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【ワークショップ開催レポート】FUKUYAMA ParkLife LAB in春日池公園 ❷

福山市の新しい公園のあり方を考えるFUKUYAMA ParkLife LAB。市東部に位置する春日池公園が本プロジェクトの最初の公園となります。
今回は、2023年11月12日(日)に開催した第2回ワークショップの様子をご紹介します。

FUKUYAMA ParkLife LABとは?
気持ちのいいワクワクする公園のある暮らしは、人生を豊かにしてくれるはず。福山市の公園を、行政や地域住民・民間事業者が連携し、暮らしを豊かにする公園とはどんな公園かを考え、みんなのアイデアとアクションを試行するプロジェクトです。


FUKUYAMA ParkLife LAB in春日池公園のプログラム

春日池公園を対象とした2023年度のプログラムは、以下のような計6回の構成になっています。春日池公園で行う「野外編」3回と、そこで得られた発見・アイデアを整理し、ビジョンにまとめていく「屋内編」3回を予定しています。第2回となる今回は、『活用アイデアを考える!』というテーマで実施しました。

◆コーディネーターのご紹介

佐藤 留美さん(NPO法人 NPO birth 事務局長)
東京農工大学農学部森林利用システム学科卒業。
都市の“みどり”(グリーンインフラ)の力を引き出し、まちづくりに生かす様々なプロジェクトを生み出している。著書に「パークマネジメントがひらくまちづくりの未来」(共著、マルモ出版、2020)ほか

根本 修平さん(福山市立大学 都市経営学部 都市経営学科 准教授)
九州芸術工科大学大学院芸術工学研究科生活環境専攻博士課程単位取得満期退学。
OPEN STREET FUKUYAMA(福山駅前等歩道空間活用社会実験)をはじめとして、まちの活性化プロジェクトに多数参画。家廻公園では、ベンチ制作やトイレ装飾の設計と制作ワークショップを大学の研究室で運営する。

第1回ワークショップの詳しい内容は、こちらのレポートをご覧ください!

活動紹介『自然教育について』

春日池公園の大きな特徴として、様々な植物が植えられ、多くの生き物が生息する豊かな自然環境が挙げられます。そこで、福山市内で自然教育活動を通じた自然環境保護や地域コミュニティ醸成に取り組まれている岡田臣司さんをお招きし、活動にかける想いを語っていただきました。

岡田臣司さんのご経歴
広島県福山市出身。
アメリカのイエローストーン国立公園にてパークレンジャー助手を約3年経過した後、帰国。
現在は福山市熊野町にて民泊施設せとうち母家を運営するインクロッチェ(株)取締役。また、周辺の豊かな里山里地資源の有効利活用を目的とし、地元教育機関及び行政と連携した自然教育活動も同時に実施している。

岡田さんの里山活動については、こちらの福山市公式YouTubeで詳しく紹介されています。

アメリカのパークレンジャーの仕事

岡田さんのご経歴にもある「パークレンジャー」は、アメリカの国立公園内で自然環境を保護するために活動する職員で、次のような仕事を行っています。

- 開発行為などに対する許可や認可の審査
- 公園計画の作成や見直し
- 公園内の自然環境や動植物の保護のための調査や巡視
- 利用者にとって安全・快適な公園作りのための施設整備や管理運営
- 過去に損なわれた自然環境を取り戻すための自然再生事業の推進
- 公園を訪れた人々への自然解説や環境教育(インタプリテーション)

なお、日本では環境省の職員としてレンジャーが在籍しているほか、民間団体(NPO birthや日本野鳥の会など)にもレンジャーが在籍しており、日本全国の公園で活躍されています。

「自然教育」の重要なポイントを説明していただきました。

■ 自然を理解、共感し、自然を大切に考えて行動できる人を増やす。
■ 自然からのメッセージを受け止める。
 (自然に出向いていかないといけない)
■ ファシリテート、そそのかしが必要。
■ 究極的には個々が自らの能力を最大限に発揮できるようにすることで
 あり、用意されている答えに導く形(誘導的)であってはいけない。

(自然教育研究センター 小林 毅氏の文章より)

上に挙げられたファシリテート(そそのかし)は「一人じゃなくみんなでやろう」という意味で、岡田さんは「自然教育」によって、感動を分かち合える人を増やしたいという想いで活動されているそうです。

