見出し画像

【ワークショップ開催レポート】FUKUYAMA ParkLife LAB in春日池公園 ❶

福山市の新しい公園のあり方を考えるFUKUYAMA ParkLife LAB。市東部に位置する春日池公園が本プロジェクトの最初の公園となります。今回はそのスタートとなる、2023年10月9日(月・祝)に開催した第1回ワークショップの様子をご紹介します。

FUKUYAMA ParkLife LABとは?
気持ちのいいワクワクする公園のある暮らしは、人生を豊かにしてくれるはず。福山市の公園を、行政や地域住民・民間事業者が連携し、暮らしを豊かにする公園とはどんな公園かを考え、みんなのアイデアとアクションを試行するプロジェクトです。


FUKUYAMA ParkLife LAB in春日池公園のプログラム

春日池公園を対象とした2023年度のプログラムは、以下のような計6回の構成になっています。春日池公園で行う「野外編」3回と、そこで得られた発見・アイデアを整理し、ビジョンにまとめていく「屋内編」3回を予定しています。
今回は『春日池公園の魅力を発見!』というテーマで実施しました。

FUKUYAMA ParkLife LAB実施の背景

まずは、FUKUYAMA ParkLifeLABを実施することとなった背景を福山市公園緑地課の藤井さんからご紹介いただきました。

  • この取組は、多様な主体が連携して、公園という身近な公共空間をもっと上手に使いこなし、暮らしをより豊かに変えていこう、公園をよりよくしていこう、地域をもっと魅力的にしていこう、という取組です。

  • どのようなことをやっていくのか、市民や民間事業者の方々と一緒に考えながら手探りで取り組んでいく、言わば「実験的な」取組であることから、「ParkLife LAB」という名前をつけさせていただきました。

  • 今年度は、その第一歩として、春日池公園の柔軟な活用により実現できる地域の将来像(エリアビジョン)を皆さんと一緒に描いていきたいと考えています。

  • また、この取り組みの背景には、近年、公園の維持管理費が右肩上がりの状況にあり、財政的にも厳しい局面を迎えているということをお伝えしておかなければなりません。

  • このような状況を踏まえ、福山市では多様な主体が連携して公園の整備や管理運営に取り組む「公民連携」により、財政支出の抑制を図りながら、地域の活性化に繋がる公園の利活用を促していきたいと考えています。

  • 既に中央公園や家廻公園、あるいはかわまち広場などにおいては、それぞれの地域課題に応じた公民連携の取組を進めているところです。(広報ふくやま3月号参照)

  • 今後、こうした取り組みも共有させていただきながら、春日池公園においてどのような取組ができるのか、皆さんと一緒に考えていけたらと思っております。どうぞよろしくお願いします。

◆コーディネーターのご紹介

佐藤 留美さん(NPO法人 NPO birth 事務局長)
東京農工大学農学部森林利用システム学科卒業。
都市の“みどり”(グリーンインフラ)の力を引き出し、まちづくりに生かす様々なプロジェクトを生み出している。著書に「パークマネジメントがひらくまちづくりの未来」(共著、マルモ出版、2020)ほか

根本 修平さん(福山市立大学 都市経営学部 都市経営学科 准教授)
九州芸術工科大学大学院芸術工学研究科生活環境専攻博士課程単位取得満期退学。
OPEN STREET FUKUYAMA(福山駅前等歩道空間活用社会実験)をはじめとして、まちの活性化プロジェクトに多数参画。家廻公園では、ベンチ制作やトイレ装飾の設計と制作ワークショップを大学の研究室で運営する。

『自然、人、まちが元気になる公園づくり』

本プログラムのコーディネーターでもあるNPO birth事務局長の佐藤留美さんから、公園の持つ力をまちづくりに活かす取組について、実際の活動や事例を交えながらご紹介いただきました。

