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もやもやの答えを求めて本を読む【#読書の秋2021】

恐ろしい本を読んだ。
この本の感想は、何を書いても、どう書いても己の底の浅さを露呈してしまう。
取り繕わず、素のままで書くしかない。

上野千鶴子 鈴木涼美 共著『往復書簡 限界から始まる』。


私は元々、朝日新聞に寄せられたいろんな方の人生相談に上野千鶴子さんが答えた『身の下相談にお答えします』が、大好きである。


例えば『成人した娘に、自立して結婚してほしい』と願う母からの相談には、
『あなたご自身のお悩みはなに?親に代わる経済的依存の相手を娘に探してほしい、という意味でしょうか。』
などと、バッサリ一刀両断していた。
親の過干渉が不服だったシングルの私は、その回答を読んで、大いに痛快な思いをしたものである。

で、今回の書籍は往復書簡。
多くの著作をもつ女ふたりの間で、書簡という形での切れ味鋭い応酬が繰り広げられる。

いろんな歴史、文献を振り返った上でのヒリヒリするような言葉の数々。

しかも新聞連載での人生相談なら、上野さんの言いっぱなしの回答で終わるのに、往復書簡では『○○について聞かせてもらいたかったんだけど、見事にスルーされましたね』、なんて蒸し返すしー。容赦ナシ。

『男に絶望』せずにはいられない鈴木さんに対して、『親戚のおばさん』口調になってしまうという上野さん。

身近に、こんなおばさんと姪の丁々発止のやりとりが行われていたら、このふたりの狭間世代の私は、会話に入っていけず怖くて逃げ出してしまうだろう。

でも


「反論したり文句を言ってもどうせ変わらない」という諦めがあるのかもしれません。

と綴る鈴木さんに対して、

人間の卑劣さや嗜虐性をなくすことは不可能でしょう。でも社会のタテマエは変わっているのです。

との上野さんの回答に、最近もやもやした思いを抱えていた私は、

どこか救われる思いをした。

ご自分の傷に向きあいなさい。痛いものは痛い、とおっしゃい。ひとの尊厳はそこから始まります。


私は、この本に付箋を貼りまくった。
女性読者ならどこかの章で、琴線に触れる言葉に出会えるだろう。何度でも読み返すだろう。

正解が本に書いてあるわけではないけれど、自分なりの答えを求めて、本を読む。


ちなみに失礼ながら私は、今回の書簡のお相手、鈴木涼美さんという方を存じ上げなかった。

自らを深く内観し、冷徹過ぎるほど分析しておられる硬質な文章、手強い女性だという印象をもった。

どんな方かしら?とYouTubeで検索してみると…。

古舘伊知郎氏との対談映像がヒットした。

動画を拝見してぶっ飛んだ。
ちょっと舌足らずな喋り方、思わず胸元に目線がいっちゃうような色気のある服装。
めっちゃ女子のヒトだった。

往復書簡の文体で得られるイメージと全然違う。同姓同名の人じゃないよね?と、思わず疑ってしまうほど。
いやいや。もちろん書籍の中で鈴木さんの経歴については、散々書いてあるんだけどさ。
「人には、いろんな顔があるでしょ」
って、ご本人も動画の中でもおっしゃっていたっけ。うーん。恐るべし。

「男とは何か?」を論じてきたこの1冊。
でも、女だってけっこう謎が多いよなーという読後感になった。







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