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【ワークショップ開催レポート】FUKUYAMA ParkLife LAB in春日池公園 ❺

福山市の新しい公園のあり方を考えるFUKUYAMA ParkLife LAB。春日池公園は本プロジェクトのモデルとして取り組む公園です。
今回は、2024年2月18日(日)に開催した第5回ワークショップの様子をご紹介します。


FUKUYAMA ParkLife LAB in春日池公園のプログラム

春日池公園を対象とした2023年度のプログラムは、現地開催となる「野外編」3回と、そこで得られた発見・アイデアを整理しビジョンにまとめていく「屋内編」3回の計6回の構成になっています。
第5回となる今回は、これまで考えてきたことを「方針・コンセプト案」として、ビジョンに取りまとめていきます。

◆コーディネーターのご紹介

佐藤 留美さん(NPO法人 NPO birth 事務局長)
東京農工大学農学部森林利用システム学科卒業。
都市の“みどり”(グリーンインフラ)の力を引き出し、まちづくりに生かす様々なプロジェクトを生み出している。著書に「パークマネジメントがひらくまちづくりの未来」(共著、マルモ出版、2020)ほか

根本 修平さん(福山市立大学 都市経営学部 都市経営学科 准教授)
九州芸術工科大学大学院芸術工学研究科生活環境専攻博士課程単位取得満期退学。
OPEN STREET FUKUYAMA(福山駅前等歩道空間活用社会実験)をはじめとして、まちの活性化プロジェクトに多数参画。家廻公園では、ベンチ制作やトイレ装飾の設計と制作ワークショップを大学の研究室で運営する。

◆コメンテーターのご紹介

岡田 臣司さん(インクロッチェ(株)取締役)
広島県福山市出身。
アメリカのイエローストーン国立公園にてパークレンジャー助手を約3年経過した後、帰国。
現在は福山市熊野町にて民泊施設せとうち母家を運営する。また、周辺の豊かな里山里地資源の有効利活用を目的とし、地元教育機関及び行政と連携した自然教育活動も同時に実施している。

これまでのワークショップの詳しい内容は、こちらのレポートをご覧ください!

ビジョンづくりについて

このプログラムではこれからの春日池公園のあり方や使い方について、みんなで考え、仮説を立て、実践する中で、公園づくりの道しるべとなるビジョンを少しずつ作りあげていくこととしています。
ここで大切となるのは、第1回のワークショップで佐藤さんに教えていただいた『公園が良くなれば、まちが良くなる』という視点です。身近に”良い公園”がある豊かな暮らしをイメージしながらビジョンをつくっていきましょう。

【ビジョンづくりの考え方】

  • 公園の活用を通じて豊かな暮らしを実現していく「まちづくりの視点」が重要です。

  • 自身の興味や関心、得意分野を生かして一人ひとりが主体的に取り組めるものとします。

  • 今後、試行錯誤を繰り返す中で適宜ブラッシュアップしていきます。

今回のワークショップでは、これまで皆さんと一緒に考えてきた春日池公園の将来のありたい姿を取りまとめた『春日池公園 Park Life ビジョン』の素案を確認しました。

春日池公園 Park Life ビジョン(案)について

春日池公園 Park Life ビジョンは、プロジェクトに参加する皆さんと一緒に深堀してきた「こんな公園にしたい」という1人1人の想いを実現するための方針やコンセプト、活動アイデアを取りまとめたものになります。

これまでのワークショップ(第1回~第4回)で、春日池公園や周辺地域の現在地を確認し、春日池公園に対する想いを深めてきました。
その想いを整理し、5つの「公園の方針」として取りまとめました。

方針① 五感で自然を感じられる公園にしよう!
春日池公園には、様々な生き物たちが暮らす豊かな自然環境が形成されています。この特徴を活かして、自然を見て、聴き、匂い、触り、そして味わうことで、この環境を体感できる公園を目指します。

方針② みんなで育てる公園にしよう!
様々な植物が植えられている春日池公園ですが、十分に手入れが行き届いていない場所もあります。誰もが気持ちよく利用できる公園にするため、できるところから、みんなの手で公園を育てていきます。

方針③ 心と体が癒される公園にしよう!
春日池公園には、豊かな自然と美しい風景の中で、元気をもらえる場所がたくさんあります。座ってゆっくりする、軽く体を動かす・・・思い思いの過ごし方ができる場所で、心身ともに癒される公園としていきます。