こちらは、NPO birth のビジョンです。公園を元気にすることで、こんなまちをつくりあげていきたいという想いを持って活動しています。

佐藤さんの話によると、まず公園には社会課題や地域課題を解決する力があるとのこと。それは例えば、気候変動に伴う都市災害からまちを守る力、生態系を保全する力、地域のコミュニティを醸成する力など様々で、NPO birthでは中間支援組織として、こうした公園の持つ力をまちづくりに活かす取組を進めているそうです。

<10の公園力>
1.気候変動や都市災害を防ぐ
2.美しい景観を形成する
3.生きものの多様性を育む
4.コミュニティを活性化する
5.食育の場・新鮮な食べ物を供給する
6.健康な心身を育てる
7.教育・福祉の場として活用される
8.経済的価値を生み出す
9.地域の文化・観光の拠点となる
10.資源循環・クリーンエネルギーを創出する

具体的にどのような取組を進めているのかと言えば、、、

①  パークレンジャーによる自然環境教育

子どもたちが草花や生き物の持つ魅力を知り、自然環境や生態系の重要性を学ぶ機会となっています。

② 地域住民との協働事業を通じたコミュニティの醸成

手入れが行き届いていない花壇を活用して、地域の方々と一緒に花を植えたり、バッタの生育環境を作ったりする「ちょいボラ」は、地域コミュニティの醸成にも繋がっています。

③ 資源循環型社会の構築

廃棄物となる落ち葉を集めて堆肥に活用したり、カブトムシの生育環境をつくったり、資源循環型社会を考えるきっかけをつくっています。

海外に目を向けると、さらに進んだ取組も行われているそうです。

この写真は、洪水などの都市災害を防ぐため「雨庭」と呼ばれる雨水を貯留する湿地帯で、生物にやさしい生息環境としても機能しています。

こちらの写真は、雨水が地中に浸透しやすい水路

中間支援組織が公園の清掃や除草作業をボランティアプログラムとして提供し、市民や企業が参加している様子です。一見すると草ぼうぼうにも見えますが、実は除草作業では外来種だけを駆除し、在来種を保護することによって、生物多様性を守る取組としているらしく、参加する人々の公園に対する意識もどんどん変わっているそうです。

このように、公園の持つ力を上手に引き出すことができれば、社会課題や地域課題の解決に繋げていくことが可能です。佐藤さんたちは、カフェやマルシェなどの賑わい創出イベントだけでなく、地域の農家を支援する体験プログラムを提供したり、アートプロジェクトや防災意識の啓発イベントなど、体験や学びの場・文化振興に繋がるような活動も行なっているそうです。

公園をつくるということは、まち全体をつくっていくことにつながっています。そのためには、「公園」と「地域」の特性をしっかりと見出し、産官学民が連携して公園づくりのコンセプトをつくることが大切になります。

あらためて、良い公園が身近にあることが、普段の暮らしの可能性を拡げ、質を高めていくことにつながることを教えていただくことができました。

春日池公園はこんな公園

春日池公園は15.6haの大きな公園で、春には桜、初夏にはバラと菖蒲《しょうぶ》が花を咲かせ、園内には50種類近い樹木が植えられている豊かな自然を感じることのできる公園です。また芝生広場や遊具広場で、ゆったり寛いだり、遊んだりすることもできます。

園内MAP

その歴史は古く江戸時代まで遡ります。昔の福山市はこの春日池公園あたりまで海が入り込んでおり、現在の春日池公園周辺は入江になっていたそうです。1642年(寛永19年)、ちょうど谷のようになっている地形を利用して干拓地の灌漑用水確保のための溜池をつくることになりました。これにより現在の春日、蔵王、引野、手城地区の田畑を潤すことが出来たそうです。
その後、1967年(昭和44年)~1983年(昭和58年)に実施された東部土地区画整理事業の一環として春日池公園が整備されます。その際に春日池の一部は埋め立てられましたが、現在も本来の灌漑用水だけでなく、水辺空間を活かした人々の憩いの場所になっています。

昭和30年代の春日池
(引用:https://bingo-history.net/archives/14847

現在春日池公園を利用する人は近隣に暮らす60歳以上の男性の割合が多くなっています。利用目的として、ウォーキング・散歩が大半を占めており、自然を感じながら池の周囲を歩くことのできる環境が地域に親しまれていることが分かります。

春日池公園の「良いところ」「残念なところ」をみつけよう!