岡田さんが実際に行われている活動を何点かご紹介いただきました。

① 親子ワーケーション

自然を学び体感できる親子ワーケーションのプログラムとして提供しています。ガイド中に気になった里山の植物や生き物などを集めて思い出箱づくりを行ったり、蝶は特定の植物にしかタマゴを生まないので、蝶と植物の関係を紹介したりするなど、自然に関する様々な学びを提供することで、子ども達に自然の素晴らしさや大切さを伝えています。

② 有害鳥獣捕獲事業

地元の有害駆除班に所属しており、イノシシの罠を仕掛けて捕獲するなどの活動をしています。また、実際に罠を仕掛けた様子をガイドするプログラムも行っています。

③ 耕作放棄地の解消と六条大麦の栽培

使われず放棄されてしまった農地を、地域の方と一緒に復活させる取り組みも行っています。まずは草刈りをした後、裏山の雑木林の落ち葉を集めて土にまき、耕した上で大麦を植えました。
2月頃の麦踏みから始まり、5月末から6月頃にかけて大麦が育ちました。

耕作放棄地の草刈り
落ち葉を集め撒く
麦踏
育った大麦

岡田さんの活動される地域は少子高齢化が進み、農家の担い手も少なくなっています。この活動のように、地域の方と一緒に取り組むことで連帯感が高まります。岡田さんは地域の中で協力し合える関係性を築くことで農業の維持を図っていきたいと考えているそうです。

④ 養蜂&採蜜

養蜂用の蜜源となる植物を自ら育てています。ラベンダーやクローバーなど、様々な花を育てていますが、例えば大根の花も蜜源になります。食物用として育てた大根も食べられない分は、そのまま植えておくことで花が咲き蜜源になるため、無駄なものは1つとしてありません。
春日池公園にも、様々な蜜源になる植物が生えています。機会があれば、公園で養蜂を体験できると良いかもしれません。

蜜源となる花
養蜂箱
西洋ミツバチ
採蜜

自然から採れたものを実際に「食べる」という体験は、その場所に対する愛着がとても高まり、自然に対して理解を深めることにつながると、お話いただきました。

春日池公園は豊かな自然環境に恵まれており、そのことが大きなポテンシャルとなっています。この春日池公園の持つ自然環境の力を引き出すためには以下のことが大切であると教えていただきました。

  • ガイドや体験によって、自然環境への理解を深めることができること

  • 自然への意識が芽生えることで、普段の暮らしが豊かになるという気づきを与えること

  • そして、誰か1人ではなく、みんなで一緒に取り組んでいくこと

春日池公園の活用アイデアを考えよう!

今回のワークショップのテーマは、『春日池公園の活用アイデアを考えよう!』です。はじめに前回のワークショップで、皆さんが発見した「良いところ」「残念なところ」をもとに、活用アイデアを考える上での5つのテーマを設定しました。

次に、テーマごとにグループに分かれ【公園の持つ10の力】も念頭に置き、実際に公園内を散策しながら活用アイデアを考えていきました。

① みどり豊かな公園にしよう!

【活用アイデア】

  • 探索会などで自然のことを知っている人を増やす

  • 養蜂は是非体験してみたい

  • 完全循環型のビオトープをつくる

  • みんなが気軽に緑の管理に参加できる仕組みづくり

  • ワークショップ(野鳥観察、木の実を集めた工作など)

(佐藤さんからコメント)
NPO birthの担当する公園でも、林の手入れやガーデン活動など、子どもから大人まで、また企業や大学生など、様々な市民が参画しています。活動前には市民と一緒に公園の将来像を考えたり、なぜこの活動をするかをみんなが理解できるようにしています。市民が安全に楽しく活動するために、様々な研修も行っています。みんなで活動することで、成果をわかちあい、喜びあえるのが市民参加の醍醐味です。

② 誰でもチャレンジできる公園にしよう!

【活用アイデア】

  • インクルーシブ遊具を導入し、障がいを持つ子どもも遊べる環境づくり

  • 春日池をカヌーやカヤックで活用する

  • ウォーキングの距離や木の名前など表示を改善する

  • ファッションショーやスナップ撮影イベントを開催する

  • バスケットコートなどのスポーツエリアをつくる

(佐藤さんからコメント)
参加者同士で連携すればすぐにでもプログラムにできそうな具体的な話も出ていたのがとても良かった。お互いを知る機会にもなったと思います。

(岡田さんからコメント)
生き物図鑑などのハンドブックを持って公園内を散策すると、より楽しく歩くことができます。

③ 楽しく学べる公園にしよう!