方針④ 遊びを通じて成長できる公園にしよう!
子どもたちの遊びの場所として、障がいの有無に関わらずみんなが一緒に遊ぶことができ、豊かな自然の中で創造力が育まれ、子どもたちの成長が促される公園を目指します。

方針⑤ 誰でもチャレンジできる公園にしよう!
春日池公園には、多様な活動を行うことができる空間やスペースがあり、その場所での活動により、交流を生み出すことが期待されています。
誰でもチャレンジできる場所があり、チャレンジがみんなに受け入れられる公園を目指します。

この5つの方針を実現した春日池公園の姿を現すコンセプト(キャッチフレーズ)として、『みんなで育てる、元気の源。ネィチャーポジティブな水辺公園』を現時点案として設定しました。
このフレーズは、活動を続けていく中で、誰もが親しみ、共感の得られるものに今後も検討していきます。一緒に考えていきましょう!

(佐藤さんからコメント)

皆さんと一緒にワークショップを積み重ねていく中で、「春日池公園をこんな公園にしたい」という方向性やイメージが浮かんできたと思います。
コンセプトとして、このワークショップに参加している方々、そしてこれから関わっていく方々にも共有し、共通の目標を持てるようなフレーズを事務局と考えました。まだまだ仮案なので、皆さんと話し合ってブラッシュアップしてきたいと思います。

このコンセプト案の中にある、「ネィチャーポジティブ」とは、自然環境の悪化を止めて反転(ネガティブ⇒ポジティブ)させ、より良い生態系を回復させていくという意味の言葉です。2021年の先進国首脳会議(G7)や2022年の国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)という国際会議で、世界的な目標として認知されました。まだ一般には広く浸透していない言葉だと思いますが、これからどんどん耳にする機会が増えてくると思います。
世界目標というと何か大きなことをしないといけないように感じられるかもしれませんが、この「ネイチャーポジティブ」は、市民一人ひとりの力があってこそ、実現するものです。春日池公園の自然をみんなで育むことで、人もまちも元気になっていく、そんなポジティブな意味があるという想いを込めてこの言葉が選ばれました。

各方針の活動アイデアを考える!

今回のワークショップでは、5つの方針ごとにこれまでのワークショップで出てきた活動アイデアを整理し、これから実践していく活動にまとめていきました。
グループディスカッションは、
①これまで出てきた活動アイデアを整理
②整理した活動アイデアについて取り組みたい活動の優先度を決める

の2点について、方針ごとにグループに分かれて行いました。

なお、次回(第6回)のワークショップでは、春日池公園にて実際に出された活動アイデアについてトライアルとして取り組んでいきます。ディスカッションの中では、次回のワークショップでトライアルする活動についても考えていきました。

①活動アイデアの整理にあたっては、次の視点で整理しています。
時間軸(横軸)として、「短期(第6回ワークショップできそうなこと)」「中期(来年度にできそうなこと)」「長期(1年以上かかりそうなこと)」の3つの区分
プレイヤー軸(横軸)としてPark Life LABに参加しているメンバーでできそうか、他の方の協力が必要となるかの2つの区分

これまでの活動アイデアを方針ごとに一覧としたものは以下のとおりです。

[グループ①]
五感で自然を感じられる公園にしよう!

  • 植物やそこに関わる生き物を知ることで、暮らしとつながり、生き物たちとの付き合い方や距離の取り方が分かるようになると思います。そうすると、これまで以上に春日池公園の特徴を活かせると思います。

  • 全体のスケジュール感としては、来年度まで公園にどんな生物や植物がいるのか調べる活動をしてみたいです。その調査結果をもとに、来年度以降、実際にガイドの形にしていくことを想定しています。

  • 『公園のガイドツアー』を分類すると、①専門家等のガイド、②セルフガイド、③パンフレットなどの配布物を使うガイドの3種類があると考えました。
    実際にガイドをするには、どんな植物や生き物がいるかを調べた上で、マニュアルを作成し、ガイドをやりたいという人や自然環境に詳しい方を募って養成していくやり方が良いと思います。
    セルフガイドは、春日池自体が実際に暮らしと密接に関わる公園でもあるので、木や植物の名前を書くだけでなく、実際の暮らしの中で「この植物なら食べられる」「この植物はこの生物と共生している」など、暮らしに繋がるような自然が身近に感じられるガイドができると良い。