今回のワークショップのテーマは、『春日池公園の魅力を発見!』ということで、参加者の皆さんと公園内を散策し、「良いところ」「残念なところ」を探していきました。5人くらいのグループをつくり、おしゃべりをしながら歩き回ることで、1人では気づかない気づきを見つけるだけでなく、公園との関わりなどをグループ内でお話していただくことで、参加者同士の交流が生まれるキッカケとなりました。

参加者の皆さんに、「良いところ」「残念なところ」を付箋にメモいただき園内マップに貼り出していきました。「残念なところ」の方が少し多いようにも思いますが・・・、たくさんの意見が出てきました!

手前が「良いところ」奥が「残念なところ」

最後に皆さんから出てきた意見を見ながら、春日池公園の魅力や改善点について、振り返りを行いました。その一部をご紹介します。

  • 公園内にどんぐりの木が多く、虫取りをしている子供もいて、植物の香りも豊か。多様な植物があるということは、色々な生き物が住んでいる。みんなで一緒に草刈りイベントをしてみたい!

  • 散歩に心地よい雰囲気でサイズ感もちょうど良いと思う。ウォーキングの距離が分かるともっと良さそう。

  • 春日池を眺めると気持ちイイ!デイキャンプをしながらゆっくり過ごしてみたい。また水面が広いのでウォータースポーツとしてカヤックなどをしながらゴミ拾いができると良い。

  • 菖蒲園には岩場もあってビオトープとして豊かな環境がつくられている。爬虫類など、たくさんの生き物が住んでいそう。

  • 外来種の植物(ニセアカシアなど)も生えているが、花は食べることもできる。また、ミツバチにとって蜜源にもなる。

  • 木や雑草が生い茂っていて、少し暗い印象もある。眺望を良くするために、少し伐採するなど手を入れることも必要である。

  • 石碑やモニュメントの意図を伝えるものがないので、もったいない。また、サインや掲示板が老朽化していたり、禁止事項ばかりが書かれていたり、統一感を持ってキレイにできると良い。

  • 遊具の周りや手洗いなど、バリアフリーへの配慮が行き届いていない。

  • 公園に常駐する人がいないので、安全面から火を使えるスポットがないのが残念。時期を限定して利用できるようにしてみたい。

このようにしっかりと春日池公園の現状を把握し、アイデアの種を見つけることができました。最後に、これらを上手く活用した取組に変えていく上で大切なことを、コーディネーターの福山市立大学 准教授の根本さんからアドバイスをいただきました。

都市経営的に言えば財政上の課題等から、行政だけがまちづくり・公園づくりを行う時代ではなくなってきています。これは、地域の住民や事業者の皆さんが今こそ自分たちの居心地のいい場所を自分たちでつくることができるチャンスがあるということです。社会実験などをうまく活用しながら、協働してつくりあげていくことができるので、時間はかかるかもしれませんが、春日池公園で何ができるのか、一緒に考えていきましょう。

最後はみんなで集合写真!

◆当日の様子や資料はこちらからご覧いただけます!

■ 当日の資料はこちらからダウンロードいただけます。
福山市公園緑地課ホームページ

次回のワークショップ

次回は11月12日(日)に、今回と同じく春日池公園にて『活用アイデアを考えよう!』をテーマに開催します。次回のFUKUYAMA ParkLifeLABも是非ご期待ください!

■ FUKUYAMA ParkLifeLABはSNSでも情報発信しています。フォローお願いします!
Facebook
Instagram

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

文責:事務局(中電技術コンサルタント(株))田中


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?