004：きっかけはハワイのベトナム料理

バリ島でホテルをオープンしたいと思ったのはなぜか。そのきっかけは、それより約10年前に遡ります。

私は学生の頃から「自由な人生を手に入れる」という目標を持っていて、それを達成することが人生における成功で、その結果幸せで楽しい人生を送ることができると信じていました。そして、そのためにたくさんの成功者に会い、どうするべきかを教わり、セミナーにも出ていろいろな事を学び、常に目標の達成を意識しながら行動していました。

その結果、30代半ばである程度の結果を達成し、自分で満足できるだけの自由を手にしました。それは「大成功」と言うにレベルではありませんでしたが、私にとっては十分なものでした。ずっと求めていたライフスタイルを手にし、毎日を本当に楽しく過ごしていました。

私はそんな楽しい日々がずっと続くと思っていたのですが、実際には違いました。確かに最初は毎日が楽しかったのですが、時が経つにつれて何か違和感を感じる。確かに楽しいのですが、ワクワクすることはどんどん少なくなっていきました。

「なぜだろう？」

最初は理由が分かりませんでいしが、ある時「ピピッ！」とひらめき、しばらくしてからわかりました。

「自分に足りなかったものはビジョンだ」

私が長い間目標にしていたのは「自由な人生を手に入れる」ことで、それは明確でしたが、「何のために？」ということが明確ではなかったのです。つまり、目標（どうなりたいのか）はハッキリしていたものの、目的（なんのためにそうなりたいのか）が不明確だったことに気付いたのです。

ビジョンというのは、人生における「目的」のことです。幸せな人生を送るために必要だったのは、「何を手に入れたいのか」ではなく「何のために手に入れたいのか」だったのです。

「よし。明確なビジョンを決めよう！」

違和感の理由が分かった私は、すぐにそう思いました。

ところが、それはそう簡単には見つかりませんでした。いろいろ考えてもなかなか思い浮かばないのです。そして「これだ！」というものに出会えずに時間だけが過ぎていきました。そうこうするうちに普段の生活に流されてビジョンについて考える時間が次第に少なくなり、なんとなく以前の状態に戻っていってしまったのです。

ハワイで最高のベトナム料理に出会う

そんな私に変化が訪れるきっかけになったのは、それから数年後に訪れたハワイでの出来事でした。

そのころの私はビジョンについて考えることがほとんどなく、時々ふっと思い浮かんできても、すぐに消えてしまうという感じになっていました。

私はもともと旅好きなので、毎年必ず何度か海外旅行に行っていました。行き先はほとんど、学生時代に訪れてから大好きだったアメリカでしたが、いつも西海岸が中心だったため、ある時「たまには違うところに行ってみよう」と思い、初めてハワイへの旅を計画したのです。

そしてその旅も終わりに近づき、日本への帰国前日のこと。当時とても興味があったベトナム料理店に行きました。今では日本でもベトナム料理はとてもポピュラーになって、フォーや生春巻きを知らない人の方が少ないほどだと思いますが、当時はベトナムレストランも非常に少なく、日本ではなかなか食べる機会がなかったのです。

出発前に読んでいたガイドブックで見つけたアラモアナ・センター近くのローカルなベトナム料理店に、さほど期待もせずにお店に行きました。メニューの中で知っているのは生春巻きくらい。他の料理はなにがなんだか全く分からず、お店の人におすすめを選んでもらいました。

しばらくしてテーブルに運ばれて来たのは見たこともない料理ばかり。正直なところ、期待よりも不安の方が大きかったのですが、初めて食べたベトナム料理はまさに絶品！それまでのハワイでの楽しかった出来事が全て飛んでしまうくらい、あまりにも美味しくて感動でした。そして感動して食べながらある決断をしました。

「これは絶対にベトナムに行って本場で食べる！」

次の旅行の目的地の決定です。そんな理由で決めたベトナム旅行でしたが、そこでの出逢いが、私の人生を大きく変える事になるのです。