福吉潤 | キャンサースキャン代表取締役社長

社会貢献と利益創出の両立(Social and Profit)を目指した会社を経営して…

福吉潤 | キャンサースキャン代表取締役社長

社会貢献と利益創出の両立(Social and Profit)を目指した会社を経営しています。P&Gブランドマネージャー → ハーバードMBA →予防医療分野で起業。起業・マーケティング・医療・リーダーシップやマネジメントなどに関してツイートします。趣味はベース。

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なぜ私はP&Gを辞めて、「がん検診のマーケティング会社」をつくったのか?

「この仕事って、意味があるんだろうか?」 「もっと世の中に貢献できる仕事があるんじゃないか?」 そう思ったことはないでしょうか? 私にはあります。 それはちょうど、P&Gに入社して3年目。どんどん仕事を任せてもらえるようになったころでした。 私は毎日、徹夜も厭わず、がむしゃらに働いていました。「どうすれば競合他社に勝てるのか?」「どうすればこの洗剤がより売れるのか?」……そればかり考えていました。 ところがある日「待てよ、これって世の中にどれだけ貢献しているのだろ

    • なぜ「1万円割引クーポン」で、乳がん検診の受診率がアップしたのか?

      人は、つねに合理的に動いているわけではありません。 健康に気をつかっているのに、目の前のケーキをつい食べてしまう。「今だけ半額!」と言われたら、つい買ってしまう。 そんな経験が、誰しもあるのではないでしょうか。 このような「人間の非合理性」を体系化した学問があります。「ナッジ理論」というものです。 今回はこの「ナッジ理論」を使って、社会をよりよく変えるにはどうすればいいか? というお話をしたいと思います。 * 私は、予防医療を広める会社を経営しています。主にやって

      • 「バンドくらいの会社がいいな」と思っていた私が、それでも規模拡大を選んだ理由

        バンドの生き方に憧れていた小学5年生のときバンドを組んで以来、私はずっと「音楽で生きていきたいな」と思っていました。大学も日大の芸術学部を目指していて、浪人までしたくらいです。 いま思うと「音楽が好きだった」ということもあるんですが「バンドとして生きていく」ことに憧れがあったんでしょう。気の合う4、5人と寝食を共にして、みたいな生き方がしたかったんですよね。 中学とか高校も、ずーっと音楽しかやっていませんでした。 オリジナルを作ったりもしましたが、いわゆる「コピーバンド

        • P&Gで学んだ「提案がスラスラ通る」社内コミュニケーション術

          「社内の人すら説得できないマーケターが、社外のお客さまを説得できるわけないじゃん」。 私がP&Gにいたころ、上司から言われた言葉です。 新卒1年目だった私は、いろんな先輩とケンカしていました。だけどその言葉を言われたとき「たしかにそうだな」と思って。 それ以来「自分の言いたいことが、どうすれば相手に伝わるか」の工夫を重ねました。その結果、4年目にはブランドマネージャーとして、ひとつのブランドの管理を、まるまる任せてもらえるようにまでなったのです。 今回は、私がP&Gで

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        なぜ私はP&Gを辞めて、「がん検診のマーケティング会社」をつくったのか?

          ハーバードでリーダーシップの授業を受けたら、起業の原点を思い出した

          15年ぶりに受けたハーバードの授業先日、ハーバードで「リーダーシップの授業」を受けてきました。 私は2008年にハーバードビジネススクールを卒業しているのですが、卒業後15年くらいすると「リーダーシップに関するプログラムをやるので来ませんか?」という案内が届くんです。 ちょうどリーダーシップについて悩んでいたところだったので、行ってみることにしました。 ボストンは完全に晩秋でした。 世界各地から集まったのは40代から50代の卒業生80人くらい。日本人は私を含めて2人で

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          自治体の予算不足を解決する「ソーシャルインパクトボンド」という新しいしくみ

          ビジネスにおいて、かならずと言っていいほどぶつかるのがお客さんの「予算」の問題です。 私は全国の自治体と一緒に、マーケティングの力で予防医療を広める会社をやっています。会社を立ち上げて約15年。私自身、何度もこの問題に直面してきました。 世の中の役に立つことをやろうと提案しても、お客さんの予算と合わずできない……。 長年もどかしさを感じていたこの問題を解決できるかもしれない「新しい自治体ビジネスの仕組み」が、いまじわじわと広がってきています。 「ソーシャルインパクトボ

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          なぜ上司が「任せた」仕事を、部下は「押しつけられた」と思うのか?

          私は、部下に仕事を「任せること」がヘタクソでした。 「これはさすがに自分しかできないな」という仕事をたくさん抱えて、上司の自分だけが忙しくなっている。 気がつけば、部下はまったく育っていませんでした。 「このままじゃダメだ」と思いきって任せてみたら、部下は「押しつけられた」と不満をもつ。そのためモチベーションはぜんぜん上がらず、求めているクオリティまで達しません。 仕方がないから期日のギリギリで巻きとって、また上司の自分だけが忙しくなっている……。 そんな悪循環でし

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          営業は「売ろう」としてはいけない

          私が営業に行くとき、いつも考えていることがあります。 それは「目の前の人の困りごとを解決しよう」ということです。 「この人は、こういうことに困ってるんだな。じゃあ、うちがこんなことをしてあげれば、きっと『渡りに船』だと思ってもらえるな……」 そんなことを考えながら、いつも営業をしています。 「担当者が」困っていることかどうかポイントは「目の前にいる一個人の困りごと」であるかどうかです。 ありがちなのが「会社として」困っていることを解決しようとすること。もちろん、最終

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          本気でビジョンを実現しようとしたら、売上の8割が吹き飛んだ話

          「すみません、この事業はできなくなりました」 私は各所に頭を下げてまわっていました。 これは、2016年のこと。 これまでやっていたメインの「研究事業」をやめたことで、2億円あった売上の8割が吹き飛びました。 メインの研究事業に携わり、研究をやりがいにしていた社員たちは辞めていきました。将来性を疑問視したいくつかの銀行からも「もうお金を貸せません」と言われてしまいました。 創業9年目にして、初めての赤字ーー。 当時の副社長は「もうつぶれたな」とまで思ったそうです。

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          起業しようかどうか迷っている人に伝えたいこと

          私はこれまで、人生を変えるような大きな決断をしてきました。 ひとつめは会社を辞めて留学を選んだことです。 マーケターという仕事はとても楽しいものだったのですが「もっと社会に貢献したい」という気持ちが強くなり、キャリアを白紙から考えようと思いました。 会社を辞め、ハーバードビジネススクールに留学したのが30歳のとき。 先輩たちからは反対されました。「ビジネススクールで学ぶよりも会社にいたほうが学べるよ」と。「それも一理あるな」と思いつつも、自らの直感を信じて留学を選びま

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          マーケティングに行動科学を取り入れたら、がん検診に行く人が3倍増えた話

          チラシを変えただけで受診者が1人から130人に14年前、私は「予防医療のマーケティング会社」を創業しました。 前回のnoteでもお伝えしましたが、まず取り組んだのが「乳がん検診の受診率を上げるプロジェクト」でした。 私たちは自治体が作成しているチラシを見直すことから始めました。 杉並区の乳がん検診のチラシは、もともとこんなデザインでした。 失礼ながら、情報が多すぎて何が言いたいのかわかりづらいものでした。 このチラシのコピーとデザインを、このように変えたのです。

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