  • 『樹木の見本園』は樹名だけ表示しておき、QRコードなどで詳しい生態系や植物の生活の中での使われ方などが調べられるようにしてみたいです。

  • 次回のワークショップでは公園のガイドツアーを実践してみたいです。岡田さんと一緒に公園を回って、春日池公園にはどんな植物がいて、どんな生態系ができているのかを見ながら歩いてみたいです。
    また、ばら園(花の広場)にかまどベンチがあるので、そこでコーヒーを楽しむことができるのではないかと思います。

  • その他、公園を訪れている人の中にも、毎日歩いているから花の咲く時期が分かる方や季節による生物の違いなどに詳しい方がたくさんいると思うので、そういう方々に話を聞くというのも良いかもしれないです。

(佐藤さんのコメント)
春日池公園の自然環境が非常に豊かであることは皆さん認識していますが、実際にどんな自然があるのかは、きちんと調べてみないと分からないことが多いです。季節ごとの公園の姿をみんなで調査することで、市民の学びにもなり、そこからどんな活用ができるか、どのように五感で楽しめるかがイメージできると思います。
今回のグループディスカッションの中で、人も楽しむ、生き物も楽しむという両方の視点を大切にして、公園のガイドの取り組みについて考えているところがとても印象的で、まさにネイチャーポジティブだなと感じました。
また春日池公園の樹木には番号表示があり、既に市のHPで木の紹介ページがありますが、あまり知られてなさそうです。QRコードをつけたり、内容を更新するなど、既存の取組みの活用も考えていけると良いですね。

[グループ②]
みんなで育てる公園にしよう!

  • 次回のワークショップでは、公園を歩きながら落ち葉を拾う案内板の位置や掲示の内容の調査を皆さんと一緒に取り組んでみたいです。

  • 中期的な活動としては、花壇に植物を植えてみるという意見が出ました。現在は、中央広場に植物が少なく寂しい状態なので、ここにも花を植えてみてはどうかと思います。季節に合った、手入れに手間のかかりにくい品種や食べられる実や草(金柑など)を植えることで、持続的な活動になるのではないかと思います。
    また、人手が足りない場合は、ボランティアを地域で募集できると良いかと思います。その他、ばらの剪定も体験としてできそうなので、みんなが楽しみながら継続していけるのではないでしょうか。

  • 一方で、ゴミの処分は行政などの手助けが必要かもしれないです。

  • 長期的な活動として、樹木の剪定など斜面にあったり、大きい木だと傾いていたり、素人では難しい作業になるかもしれないので、時間が少しかかるかなと思いました。

(根本さんのコメント)
みんなで育てる公園にする=植物を育てると考えていましたが、ゴミを拾うことはモノを育てるのではなくて、心を育てることにつながるのだと気づかされ感動しました。公園を良くしようという気持ちと、具体的に植物などを育てるというような二方向あるのだなと改めて思いました。
中期的な活動について、植物を植えるとか剪定することをまずやってみようというのはすごくいいと思っていて、それがサークル活動的に育っていくのだろうなと思います。第3回ワークショップにて紹介いただいた家廻公園も、活動したい人が集まり活き活きと作業していて、それを見て楽しそうと思った人が次々に参加するようになったという流れがありますので、まずは気軽に自分たちが楽しむことが大切だと考えます。
また、活動を続けていくと、やっていて気づくことが多く、課題は勝手に出てくるはずなので、都度、行政などに相談しつつ、あまり難しく考えすぎないようにしていきましょう。

[グループ③]
心と体が癒される公園にしよう!

  • 次回のワークショップでできそうなことは「カフェを作る」「火を使う」「公園で本を楽しむ」「カレーをつくる」という案が出ました。

  • 「公園で本を楽しむ」は、芝生広場で本の交換会や、本を持ち寄って読書会ができると良いかと思います。ゆっくり過ごせるスペース作りとして、本を楽しむためのスペースを作ったほうがいいかなと思います。中期的には、自分たちの想いがある本を持ち寄って、シェアしていく取り組みや、移動図書館の寄り場の一つとしてもらえると良いと思います。

  • 「カフェをつくる」は、私がお店をしているので、電源があればコーヒーメーカーをきてコーヒーを淹れることもできます。また、焚き火をやるのであれば、お湯が沸かせるので色んなメニューにも対応できそうです。

