コロナ患者とその家族の現実⑧(8/19〜入院)
妻は無事に入院することができた。毎日東京は5000人近い感染者が続く中で、奇跡だった。
でも1つ、それに至るまでに伏線があったように思う。
前日の救急隊の方が引き揚げる直前、妻が「お腹が張っている」と言ったのだ。
そのときの隊員の人たちの心配と、声かけと、対応には本当に感謝してもしたりないくらいだ。
たくさんの病院に打診をして、受け入れ可能かどうかを確認してくれた。
結果そのときには病院は見つからなかったものの、ここに1人の妊婦が危機に陥っているという情報が色々なところに広がった。
結果的にその頑張りが報われた。
そう思っている。
あの時、妻の「お腹が張って痛い」という一言があと数分遅れていたら。隊員の人たちが帰ってしまっていたら。
恐ろしい気持ちになる。
妻は翌日の8月19日の朝、入院していった。
家に1人になって、布団や衣類、タオルなどの洗濯と部屋の中の消毒をした。かなりの時間がかかり、真夏の暑さもあいまって、終わったのは夕方。
どっと疲れが出て、その日の夜は布団に入ると同時に、眠った。
その夜、鮮明な夢を見た。
僕は1人で屋外プールのようなところにいた。
とても晴れていて清々しく、人々が大勢いて、ビーチボールで遊んだり、賑やかで笑顔の人が多い。
僕はそんな人たちを眺めていた。
すると場内アナウンスが聞こえてきた。
「このエリアはしゃべらない、話しかけない、応えないの3つをお守りいただきますようお願い致します」
え?こんなにたくさん遊んでいる人たちがいるのに?
しかし、反対方向を見てみると、遊んでいる大勢の人たちとは対照的に、人々が地べたに座って一方向を向いて、黙っている。
そしてその人々の中には、学童クラブで面倒を見た子もいた。(!)
「なんだここは。。」と思った瞬間、背後から声をかけられた。
「ここにいたの?」
振り返ると妻がいた。
その時すごく嬉しかった。
そして妻はその「無言ゾーン」へ入っていった。
あ、そっちはあんまりおれらがいても意味なさそうだよ!こっちに来なよ…!
と言って何度も手招きするが、気づかない。
そっちはだめだ。なんだか楽しくなさそうなところなんだ!こっちこっち!!
叫んでも叫んでも気づかない。
せっかく会えたのにどこへ行くんだよ!
そこで目が覚めた。
天気のいい朝だった。
夢の中では帰ってこなかった妻。
現実でも離れ離れになってしまったが、ちゃんと帰ってくるのだろうか。
そんな不安に駆られながら、残りの暑い夏を過ごすことになります。
今日はここまで。
次回で、「コロナ患者とその家族の現状」は最終回になります。
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