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60回目の「ありがとう」

ぼくの初めての個展を開いた場所は仙台のマチナカの雑居ビル4階に入っていた貸しギャラリーでした。
今から四半世紀前、1997年のことです。

その個展への流れは、初めから「初個展をやるぞ!」という意気込んでの制作ではありませんでした。

フリーランス三年目、激務がたたって体調を崩し、そのリハビリを兼ね、英国のコーンウォール半島に旅したのがきっかけでした。

帰ってきた時に、手元には、数冊のスケッチブックがありました。そのギャラリー運営者が偶然見て、
「額に入れたら個展ができるんじゃない?ウチでやってごらんよ」

そんな流れでの開催でした。

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この絵は当時の案内状に使ったスケッチです。

ロンドンの安宿の窓辺風景からはじまって、最終目的地のコーンウォール半島最西端のランズエンド岬まで。
お客さんに、そんなぼくの旅を追体験してもらいたいな、と、一枚一枚の絵に、旅のキャプションを添えました。

勢いづいて、持っていった画材一式とザックや帽子、トレッキングブーツ、挙句の果てには旅で仕入れた旅資料まで会場の真ん中にザックリ置いちゃったり。

思いのほか、それがウケました。
「A地点からB地点まで」という、いうならばロードムービーの様な個展でもあったわけです。全然狙ってたわけではないけれど。

まあ、楽しんでもらえたしぼくも楽しんだのでよかったよかった、と、個展はそれで終わりの予定でした。
ところが最終日に来てくれた、あるお客さんが言いました。
「次の個展はどこへ行く旅ですか?」

考えてもいなかった「2回目の旅個展」への準備がその時始まりました。

以降、アイルランド・アラン島、地元の東北、フランスブルターニュにはじまりあっちこっち、そしてまた東北行脚…と、異国と東北を交互に旅し続けて25年が経ちました。

個展の売上が即、渡航費。家族には本当に迷惑をかけました。

当初は年一回開催がせいぜいだった個展も、今は複数回。

流されるように重ねてきた個展も気がつけば60回目です。
モチーフとしている、旅の「世界」も変わりました。

今年還暦迎える年に、60回を数えましたが、今回の個展は、これから先へ続く小径へ立てた小さな手作りの道標のような気がしています。あくまで小径。
こだわりたいのは、自分らしい表現と発表です。

静けさを大切に、ぼくが体験してきた過去の積み重ねから、世間様に必要とされる絵を描いていきたいと思います。

2022年3月12日から21日まで、個展「ランズエンドからの手紙#60 LettersXXX」が、仙台のアールフランセ主催で開催しています。60回目の感謝を込めて、ありがとうございます。

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