  • 中長期的な目標としては、火が使える公園になれば、落ち葉を拾って、焼き芋をするなど、四季を通じて楽しめる公園になると思います。そのためには、火を使ってよい場所を決めて試してみるなどが必要と考えます。そして、最終的にはキャンプ場をつくるという意見もありました。

  • かまどベンチでの炊き出し体験や防災体験も定期的に行えるようになったら良いと思います。

  • 休憩スペースに屋根を作ることなどは、なぜ公園の中に屋根がある場所が少ないのかという理由も踏まえて、長期的に取り組んでいく必要があると思います。

(根本さんのコメント)
実践していく上で、どういった課題を解決する必要があるのかを整理していくことも大切かもしれません。
他の人にも楽しんでもらうということを考えると、その先をイメージしないといけなくなるので、次回のワークショップでは、公園で楽しむことができるのかを、試してみるというのは可能性としてありそうですね。
公園で本を読んで過ごすという使い方も可能性として、とても良いと思います。ただ、誰が本を用意するのか、本棚をどうするかなど、深堀してみると少し具体が見えてくるかもしれません。そのように、できること・できないことを整理していくと、活動も少し絞れていくと思います。

[グループ④]
遊びを通じて成長できる公園にしよう!

  • 車いすの方でも、誰でも使いやすい公園となることが一番大切だと思います。そのため、車いす体験会を次回ワークショップで実施したいと考えています。

  • 車いすで自走する視点と、介助する視点は違うので、実際に車いすを自分たちで乗ってみて、こういうところが大変だなとか、気づきをみんなで共有したいです。例えば、段差や坂道など、見ていて思うだけではなく、実際に自分たちで感じてみるのが大切なことだと考えています。

  • もう1点は、多目的トイレの改修をしていきたいです。
    子供たちにとって公園は楽しい場所なのですが、車いすの方や小さな子どもたちはトイレやおむつ交換の時間を気にしながらの公園利用となってしまうため、時間を気にせずに遊べる状況を整備していきたいです。多目的トイレの改修には時間がかかると思うので、ユニバーサルシートの代わりになる簡易ベッドの設置であれば、DIYで作れるかもしれないし、不要になったものを寄付してもらえるかもしれない。まずはアイデアで対応できるものがないかなと考えました。

  • 自然を活かした遊び場として、アスレチックなどアイデアを出し合えば自分たちで出来るのではないでしょうか。段ボールハウスで、基地を作るなど子どもたちの発想で遊べるのではないかと思います。

(根本さんのコメント)
短期的な取り組みとして、次回ワークショップで、車いすの体験会をするのはとてもいいスタートの機会になると思います。やはり気づいてもらう、理解してもらうのはとても大切なことだと思うので、ぜひ実施できると良いですね。活動にあたっては、どこを体験してほしいか(コースや体験メニューなど)、少し具体的になれば良いかと思います。
トイレの見直しなどは、必要性はみんな分かっているのだけど、それをどうみんなに共感してもらうか、必要性を根拠づけられるかも、すごく大切です。例えば、体験会の時にアンケートも合わせて実施して、どういう点を改善したほうがいいかなどの客観的意見が得られると良いですね。様々な意見を収集しておくことで、これから公園を考えるときに大きな材料になります。

[グループ⑤]
誰でもチャレンジできる公園にしよう!

  • 次回のワークショップで実践できそうなイベントとして、「音楽ライブ」「イルミネーション」が挙がりました。

  • 趣味で音響機材を持っているので、楽器を演奏できる方がいれば、すぐにイベントができ、音楽を流すだけでも、世代を超えて交流できるのではないかと思います。芝生広場や水辺のテラスで、夕日の中、春日池を見ながらイベントをすれば憩いの場にもなると思います。

  • イルミネーションについては、バラをモチーフに作った試作品があり、次のイベントで実験的に設置できると良いなと思っています。音楽と光は相性がいいので、イルミネーションと音楽ライブを融合させてみたいです。

  • その他、キッチンカーやマルシェも実施してみたいですが、出店者を集めるネットワークや収益の観点から1か月後は難しいと判断しており、もう少し時間をかけて色々な方を巻き込みながら実現できれば良いと考えています。

(根本さんのコメント)
誰でもチャレンジということで、音楽は誰でも参加できるからよい活動だと思います。機材も持たれているので、事前の準備を考えても短期的な取り組みとして良いのではないかと思います。イルミネーションの作品を展示する取り組みもとても良いと思いました。
それが中長期的な取り組みとして、どう皆さんに共感してもらえるかを考えられるとより良いかと思います。また、作品を作って見てもらうという一方通行にならないようにできると良いですね。例えば、みんなで制作するワークショップのような場をつくることで、誰でもチャレンジできる公園の実現に繋がっていくと思います。


