「あいさつができない子」。なぜなのか?
今の小学生に見られる「あいさつ」ができない傾向
小学校の中にある学童クラブで働き始めて15年以上が経ちます。どこの小学校でも、全校朝会で校長先生や学年主任の先生はこう言います。
「あいさつができていません」
「元気にあいさつをしましょう」
その後、廊下で学校の先生とすれ違う子どもたち。
「こんにちは」「さようなら」と先生の方から声をかけても、
無言で、その先生の顔を見ながらすれ違うだけ。
あいさつされても見向きすらしない子もいます。
この姿を見て、学校の先生たちは思うのです。
「あいさつができていない子たちだ」と。
この子たちはなぜ、「あいさつができない」のでしょうか?その背景について、僕なりの見解を述べていきたいと思います。
※もちろんあいさつが得意な子もいますし、何かを決定づける見解ではありません。これから書いていくことが全てのケースに当てはまるわけでもありませんので、1つの参考程度に捉えてください。
なぜ、その子はあいさつをしないのか
年を重ねて社会に出たら、あいさつができないと困りますよね。それを身に付けてもらうために、先生方はしきりにあいさつを奨励するのです。
しかし、僕が思うに、その子たちは「あいさつができない」ではなく、「あいさつというコミュニケーションに意義を感じていない」がために、行動に結びついていないのだと解釈しています。
あいさつとは、いわば言葉のキャッチボールの基礎です。
例えば「おはよう」と言われたら、「おはよう」と返す。その2人の間には言葉というボールが往復しています。
このやり取りは、2人の距離を縮め、関係性を良好にします。
なぜ、あいさつをするのかと聞かれたら、
「気持ちの良い関係作りのため」「お互いの存在を認め合う」
いわば人間関係の土台作りです。
「あいさつをしない子」が増えている理由としては、この土台をしっかりと作っていないまま小学生まで育ってしまっている家庭が増えているということが大きな要因です。
おじいちゃん、おばあちゃんと一緒に住んでいる家庭は今すごく数を減らし、1人親家庭も増えています。SNSの発展のおかげで、言葉を発さなくても意思を伝えられるようにもなりました。(小学生でも平気でスマホを持つ時代です)
そんな中、お父さん、お母さんは一生懸命働かなくてはなりません。
お父さん、お母さんが自身の子どもとあいさつをしたり、会話のキャッチボールをする機会が格段に減ってしまっているのです。
忙しく余裕のない保護者は子どもに発言をさせず、とにかく急がせます。
「早く朝ご飯食べて!」
「歯磨きしたの?」
「宿題終わってるの?」
「忘れ物はないんでしょうね?」
子どもは返答することに疲れて生返事をします。
そのような子どもたちは、親に話しかけるのをためらいます。
「今話しかけたら怒られるかもしれない」と。
そして、自分がほしい返事がある場合のみ、親とコミュニケーションを取ろうとします。「明日、友達と遊んでいい?」「今、ゲームしていい?」などがその例です。
その解答さえあれば、それでいいのです。
その子にとっては、「会話は自分にとってメリットになるかどうか」ということが、コミュニケーションの目的です。
彼らにとって、会話やあいさつは「聞きたいことだけわかればそれでいい」「メリットがなければやる必要がないもの」として捉えているのです。
そのような子に対してできる支援とは?
では、その子たちに対して大人はどのような目を向けてあげるのがよいでしょうか。
今まで見てきたように、大人が「あいさつができない」とみなしている子は、実は「気持ちの良いコミュニケーションの仕方を知らない子」だと言うことができます。
つまり、あいさつという面だけに着目するのではなく対人でのキャッチボールの機会を増やしていく必要があります。
そのために、できることは以下のようなことが挙げられます。
①一緒に笑う
家庭での状況に立ち入ることは難しいため、いかに学校や学童で「楽しい」経験ができるか。「笑うこと」は、そのための大事な機会です。
彼を笑わせるのではなく、大人も一緒に笑うこと。これが一番の心への栄養です。自己肯定感が高まり、子どもは閉じこもっていた殻を破る勇気を持つことができます。
②リアクションを大きくしてあげる
相手からの無神経な反応が怖くてコミュニケーションから遠ざかっていく子がいます。返事がなかったり、ぶっきらぼうであることを怖がり、「自分のせいで相手が不機嫌になったのかも」と自分を責めることすらしてしまいます。そんなときは、わかりやすいリアクションで、その子の心を動かしてあげてください。きっと、安心してくれます。
③好きなこと・得意なこと・やりたいことを見つける
一見関係ないと思われるかもしれませんが、コミュニケーション能力向上に大きな好影響があります。絵を描くでも、ドッジボールでも、マラソンでも、何でもいいです。すると、同じことが好きな子が学校の中には必ずいます。共通の話題を持つ人間との出会いは、必ずその子の人生に好影響を与えます。
どんな姿であってもあなたのことを認めているよ、というサインをどんどん送ってあげることが大事だという結論です。
大人の常識でがんじがらめにしないでほしい
子どもたちを苦しめているのは「あいさつできない子どもは不出来だ」と決めつける大人からの圧力です。
小学生というまだまだこれから成長していく年代の子たちが、今の時期にできないことがあっても当たり前です。
今はできなくても、将来きちんと職場であいさつができるようになればよいのです。そのために、どうして「あいさつをする必要があるのか」を、丁寧に言語化しなければいけません。
学校は説明をおろそかにしがち。
家庭は機会をおろそかにしがち。
このように感じます。
仲の良い友達ができて「また明日ね!ばいばい!」と楽しく帰っていく姿があれば、何も心配はいりません。
毎日、明日が楽しみになるような過ごし方をする。これさえできれば、「おはよう!」「ありがとう!」「またね!」など、子どもたちの元気な声が聞こえてくるでしょう。
最後に
子どもたちの支援に「決めつけ」はいりません。
大人だって完璧な人間がいないのですから、子どもなんてもっと不完全で当たり前です。子どもたちと一緒に成長していく大人でありたいと、僕は思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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