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033:いよいよ裁判が始まった

ブノアの警察にいるときも、刑務所に移動してきてからも、定期的に弁護士と会って打ち合わせを行っていました。ひとつはヴィラの権利回復について、もうひとつは一日も早くここから出て帰国することで、特に重要だと言われたのは後者。「一刻も早く日本に帰ること」でした。

バリにいる限り、私はあくまでも外国人という立場です。相手のホームグラウンドで勝負するのは不利でリスクもあるので、まずはとにかく少しでも早く安全な日本に帰ることが最大優先なのです。特に、相手は何年も前から周到に準備をしていたでしょうから、この先どんな手を打ってくるかもわかりません。

日本に帰るためには、とにかく早く裁判を終わらることですが、その裁判すら一向に始まらない。そして警察に捕まってから1ヶ月以上経過したある日、ようやく裁判の日程が決まりました。

弁護士からは事前の情報として、全てが順調に行った場合にいつまでに裁判が終了するかを教えてくれました。なぜ裁判をする前からそんな具体的な日程まで分かるのかというと、裁判官・検察官・弁護士の間で全てシナリオができているからです。つまり、裁判官と検察官は賄賂を受け取る代わりに、弁護士が書いたストーリー通りに裁判を進めることを約束しているのです。

最終的にはいくつかの予期せぬトラブルもあり、予定通りには行かなかったのですが、ほぼその予定通りに終了しました。

裁判初日の信じられないトラブル

そして迎えた裁判の初日。裁判所にはその日に裁判を受ける他の人達と一緒に車で移動します。朝の9時にロビーに集合し、手続きをしてから10時に出発。どこを走っているか分かりませんでしたが、20分ほどで目的地に到着しました。

全員が車から降りると一旦牢屋に移され、それぞれの裁判までそこで待機させられます。私はしばらくして弁護士が到着したため、部屋から出て彼と合流し、一緒にランチを食べたのですが、初めて裁判所に来た緊張から、何を食べたのかも全く覚えていませんでした。

午後2時になり、ようやく裁判が開始されたのですが、ここで信じられない問題が発生しました。

なんと、証人として裁判に出廷するはずの警察官が来ていなかったのです。そのため、この日は何も行われずにわずか数分で終了となり、翌日に延期になりました。最初からまさかの出来事が起こり、「本当に弁護士のシナリオ通り進むのだろうか?」と不安になりました。

仕切り直し裁判は全てシナリオ通りに

そして翌日。昨日と同じ流れで朝から移動し、ランチを挟んで午後から法廷へ。今回は警察もいて順調に進みましたが、内容はといえば事前に弁護士から聴いていた筋書き通り。つまり、全てはシナリオがあって各者がそれを演じているだけ。検察側の質問も、それに対する弁護士の回答も、全部あらかじめ聞いていた内容通り。茶番とはまさにこのことです。

順調なのは良いことなのですが、そのことを考えるとバカらしくなってきました。そして、「こんなことのために1,000万円以上のお金を払っているのか」と思うと、悔しくて、悲しくて、涙が出そうになりました。

その次の日。裁判のことを地元の新聞で読んだホテルのスタッフが心配して、マネージャーに内緒で会いに来てくれました。なぜ突然来てくれたのか尋ねると、新聞に「日本人がドラッグ所持で逮捕。懲役15年か」と書かれていたと言うのです。

正直、それを聞いた瞬間は何が何だかわからず、「信じられない」という気持ちでした。本当に1ヶ月で裁判が終わるのだろうか。本当に無事に日本に帰れるのだろうか・・・。信じるしかないと分かっていても、どうしても心は揺れてしまうものです。

その場は会いに来てくれた彼らに感謝の気持ちを伝えて別れ、部屋に戻ってからもう一度このことを考えてみました。「どっちが本当なんだろう?」しばらく考えましたが、実際のところ、どうなるのかは誰にもわかりません。

起きて欲しいことを選択することの大切さ

最終的に私が出した結論は、「どうなるのかわからないのであれば、自分が望む結果を意図し続けよう」というものでした。

もしも弁護士の話通りに裁判が終了して帰国できたら、それはとても嬉しいことです。でも、仮に新聞の報道の通りに長期の懲役刑になったら、非常に辛く、悲しいこと。どちらも起こり得る可能性があるかもしれませんが、でも、その時点では何ひとつ決まってはいません。

もしも有罪になって長期刑になったら、その時はそれを受け入れて、それからどうするか考えよう。でも、自分は一日も早く日本に帰りたいんだから、それを信じて、そうなることを意図しよう

と思ったのです。

起こるかどうか分からないことを気にしてネガティブになっていても意味がないからです。それどころか、毎日落ち込んで過ごしていても何ひとつメリットはありません。あの時に心の底からそう思い、「自分が望む結果を選択する」という行動を取ったことで、それ以来はネガティブな出来事に出会っても感情が揺さぶられることが少なくなり、いつもポジティブな状態を保てるようになりました

そういう意味で、今では、あの時にあのような経験して良かったと思っています。

読んでいただいてありがとうございます。何かを感じてもらえたら嬉しいです。これまでの経験について本にしようと考えています。よろしければポチッと・・・。