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「図書新聞」現代美術回顧

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2023年3月の記事一覧

撃たれる覚悟を!──2022年現代美術回顧[部分]

撃たれる覚悟を!──2022年現代美術回顧[部分]

コンセプチュアル・アートの政治利用──。「国際芸術祭あいち2022」でもっとも印象深かったのは、会場のひとつ、愛知県美術館の展示が河原温からはじめられていたことだった。言わずと知れた世界的なコンセプチュアル・アーティストである。同芸術祭の芸術監督・片岡真実は、おそらく河原温から展示をはじめることにかなり自覚的だったように思う。いや、戦略的だったといってもいい。同芸術祭のテーマ「STILL ALIV

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加速するアナクロニズム──2021年日本現代美術回顧

加速するアナクロニズム──2021年日本現代美術回顧

「警察じゃけぇ、なにをしてもええんじゃ」。映画「孤狼の血」(白石和彌監督、2018年)で役所広司が演じた大上の名台詞である。その続編「孤狼の血level.2」(同監督、2021年)で大上の跡を継いだ、松坂桃李による日岡も「全員ブタ箱叩き込んじゃる!」と啖呵を切るが、大上の恐るべき脅し文句に比べると、いかにも弱い。この迫力の差は、役者の演技や体格というより、物語の時代設定に由来していたように思われる

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