【活用アイデア】

  • バードウォッチングできる場所をつくる(双眼鏡やルーペも準備)

  • ライトアップして夜も歩きやすくする

  • 春日池の眺望をもっと楽しめるよう、ところどころ木々を剪定する

  • 樹木の名前が分かるように表示を統一して整備する

  • 看板を「マムシ危険」という表示ではなく、生態説明や気をつける点など野生動物との共存を理解できる内容にする

  • ススキでホウキづくりなどのワークショップ

  • バラ公園でイルミネーション(バラのない季節)

(佐藤さんからコメント)
公園を歩きながら気づいたことを、何でも学びにつなげていく視点が素晴らしいですね。講師を招いてのセミナーも良いですし、市民が先生になったりも楽しい。表示やサインを工夫して、セルフガイドで誰もが学べるアイデアは、ぜひ取り入れたいですね。

④ 心身ともに健康になれる公園にしよう!

【活用アイデア】

  • 健康器具や手すりを設置して、高齢者が運動しやすい環境をつくる

  • 春日池を眺めながら休める場所をつくる

  • ラジオ体操イベント

  • ウォーキングのリピーターを増やすため、歩きながら春日池を眺められるように木を剪定する、消費カロリーの表示をつくるなどを工夫する

  • 春日池アプリをつくって歩数計やカロリー計算の機能や、ウォーキングや作業への参加でポイントが溜まるシステムがあっても面白い

(根本さんからコメント)
次の段階では、まずやってみることが大切です。実験的にやってみて、上手くいきそうであれば実装していくという進め方ができると良さそうですね。

⑤ 居心地の良い公園にしよう!

【活用アイデア】

  • ウォーキングルートを季節で楽しめる工夫

  • 雨が降っている日でも、長居できるような屋根

  • 管理棟を活用する

  • トイレを使いやすくする

  • ベンチと一緒にテーブルも置くようにする

  • ツリーハウスや木登りなど自然を使った遊び

  • 花火や焼き芋など火を使った活動

  • 春日池にジップラインを通す

(根本さんからコメント)
今はたくさん思いついたことを挙げることが大事なので、矛盾することも出てくると思います。次のステップは、我々が何をするべきか、何ができるかを考えていくことが大切です。

今回のワークショップも、実際に公園内を散策しながらアイデアを出し合う中で、春日池公園のポテンシャルを活かした実現したくなるアイデアがたくさん出てきました。また2回目ということもあり、参加者同士が打ち解け、お互いの意見にしっかり耳を傾ける様子が印象的でした。
次回からは、これまで出してきた意見やアイデアを整理していくフェーズとなります。

最後に、コーディネーターである皆さんからまとめのコメントをいただきました。

(佐藤さんからコメント)
参加者の皆さんが、楽しみながら意見を出し合う姿をみて私もワクワクしました。今日は寒かったので焚火もしてみたかったですね。 「みんなで歩いたら、知らなかったことをたくさん知れた」「知ると自分の暮らしに近くなる」という感想、本当にそう思います。「こんな風にしてみたい」「こんなこと、やってみたい」とみんなで公園を散策しながら夢を語り合うことで、公園の良さがより引き出されると思います。
大きなプロジェクトについても夢描きながら、すぐにできる小さなことからスモールスタートすることも大切です。今日のアイデアをもっと膨らませていきましょう。

(岡田さんからコメント)
おもしろいことをみんなで一緒にする、おいしいものを一緒に食べるという体験を通じて、同じ時間を共有すると、その体験が生活の一部になり、活動の継続性に繋がると思うのでこうした取り組みを大切にしていきましょう。

(根本さんからコメント)
現在は自分たちの手で、まちをつくれる時代になっています。皆さんが考えたアイデアを実際に検証することも、自分たちの仕事として考えてもいい時代になってきています。
今までは誰かがしてくれると思っていた面もありますが、これからは、どうしたらできるかを一緒に考えていければ良いと思います。何が望まれているか、何をすればよいかの視点に立って一緒に考えることが重要なので、次回以降も皆さんと一緒に考えていきたいです。

◆当日の様子や資料はこちらからご覧いただけます!

■ 当日の資料はこちらからダウンロードいただけます。
福山市公園緑地課ホームページ

次回のワークショップ

次回からは屋内編となり、12月3日(日)に、『現状・課題やポテンシャルを整理する!』をテーマに開催します。これからのFUKUYAMA ParkLife LABも是非ご注目ください!

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最後までお読みいただき、ありがとうございました!

文責:事務局(中電技術コンサルタント(株))田中


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