もう1つの旅のカタチ
バルセロナで、たっくさんおいしいものを食べたけれど、衝撃と言っていいほどの驚きだったのは、シシトウの素揚げだった。シンプルにさっと揚げて、お塩をパラパラとふっただけ。それが小皿に、山盛り出てくる。これがほんとにおいしい。手でひょいひょいとつまんで、いくらでも食べられる、ビールでもワインでもOKな万能おつまみだった。
移動できない、人と(あまり)会えない時間が長期化するにつれ、オンラインでのサービスがどんどん発展している。先日は「おうちでヨーロッパ旅」という、オンラインツアーに参加してみた。行き先はスペイン、バルセロナ。町歩きに食べ歩き、名所を巡って、歴史に触れ、空気を感じて。旅の醍醐味はもちろん、現地で実際に自分の五感で感じること、それは絶対に間違いないけれど、それでも現実に叶わぬ今、確かにこれは1つの、新しい(偽)旅として十分にアリなのではないか、と思った。
シシトウを思い出したのは、「欧州 旅するフットボール」を読んで。イタリア、スコットランドを経て、現在はバルセロナに暮らす著者、豊福晋さんのサッカー紀行は、バルセロナでの腹ごしらえから始まる。バルで頼むタパス(おつまみ)の筆頭に、ピミエント・デ・パドロン(シシトウの素揚げ)が登場し、ああ!そうそう!と大きく頷いた。
バルセロナにマドリッド、サンセバスチャンといった観光に人気の都市でも、サッカーを目的とした旅となると視点や行動も異なる。それ以上に、テネリフェやレオンなど、サッカーというきっかけがなければ、著者もきっと訪れていなかったであろう離島や小さな町での経験は貴重で一段と興味をそそられる。スペインをでて、イタリア、イングランド、ドイツ、さらには欧州、そして世界へ。ああ、いいな、ここもあそこも行ってみたい!
・・・そうか。思えばこれまでも、本や映画、テレビ番組などで、いろいろな旅をしてきたのだった。行ってみたいところ、この目で確かめたいもの、手で触れ、味わってみたいものは無限にあって、それを全て体験できるわけではない。今までもこうして活字や映像や音を通して、まだ見ぬ世界を堪能し、思い出の場所に浸り、新しい発見をしてきたのだった。オンラインツアーはライブでインタラクティブな手段もまた、旅の擬似体験として、これはこれでおもしろい。再び自由に旅ができるようになっても、時間的、地理的、物理的にいまはできない旅の楽しみ方として、このツールはさらにもっともっと発展していくのかもしれない。
そしてやっぱり、自由に旅ができるようになったら、またバルセロナにも行きたい。潮風にあたりながら、おいしいパエリアをたらふく食べたい。
おうちでヨーロッパ旅は他にも次々と予定されているようです。
https://mybus-europe.jp/#OLT1
欧州 旅するフットボール
豊福晋・著
双葉社
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Fumie M. 11.04.2020
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