月とキャベツ ~One more time One more chance~
今日はミュージックステーションに山崎まさよし(以下まさやん)が出るという。
そういえば先日ツイッターで通知を見て録画予約をした覚えがある。
後でゆっくり観たらいいかと思っていたら、今日は
One more time One more chanceを弾き語るというではないか!
妙にあたふたして気だけが焦り、ドラえもんの途中からTVの前に陣取る。
見もしないクレヨンしんちゃんが大騒ぎしている。
私とまさやんの出会いは映画「月とキャベツ」
元々映画好きであった私は、普段から映画予告やチラシ、ぴあをチェックしていた。
ただ大学を卒業し、就職してからというもの、直属上司の帰りを待ち毎日残業の日々を過ごし、週末の休みは疲れ果てて寮で寝ていることが多かったため、なかなか好きな映画も観ることができなかった。
ただ、その時ばかりはこの小さな案内から目が離せず、どうしても観なければという気持ちに駆られた。
何かに呼び寄せられるような不思議な感覚。そしてそのページを切り取りスケジュール帳に挟んでおいた。
だからといって私の財布の中には絶対に観たいと思って買ったものの、無駄にしてしまったチケットが何枚も入っていた。
それでもどうしても観たいという思い。終業の時間が近づくにつれ、そして片づけを始める他の部署の同期の様子を見ていたらもう我慢できなくなった。
先輩に「今日は定時で帰ってもいいですか?」と打ち明けた時、思いがかなり前のめりだったのだろう。「おうおう、さっさと行ってこい」と背中を押され、そのまま映画館に向かうことになった。
流石に平日の夜間ということもあり、それほど人は入っていなかった。なぜか私は一番前の席を陣取り、スクリーンを食い入るように見つめていた。
途中から涙が止まらなくなり、映画後半はずっと泣いていたように思う。そしてエンドロールも終わり劇場が明るくなってからもしゃくりあげるように泣き続ける私がいた。
大学にいる時は1年に100本以上も観てきた映画だったが、これほどに心を打つ映画はなかった。
正直言って最初は少し棒読みのようなたどたどしさもあり、粗削りにも感じられた主人公の表情が、見る見るうちに花火とヒバナの世界に没入したのだった。
劇場を出て新宿三丁目の駅まで歩くも涙は止まらず、夜一人で泣きながら歩く女性はただただ触れてはいけない存在だったと思う。
地下鉄に乗って最寄り駅についても涙が止まらない。これはもう尋常ではない。心を揺さぶられ続けているのだ。
そして頭の中で鳴り響く「One more time One more chance」
初めて聴いた歌なのにストーリーをなぞるように流れ続ける。
その日から私は必死で上映劇場を探し、月とキャベツを観るために力を振り絞るのだった。
***
映画に関するレビューはまた改めて書くことにし、まさやんの話題に戻る。
そんなわけで、まさやんの
One more time One more chance
には特別な思い入れがある。
去年のライブでも聴いたのだが、やはりあの頃の思い出が蘇り、一瞬にして時代が逆戻りし、物思いにふけってしまう。
今日のまさやん、手が震えていたけど相変わらず心に刺さるいい声だった。
あの頃ライブハウスで「まさやん」と声を掛けると返事が返ってくるような近距離から、だんだんと大きなホールになり距離ができていく。
売れて知名度が上がり、誰でもわかる存在になっていくまさやんの歌をいつまでも聴き続けたいと思う。寂しさと裏腹に良かったねと思える自分がいた。
***
一曲だけでは満足ができず、youtubeで昔のライブを流していると、何と当時の私を発見することになる。
あの映画の頃から少し時が経ち、かなり苦い思いをした21年前の私。
それでもライブの時はスッキリとした心からの笑顔で楽しんでいた。
やりたいことはたくさんあったのに、悩んでもがいて苦しんで、結局はドクターストップで辞めざるを得なかった以前の会社。自分の虚弱体質を恨んで恨んで、気持ちも落ちていた時も救ってくれたのはまさやんの歌だった。
あれから月日は経ち、住む場所も変わり、生活環境も変わった。そして私もだいぶ図太くなったんじゃないかな。
私もまさやんも歳取ったなあ。きっとどちらもいい歳の取り方をしているはずだよね。
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