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フィオレンティーナに見た、コーナーキック攻撃戦術

コーナーキック攻撃戦術
~フィオレンティーナより~

 今回は、セットプレーの局面であるコーナーキック攻撃において、フィオレンティーナを分析します。
 分析の対象としたシーンは、23-24セリエA第11節の対ユベントスでのシーンです。
 まず、フィオレンティーナはコーナーキック時にアウトスイング(ゴールから離れていく軌道)となるボールを送ります。これを分析することで、アウトスイングによるコーナーについて、そのメリットやデメリットを考察していきます。


フィオレンティーナの
コーナーキック攻撃

① ベースとなる配置
 フィオレンティーナはコーナーキック攻撃時、下図のような配置となる。
 具体的に、キッカーのエリアには人を配置せず、ゴール前のフィニッシャーのエリアに6枚、後方のマーク/カバー要員として3枚を配置する。ここで、全体の配置を「キッカー - フィニッシャー - マーク/カバー要員」の順で「1-6-3」と表す。

コーナーキック攻撃時の配置「1-6-3」


② キッカー
 ここから、それぞれのエリアにおいて分析する。
 まず、キッカーのエリアでは、ボールをキックする選手は左利きのクリスティアーノ・ビラーギであり、左からのコーナーであるためアウトスイングの起動となる。(アウトスイングとはボールがゴールから離れていくような軌道のこと)
 また、このシーンではショートコーナーの選択肢となる選手は配置していなかった。

キッカーのエリアでの配置とボールの軌道


③ フィニッシャー 
 次に、フィニッシャーのエリアについて分析する。
 ペナルティエリア内では、図のように比較的空中戦の強いの5枚がファーサイドからニアサイドにかけて斜めに並ぶように配置される。このような配置を取る理由は、それぞれの選手がアウトスイングのボールの軌道に合わせるためだと考えられる。そして、セカンドボールに対してゴールへ詰めるためにファーサイドに1人を配置する。

フィニッシャーのエリアでの配置
フィニッシャーのエリアでの配置(別角度)

 これにより、キック後のボールに対して相手よりも有利な位置となる(下図のように、自分に向かってくる軌道のほうが、自分から離れていく軌道に比べ、圧倒的にボールへ合わせやすい / 処理しやすい)ため、ターゲットとなる選手がフリーでシュートできる可能性が高くなる。

ターゲットとなる選手(ラニエリ)がフリーで
ボールに合わせたシーン


④ マーク/カバー要員
 
最後に、マーク/カバー要員について見ていく。
 フィオレンティーナの場合、このエリアには、コーナーキック後ボールロストして敵のカウンターとなった場合に対応するため、3人の選手を配置する。(ペナルティエリア付近の2枚のその後方に1枚が配置されている)

マーク/カバー要員の配置


 今回は、フィオレンティーナのコーナーキックの攻撃について分析しました。
 フィオレンティーナは、ゴール前のエリアにてファーサイドからニアサイドにかけて並ぶ配置を取ることで、アウトスイングのボールの軌道にタイミングよく合わせようとしていました。
 ではここから、アウトスイングのボールのメリットとデメリットを考察します。
 まず、メリットとしては2つあります。1つ目は前述の通り、アウトスイングの場合、攻撃側へ向かっていくボールとなるため守備側よりもヘディングするまでの間においてボールに合わせやすいという点です。個人的に、自分に向かってくる軌道のほうが、自分から離れていく軌道に比べ、ボールへ合わせやすい(処理しやすい)と思います。
 2つ目は、アウトスイングによって、守備側がボールを処理するためにそのラインが上がり、ゴール前にスペースが埋まれることです。このスペースを上手く利用して別の選手を送り込んだりすれば、効果的にゴールを狙うことができると思います。
 次に、デメリットは、アウトスイングはインスイングに比べ、頭でフリックしてゴール枠内へ送るというヘディングの技術において難易度が高いという点です。これは、アウトスイングに頭で合わせた場合、ボールの反射角は鋭角となります。一方、インスイングの場合は鈍角となります。ボールと頭はどちらも球体であるため、鈍角となる方が明らかに有利です。特に、ニアサイドで合わせる場合、アウトスイングのボールは難易度がとても高くなります。ただし、ヘディングの技術の高い選手がチームにいる場合には、アウトスイングのボールは非常に有効になると思います。

画像参考)
23-24 セリエA第11節 フィオレンティーナvsユベントスの試合映像より引用 


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