は久しぶりだった……

謎の死を遂げた女実業家「富小路公子」について、彼女に関わった27人が順番にひたすら供述していくという構成。1978年出版だから、44年前の作品よ!?斬新すぎるよね!?!?

実は、富小路公子本人はまったく出てこない。ひたすら周りの人たちが「あの人は天使だったわ」「あんな悪女はいない」といった感じで、彼女の印象や出来事を語るだけ。

間接的にしか彼女のことを知ることができない。その断片的な情報すら、真か嘘か?怪しい。

それでも、読み進めるうちに、最初はわからなかった新事実が次々発覚。ときにはミスリードもあり、だんだん人物相関図を描きたくなってくる。笑

以前読んでいた「華岡青洲の妻」も一晩で読み終えた記憶があるので、なんとなく自分と相性がいい気がする。
有吉作品、もっと読んでみようかな。

黄色い目の魚(佐藤多佳子)※再読

海辺の高校で、同級生として二人は出会う。周囲と溶け合わずイラストレーターの叔父だけに心を許している村田みのり。絵を描くのが好きな木島悟は、美術の授業でデッサンして以来、気がつくとみのりの表情を追っている。友情でもなく恋愛でもない、名づけようのない強く真直ぐな想いが、二人の間に生まれて――。16歳というもどかしく切ない季節を、波音が浚ってゆく。青春小説の傑作。
Amazonより

中学時代に買った単行本が、今も手元にある。

わたしにとってはもはや”マイヴィンテージ”と化した本なのだけど、ふと登場人物のうちのひとり、「似鳥ちゃん」を思い出して読み返してみた。

似鳥ちゃんは、いつも白い服を着ている。クール。「何かを好きになると、全部消えてしまう」らしい。彼女に対して、喪失感のある、くすんだスモーキな印象を抱いていた。初見のときは、こんな冷めてて人生楽しいかな?と思っていた。反面、執着がなさそうな、どこか弱さを内包している彼女にとっても憧れていた。

再読して思ったのは、執着がない方が身軽かもしれない、でもわたしは執着したいや、ということ。
物に対しても人に対しても、自分で勝手に距離感を探って、「来るもの拒まず、去るもの追わず」としてしまいがちだけど、そんな自分が嫌で、執着していたい。

全然、本題と関係ない話なんだけどね。いやそうでもないかな?


この本があったから、強烈に鎌倉に憧れた。あの頃、グーグルマップもなく、かろうじてガイドブックの写真でしかわかっていなかった鎌倉。
読み返すと知っている場所が増えていて、中学時代のわたしに「ちゃんと辿り着いたよ」と教えたくなった。

似鳥ちゃんスタイルに憧れて、久々に白いパンツを取り出してみた。


おらが村(矢口高雄)

東北は秋田、奥羽の山懐に包まれ、半年は雪の下に埋もれる厳しい自然、それが“おらが村"。
寂寥、倦怠、不安、欲望、喧騒、期待、そして夢とないまぜのなかで過ごす村人たち。

ゆかいな高山一家を中心に、彩り鮮やかな四季を通して矢口高雄の精緻なタッチが描く極上のヒューマンドラマ。

遠く忘れさられていく昭和時代の貴重な記録集。
Amazonより

秋田出身の漫画家といえば、矢口高雄先生。

有名なのは「釣りキチ三平」だけど、秋田の山村の暮らしを生き生きと描く「おらが村」も忘れちゃいけない。
最近は、初期の作品が、ヤマケイ文庫から多数出版されている。手に入りやすくなってありがたい。

こちらは、1973年出版となかなかに古い作品である。(余談だが、「釣りキチ三平」のKCコミックスオリジナル版は、現在も入手困難らしい……もう一度、手元に欲しいのだけど、復刊でもしない限り手に入らないのでしょう……ツライ)

訛りが結構きついので、苦手に感じる方もいるかもしれない。ただ、秋田の県民、市街地以外は今も結構訛ってるよね?そうだよね?
私の友人、中学時代まで自分のこと「おら」って呼んでたらしいし……



で、内容はというと、当時、抱えていた山村ならではの課題をいくつも取り上げている。
農家に嫁いてきてくれる女性がいない「嫁が見つからない問題」、若い働き手を持っていかれてしまう「出稼ぎ」、親世代と子ども世代の恋愛観・結婚観のギャップ……

あれ?今もそんなに変わらないかも。
恋愛観・結婚観のギャップはなお存在している。平成に入ったあとも、祖父母たち、出稼ぎしていた気がする……?

生活はすっかり一変したけど、価値観はなかなか変わるものじゃない。

あと、矢口先生の他の作品にも言えることだけど、自然の描写が本当に美しい。動物や植物の描写を見ていると、幼い頃からの経験や感性ってずっと変わらないものなんだなあと思ったり。

「おらが村」で育ったからこそ培ったであろう視点が眩しい。


GINZA 2022年12月号

雑誌が大好きなのにもかかわらず、これが久々の購入。
「GINZA」は毎年、ヴィンテージ特集を組んでくれるので、よく買っている。

雑誌を読んで気づいたが、わたし、どうやら「新しいものを取り入れたい期」に入っている模様。特に音楽。

ここ10年ぐらいは、ずっと邦楽をメインに聞いてきた。

それが、最近は高校時代ぶりに洋楽にもちょこちょこ手を出している。特集に載っていたアーティストを順々に聴いてみる。

バンドをやっていたくせに、あまりジャンルに詳しくなかったけど、最近気になっているジャンルはソウルにあたるらしい。新しい発見。
アンビエントもちょこちょこと漁っている。

ネットもいろんな情報を簡単に集められるけど、知らない自分を探しにいくのには雑誌の方が向いている。

カラコン、派手なアイライン、服の組み合わせ。うん、ファッションは自由でいいんだよね!ファッションから遠ざかっていたけど、おしゃれしたいモードだ。

アラサーになって、少し他人から見える自分にブレーキをかけていたかも。まだまだアラサー前半。自由に楽しんでいこうぜ!


今月はなんだか渋いラインナップでした。
長々とお付き合いいただきありがとうございます。

PLOWでは、ご購入の方にオリジナル文庫本カバーを差し上げています!ちょっとラインナップも増やす予定。あなたの「心を耕す一冊」をぜひ彩ってあげてくださいね〜〜
12月もお待ちしています!


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