取りまとめ(次回ワークショップの活動内容)

次回のワークショップでトライアルする内容については、準備期間が1カ月程度であることから、無理なく実践できる範囲で検討していくことになりました。現時点でトライアルすることが決まった活動は以下のとおりです。

① 公園ガイドツアー
落ち葉やゴミ拾い、掲示板の設置状況確認を一緒に行う。コースについては、今後の検討事項とする。
② 焚き火
実施場所については、今後の検討事項とする。
③ カフェタイム
必要設備(火の使用など)や実施場所、提供方法については、今後の検討事項とする。

その他のアイデアとして挙がった活動についても、グループメンバーと一緒に実現できるかどうかを検討し、次回ワークショップの準備をしていきたいと思います!

(根本さんのコメント)
次回のワークショップでトライアルしたい活動を整理することができました。それぞれの活動について実施したい場所があると思います。それぞれの活動が場所的に分散してしまうともったいないので、全体感をイメージしながら考えていきましょう。

(佐藤さんのコメント)
公園や地域のことを理解すればするほど、春日池公園らしい活動アイデアが生まれてきたと思います。今できることはなんだろう、長期的に考えていくべきことは?など、市民と市役所の皆さんが、同じ目線で一緒に話し合えたのは素晴らしいことです。次回のワークショップでは、実際にトライアルしてみての気づきもたくさんあると思います。お互いにその気づきをシェアしあい、次の活動に繋げ、ブラッシュアップしていきましょう。

事例紹介(中央公園)

今回のワークショップでは、公園の活用にどのように市民が関わっているのか、公園の活用が地域にどんな好影響を及ぼしているか、そして、それを実現するための事業手法はどんなものがあるのか
参考となる事例として、中央公園で活動されている福山電業(株)の谷口さんをお招きし、お話を伺いました。

◆トークスピーカー


中央公園について

中央公園は駅から約700mの位置にある都市公園です。事業以前の中央公園のイメージは、日影がない、芝生がはげている、ベンチが少ない、夜が暗くて怖いなどネガティブなイメージがありました。
そのような状況において、福山駅前再生ビジョンというものが策定され、その中に中央公園も含めた公共空間の再整備ということが計画内に位置づけられていました。

公園を活用した実証実験

ビジョン策定を受けて、中央公園で『どのような景色がみられると市民が楽しめるのか』『その効果は地域に還元されていくのか』といったことを確かめるため、2019年に2か月間の実証実験を行うことになりました。

実証実験では、仮設店舗の飲食・販売だったり、ヨガをやってみたり、中央公園を拠点に星空を観測するチームとプラネタリウムの鑑賞をやってみたりを市民の方と一緒に試してみました。また、図書館が併設された公園になるため、どれくらいの本を外に置けるか、物量や本が盗られないかなどを実際に試してみました。
また、他のチームでは、別の公園と合わせて使ってみたらどうかということで、周辺の公園でマルシェをやってみたり、パークシネマをやってみたり、飲食販売をして、その収益を事業者が得られることで経済活動の取り組みなども含め、様々な実験を重ねてきました。

このような一連のプログラムをやってみることで、例えば、周囲への騒音や、公園のキャパシティを越えてしまい、すべての人が入場できない等、色々な問題に気づくことができました。
そういった課題も含めて、実践を重ねていくうちにメンバー自身にも手ごたえや、やり方(スタイル)が分かっていき、自信につながっていきました。この街に住んでいて、この街に公園がある。公園が街の大切な資産であることをメンバーが捉えるようになれたことが最大の変化だと思います。自分たちの地域の未来を作っていくなかで、この公園がどうあるべきかと考えたときに、他人事ではいられないなとなっていったことが大きいです。
結局は大切な友人や家族たちが未来を感じられるような街にしていくことが、大事なんじゃないかという点が、メンバー自身が取り組みを継続していく上での動機づけになった実証実験でした。

