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038:友人達の支え

出資してくれた人達全員への電話が終わり、次は直接会ってお詫びをすることになりました。順に会って話をすると、バリでのことを心配して優しい言葉を掛けてくれる人もいれば、とても厳しい態度で接する人もいました。それはもちろん当然です。彼らは私を信じて出資してくれたのであり、バリのパートナーを選んだのは私です。信じた人間に裏切られたのですから怒って当たり前。すべては私の責任です。

一人、また一人と会って説明をしているうちに、「本当にとんでもない失敗を犯してたくさんの人達に迷惑をかけてしまった」という気持ちが次第に大きくなっていきました。

すべては自分が未熟だったせいです。こんなに大勢の人達が応援してくれていたのに、どうして大事になる前に未然に防ぐことができなかったのか。自分を信じてくれた人達だからこそ、本当に申し訳ない気持ちになり、その気持ちで心が押しつぶされそうになりました。

過去を変えることはできません。既に起こってしまったことを後悔してもどうにもなりません。それはわかっていても、「もしもこうなっていなかったら」と考えずにはいられませんでした。

想像以上に辛い毎日

電話をはじめて数日のうちに、出資者全員にアポイントを取ることができました。一番最初に会ったのは、最も古くから付き合いがあり、かつ、出資額も大きい友人達でした。

どんなことを言われても全てを受け入れ、心からお詫びをして、これからのことを相談しようと決心していたのですが、彼らからの言葉は予想以上に厳しく私の心に重くのしかかってきました。それはバリの警察に捕まって「このまま死んでしまった方が楽ではないか」と思ったあの時よりも辛い経験でした。

全て自分の責任なので、何を言われても仕方がないと頭では分かっていたのですが、心は何度も折れそうになりました。今からこんなで、本当に一億円もの大金を返済することができるのだろうか?と、その度に自問自答を繰り返しました。

応援してくれる人達のありがたさ

警察にいる時よりも、刑務所にいる時よりも辛い日々。そんな時に心の支えになったのが、迷惑をかけたにもかかわらず私のことを応援してくれた出資者の存在でした。大切なお金を失ってしまったのに、「無事に帰ってこれて良かったね」とか、「大丈夫、絶対になんとかなるから」と声をかけてくれ、時には「自分も昔、こんな辛いことがあったけど乗り越えられたよ」と、自分の体験を語りながら力づけてくれたりする人もいました。

中でも一番衝撃的だったのは、いつも明るくて優しいある友人が語ってくれた、若い頃に「死んでしまおうと思った」というほどの辛い経験についてでした。その友人はいつも笑顔を絶やさない人なのですが、そんな普段の姿からは想像もできないような経験をしていたのです。

何人もの人達がシェアしてくれた、それぞれの人生にでの辛い体験を聞くうちに、「みんな口には出さないけれど、みんなそれぞれの人生でいろいろな経験をしているんだ」と感じ、それと同時に「こんなに優しいのは、彼ら自身が辛い思いをしているからなんだ」とも思いました。

バリにいる時よりも心が落ち込み、どん底の状態にいた私にとって、応援してくれる人達の存在はとても大きな心の支えになりました。そして、私も必ず今回の経験を乗り越え成長して、思いやりのある優しい人になろうと心に誓ったのです。

自分の失敗は、すべて自分で責任を取らなければなりません。何度もそう言い聞かせましたが、頭でどれだけ理解していても、「一億円」という金額は途方もなく大きく、心に重くのしかかってきました。正直なところ、もしもできることなら逃げ出してしまいたいと思いましたが、優しい気持ちで心から応援してくれた友人達の存在が私に乗り越える力を与えてくれたのです。

今でも辛いことはたくさんあります。しかし、どんなに辛くても、「自分を支えてくれている人がいる」ことを思い出すと乗り越えることができます。これから先の人生でも辛い経験はたくさんあると思いますが、そんな時もきっと彼らの存在が大きなパワーを与え続けてくれることでしょう。

読んでいただいてありがとうございます。何かを感じてもらえたら嬉しいです。これまでの経験について本にしようと考えています。よろしければポチッと・・・。