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双子妊娠したら #2 育休について話そう(キャリア論続編)

前回の続き。

キャリア論については門外漢ながら、産育休取得に悩む男性向けに少しでも考え方のヒントになればと願い、自分が大切にするようになった「キャリア・ペースレイヤリング仮説」を説明したい。

ふみITのキャリアについて少しだけ

前回すでに色々書いてしまったが、私自身のキャリアについてある程度書かないとフェアではないだろうと感じ始めた。特に自分の職場が育休取得しやすい環境だったと自覚しているため。

アメリカで修士過程を卒業後、日本の大手web企業に新卒入社。上場企業かつBtoCを生業にしているので社会的認知度高め。
この会社以外で働いた経験がほぼないため他の事情に明るくないが、社内の産休育休制度も相対的にかなり整っていた方だと想像している(とはいえ取得フローについて細かいところは色々文句もあった。より実務的な育休取得フローについては別記事に譲りたい)

職種はエンジニア。現在はビッグデータ開発部門の部門長を担当している。長男育休を取得したのは管理職昇格前だったが、双子育休取得したのは部長在職中である。

キャリア・ペースレイヤリング仮説

今回提唱したいのは、「キャリアにおける要素が層の形で積み重なっていて、各層がそれぞれ異なる速度で変化しつつ、かつ各層が相互に影響を及ぼす」という仮説。

私の造語だが、明確に参考にしたアイディアとして、スチュアート・ブランドによって提唱されたペースレイヤリングという概念がある。

もともとのこの考え方では、社会的要素が各層の要素になっている。例えば、一番表層の「流行」が一番速く激しく変化するのに対し、「文化」や「自然」のような深層は比較的遅く変化することを表している。
より重要な示唆としては、各層の相互作用にある。例えば、流行の急速な変化が商業・インフラ・行政などに多段的に影響を及ぼす可能性があったり、対照的により遅いペースで変化する文化や自然が、全体へより持続的な影響を及ぼすことを示唆している。

この考え方を職場環境について焼き直したものが、キャリア・ペースレイヤリング仮説にあたる。
例えば、「流行層」にあたる一番変化が早くて激しい要素としては、今週や今月あなたがどのプロジェクトでどんなロールでどんなタスクを実行するのかにあたるだろう。中間層としては、あなたが所属しているチームやその中でのあなたのポジション、上司のマネジメントスタイルなどがあるかもしれない。より深層には、組織の明示的/暗黙的コミュニケーションスタイルなどがあるかもしれない。

私の場合、双子育休時は部門長という立場だったので、自身が統括している組織及び密接に関わる別部門について考えていた。たとえば、自部門が深く関わるプロジェクトの進行などを「流行層」として、配下のチーム構成だったり、部内外の各領域リード役などが中間層に、より深層として事業環境の変化だったり所属組織が抱える構造的な長所短所などにあたるイメージをしていた。

おそらく業種・業界によって層の要素が変わってくるだろうし、所属する企業の"若さ"によって各層の相対的な速度は変わりうる。
いずれにせよ、産休育休について考える時にこの仮説に立脚することで、休職期間中自分はどの層の変化であれば許容できてどの層の変化が許容できないかを考えるとよい。
ひいては、あなたがどの層の変化に関わっていたいのか。どの層の変化あれば復帰後自信を持ってキャッチアップできるのか。

もし心配している層があまりに表層にありすぎる場合、もしかしたらこれを機に考え方を変えたほうが良いかもしれない。
早く容易に変化するものは、すぐにまた変化するものである。
より下の層の変化について本質を見抜き、予測し、コミットした方が、あなたの生産性を引き上げるヒントやキャリアのネクストステップの糸口が見つかるかもしれない。
(あと現実問題、復帰後家事育児もしながら今まで通り早い変化に適応し続けられるかというケイパビリティの問題もある)

もしあなたが組織上重要なポジション、特にマネジメントレイヤーであれば、自分が意思決定しないことによる組織の停滞が課題となりうる。
ただこれも考え方を少し変えると、根深い問題は動かすのが難しい一方でそれを動かさなくても他の層は動き続けるものだ。
数ヶ月後戻ってきても、案外その問題はそのまま手付かずで残ってたりする。

終わりに

夫婦トータルのデュアルキャリアの観点からすれば、男性側も育休取得することは長期的にはプラスな側面が大きいと思っているが、とはいえ直近の馬力はどうしたって一時的に落ちてしまう。
この状況に適応するしかないのだが、その時の不安や恐怖を少しでも言語化し、対処のきっかけを探すためのヒントになればと思い、書いた。
次回は、具体的な対処の方法論の一つとして、戦略的不在マネジメント法を紹介する。
また次回。

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