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牛田さんと高田さん

先日、とある大学で講義をしてきました。
地域包括支援センターの高田さんと、高田さんが関わりを持ち続けてきた牛田さんと3人で。

地域包括支援センター社会福祉士の高田さん(左)と牛田さん(右)

牛田さんは海外旅行専門の営業マンとして世界中を飛び回っていた30年ほど前、大きな交通事故で左半身に麻痺が残り、大好きだった営業の仕事を離れた。

それから30年ずっとリハビリを続けている。

主なリハビリの場は自宅すぐの公園。

自宅と公園の往復が生活のほぼすべてとなっていた3年ほど前、牛田さんのことを心配した近隣の人から地域包括支援センターに連絡が入った。

牛田さんの自宅を訪問した高田さんは、最初はリハビリ系のデイサービスを勧めたが、牛田さんはその提案を断り、自分でリハビリを続けることを選んだ。

高田さんはその後、毎月一回、この公園を訪れ、牛田さんとベンチに座り世間話をした。(もうデイは勧めなかった)

そんな日々が約3年続いた。

そして昨年秋、高田さんは「牛田さんとともに」という想いで、この公園で絵本などを通じて地域包括ケアを伝える朗読会「生老病死」を始めた。

死にゆく猫”ミツ”と”ぼく”を描いた絵本「ミツ」を朗読する高田さん

牛田さんに声をかけたら、この公園のことを隅々まで知っている牛田さんはいろんなことでアドバイスをくれた。
営業のスキルを活かし、公園を歩いている人に声をかけ、チラシ配りをしてくれた。

「生老病死」の取り組みとともに、その中心にいるふたりの関係がとても素敵だと常々思っていたので、今回の講義のゲストをふたりにお願いした。

こころよく引き受けてくれた牛田さん。「十数年ぶり」と照れ笑いしながら、背広姿で現れた。

足元はいつものつっかけサンダルで。

今回の講義のテーマは「老い」。牛田さんというひとりの人の人生の語りから、若い学生たちと老いについて考えた。

牛田さんは学生たちに、「人はいつか死ぬ。でも死ぬまではコツコツ地道にやることが大事なんだ」と語りかけた。

営業マンだった牛田さんは、「高田さんの仕事の意味がわからない」という。
お金にならないのにそれが仕事として成り立っているのが不思議なんだそう。

でも、学生たちの前で牛田さんは、高田さんを指差し「この人といるとホッとするんだよ」と、つぶやくように語った。

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