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諦めの悪い男はカッコイイ話


それは突然、Facebookのタイムラインから流れてきた。
「一番好きなマンガは?」という話で盛り上がったという内容の記事だった。

どうやらその人の見解が相手の方と一緒だったらしく、その作品が「SLAM DUNK」だったそうだ。


「大好きです、スポーツマンですから」


SLAM DUNKの主人公、桜木が好みの女の子にバスケが大嫌いなのにも関わらず、その場限りの嘘から、どんどんバスケットボールの魅力にのめり込んでいく話だ。

高校生になるまで、スポーツをまともにやっているわけでもなく、日々ケンカに明け暮れる不良だったのだが、持ち前の才能と自分を鼓舞する言葉で追い込み、実際に自分のスキルにしていく過程は、読者をいつもワクワクさせるのだった。

それだけでなく、一癖や二癖もあるチームメイトたちが脇を固めていたのである。



そのなかで「三井」という男を取り上げたい。

中学生の頃、全国大会にも出場するほどの実力を持ちながら、試合の途中で「諦めたら、そこで試合終了だよ……」と弱小校の顧問である安西先生の言葉に感化され、最後の最後にシュートを決めて逆転勝利をするのである。

三井はその試合でMVPに輝き、注目される存在になった。

「安西先生に恩返しをしたい」という熱い思い持った男は、強豪校からの誘いをすべて断り、安西先生のいる湘北高校に入学を決めて、全国制覇を掲げて鳴り物入りで入部をする。

しかし、入学初日の1年生同士の紅白戦のときである。

左膝に怪我を負い入院をしてしまうのだ。入院をしながら治療に励んでいたのだが、完治する前に病院を抜け出しチームに合流をする。それにより左膝の怪我が再発してしまい、試合に出ることができず、最後は遠くからチームメイトを見て、バスケ部に戻ることはなかった。

「ぶっつぶしてやる!」

中学MVPであった三井はグレていた。不良仲間とつるみ、バスケ部を襲撃してきたのである。
「湘北高校全国制覇」を掲げていた姿はそこにはなかった。純粋にバスケに取り組む姿勢を持つバスケ部に嫉妬を抱き、自分が情熱を注いでいたからこそ、その姿が羨ましかったに違いない。

「安西先生、バスケがしたいです……」


安西先生の姿を見て、改心し、素直な気持ちを吐き出した。
2年間というブランクがあったが、バスケ部に復帰することになる。

2年というブランクは当時、天才と呼ばれた「三井」も残酷に現実を突きつける。

地域予選では、ブランクを感じさせず自分に自信を持っていたのだが、強豪校と戦うたびに体力に不安を感じさせられる描写が増えていく。

思うように身体が動かない。
相手を振り切るためにより激しく動かさなければ、相手を抜くことができない。
1試合、40分フルで走り回れないことに対して、自分を責める。

「体力ねえな……」試合を重ねるたびに、過去の自分に囚われ試合の途中で倒れるのであった。

そのときに「なぜオレはあんなムダな時間を…‥」と悔やむシーンがより一層、ブランクの大きさを物語っていた。

体力というものは、一朝一夕でつくものではなく地道な基礎練習の繰り返しによって、ついてくるものである。自分も体力がないところがより一層、「三井」という男に重なった。

全国大会2回戦、王者山王工業との試合。

前半に厳しいマークをされ、後半に疲労困憊になる描写が出てくる。今までにないほど疲労が三井を襲い、相手選手にも「あいつはもう限界だ……」と思われ心配されてるのである。

それでも、チームメイトは三井を信頼してパスを回す。相手選手は疲労困憊の姿を見て油断をしたのか、三井のシュートを許してしまう。

「静かにしろい この音が……オレを甦らせる。何度でもよ」

腕を上げることも精一杯なのにも関わらず、それでも諦めずに3ポイントシュートを狙ってくれるというチームメイトの信頼が、三井を蘇らせたのである。

大好きなバスケだからこそ、怪我をして思うように出来なくなるときは、悔しくなるのと同時に愛憎を抱いてしまうことがある。それでも、三井という男が「SLAM DUNK」のなかで、成長していく姿は、現実でも繋がることが沢山ある。

「三井」が教えてくれたことは、諦めずにチームメイトを信頼することで、1人ではできなかったことを仲間と協力することで、乗り越えられることを教えてくれたのである。

「SLAM DUNK」を全体から楽しむのも面白いのだが、1キャラクターからみた視点で考えて、ストーリーを面白がるのも新しい楽しみ方なのかもしれない。



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