Park-PFI事業への参画

実証実験の結果、中央公園で民間の活力を活かす事業手法の1つである「Park-PFI事業」が実施されることになりました。

私の所属する福山電業(株)は、福山市からの公募に対し民間企業6社でチームを組んだうちの1社として事業応募していくことになりました。
私たちのチームの事業目的は、『市民が自分ごととして公園に関われる「市民参加型」「市民共感型」の公園運営によって、市民がより福山のまちに愛着を持てる未来の実現を目的とすること』です。
これはチームのメンバーで何度も話を重ねて決めたもので、事業者だけが公園運営をやるのではなく、市民と一緒にこれからの未来を創っていくことが大事なのではないかと、実験を重ねていくなかで感じていたことから見出した事業目的です。
また、事業開始後も継続していかなければならない中、いずれは誰かにバトンを渡していかないといけない時が来るだろう。そうなったときには実際に利用する人たちが運営に携わっていくような形を作るのがよいのではないかということで、その点を事業目的としました。

私たちが事業を実施していく上では、定量的・定性的な効果測定・分析を行い、次の取り組みに繋げていくことを意識しています。計測指標としては、地価がどのように変化したか、イベント開催時に、どのくらいの人数が訪れ、どのくらいお金を使ってもらえたかなどを調査しています。
これは、中央公園は住宅と商業の真ん中に位置しており、その間をつなぎ合わせる場所として、公園だけが賑わうのではなく、地域と連続した形で賑わいが生まれているかを確認するために行っているものです。

Park-PFIでの実施事業

前述のとおり、地域との連続性を確保するためにはハード・ソフトの両面で整備する必要があると考えたため、我々のチームでは以下の2つの事業を行っています。
① ガーデンレストラン Enleeの運営事業
② NIWASKIによるコミュニティマネジメントを重視した公園利活用事業

ガーデンレストランEnlee

ハード整備にあたって、建物をたくさん作ればいいというわけではないので、最初の投資はレストランと四阿(あずまや)を街との連続性を壊さないような風景づくりを意識して作っていきました。
また、最初から全てを整備するのではなく、少し余白を残しておき、事業開始後にテイクアウト用のカウンターを作るなど柔軟に運営しています。

NIWASAKI(市民団体)

NIWASAKIは、中央公園で活動している市民団体のチームです。
公園を自分の家の庭先のような身近な場所として気軽に使ってもらうため、実際にそれを実現するための支援を行っています。公園が自身のライフスタイルの中にどのように溶け込んでいくかを丁寧に考えながら活動しています。

実際にマルシェを実施したり、ワークショップや公園に図書館の本を思いっきり出したりするなどのイベントに、伴走支援の形で日々活動を続けています。
地元の企業にPRの一環としてイベントを開催してもらったり、芝生が伸びてきたらみんなで刈ってみたり、そのようなイベントを楽しみながら実施することで、人と人の接点づくりも意識しています。
学生や行政を巻き込んだ朝ごはんのイベントや、音楽の仲間たちと一緒に夜店で皆さんが憩えるような場所を作ったりなども試しています。
また、現在関わっていただいている中で最大な規模となったものは、主婦の方3名が中心となって企画・運営をしているイベントです。最初は40店舗ほどだったものが、今は80店舗ほどになりました。最初は企画の段階からお手伝いをしていましたが、今は彼女たちだけで実施しています。

こういった関わり方を続けることで、「私たちはこう使いたいのだけどどうすればよいか?」という相談を多く受けるようになり、NIWASAKIとしてイベントを主催する回数がかなり減ってきて、皆さんがやりたいことを側方支援(企画内容のブラッシュアップ、運営補助、情報発信など)する活動に変わってきました。

最後に

中央公園において、私たちは、ただの場の活用ではなく公園の景色を作っていくような役割を担っており、規模は小さくても、小さいものを息長く続けていくことを大切にしています。
コロナも明けて、公園に出かける機会が増えてきたと思います。
皆さんも、Park Life LABに参加することで、公園が身近にある暮らしを考えるきっかけになっており、実際に自分がその中に身を置くと、より暮らしが豊かになってくるのではないでしょうか。
公園を自分たちのまちや地域の資産として捉えると、より公園が面白くなっていくと思います。


◆当日の資料はこちらからご覧いただけます!

■ 当日の資料はこちらからダウンロードいただけます。
福山市公園緑地課ホームページ

次回のワークショップ

次回は3月17日(日)に春日池公園にて開催します。
今年度のプログラムは次回で最後となりますが、現地にて活動アイデアをトライアルし、次年度以降の取り組みにつなげていきます!!

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

文責:事務局(中電技術コンサルタント(株))田中


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