【ワークショップ開催レポート】FUKUYAMA ParkLife LAB in春日池公園 ❹
福山市の新しい公園のあり方を考えるFUKUYAMA ParkLife LAB。春日池公園は本プロジェクトのモデルとして取り組む公園です。
今回は、2024年1月21日(日)に開催した第4回ワークショップの様子をご紹介します。
FUKUYAMA ParkLife LAB in春日池公園のプログラム
春日池公園を対象とした2023年度のプログラムは、現地開催となる「野外編」3回と、そこで得られた発見・アイデアを整理しビジョンにまとめていく「屋内編」3回の計6回の構成になっています。
第4回となる今回からは、これまでイメージしてきたことを「方針に落とし込むフェーズ」として取組んでいきます。
◆コーディネーターのご紹介
◆コメンテーターのご紹介
これまでのワークショップの詳しい内容は、こちらのレポートをご覧ください!
ビジョンづくりについて
このプログラムではこれからの春日池公園のあり方や使い方について、みんなで考え、仮説を立て、実践する中で、公園づくりの道しるべとなるビジョンを少しずつ作りあげていくこととしています。
ここで大切となるのは、第1回のワークショップで佐藤さんに教えていただいた『公園が良くなれば、まちが良くなる』という視点です。身近に”良い公園”がある豊かな暮らしをイメージしながらビジョンをつくっていきましょう。
【ビジョンづくりの考え方】
公園の活用を通じて豊かな暮らしを実現していく「まちづくりの視点」が重要です。
自身の興味や関心、得意分野を生かして一人ひとりが主体的に取り組めるものとします。
今後、試行錯誤を繰り返す中で適宜ブラッシュアップしていきます。
将来の”公園づくりの道しるべ”となるビジョンを考える上で、これまで公園が積み重ねてきた時間や出来事を知ることは、取組の方向性を考える上で、とても大切なことです。
そこで、今回のワークショップでは、あらためて公園の歴史や成り立ちについて、福山市役所公園緑地課 藤井さんより紹介いただくことからスタートしました。
『過去と現在を知り、未来を創造する。』
ー春日池公園の歴史や成り立ちについてー
2つの大きな転換点
まずは春日池と春日池公園の歴史について年表で見ていきます。これまでを振り返った時に、大きな2つの転換点があったことが分かります。
1つ目は、江戸時代です。
初代福山藩主 水野勝成により福山城が築城された後、福山市内の土地は大規模な干拓事業が行われました。その際、灌漑用水の溜池として春日池が築造されたそうです。以降、春日池は農耕用の水がめとして300年以上に渡って人々の生活を支えてきました。
2つ目は、高度経済成長期です。
1961年に日本鋼管福山製鉄所(現:JFEスチール西日本製鉄所)が誘致されたことに伴い、福山市の人口が急激に増加しました。これに対応するため、造成事業が行われます。住宅団地を造成する、中心的な場所となったのが東部地区であり、その開発に併せて春日池が公園として整備され、市民の憩いと活動の場に生まれ変わりました。
それでは、それぞれの時代をもう少し詳しく見ていきましょう。
江戸時代(人々の生活を支える水がめ)
こちらは江戸時代の地形図です。薄い緑色は大半が埋め立て地で、福山市の土地の大部分は海でした。春日池のあたりまで、海が入り込んでいたと言われています。このような場所に、大規模な干拓事業が行われてきました。
春日池は福山城築城から間もなく行われた干拓事業に伴って、寛永20年に整備されたと言われており、規模も大きく、服部大池、瀬戸池に並び備後3大大池の一つに数えられています。
また、干拓地は塩分を含む土壌となります。そこで、福山藩主 水野勝成はそのような土地でも生育できる植物として、綿花の栽培を奨励しました。これにより、江戸時代後期には綿花を使った日本3大絣の一つ「備後絣」が生まれます。また、現在の福山はデニムの産地として有名ですが、この時代の綿花栽培が礎になっています。
高度経済成長期(市民の憩いの場)
こちらは高度経済成長期における宅地造成範囲を示したものです。ピンク色で塗られた部分に、日本鋼管福山製鉄所の誘致に併せて、大規模な宅地造成事業が行われました。春日池西側の黄色に塗られた部分が、土地区画整理事業で整備された土地になります。また、この際に民間事業者の宅地造成事業も行われます。これにより現在の伊勢丘や春日地区の住宅団地ができました。
そして、春日池公園がこの土地区画整理事業と併せ、整備されました。
春日池公園基本計画(1982年)
では、現在の春日池公園はどのようなコンセプトや想いでつくられたのでしょうか?それを紐解く資料として、1982年に春日池基公園本計画がつくられていましたので、あらためて確認してみましょう。
まずは、基本計画をつくるにあたり、基本構想が立てられています。
この基本構想では以下のようなことが書かれていました。
水面を有する特色を最大限に活かし、水を取り入れた修景施設を導入する
身体障がい者も周遊できるよう、園路は8%以下の勾配とする
目の不自由な人のために、香りを有する樹木を植栽する
四季を通じて楽しめるよう、それぞれの季節の自然の営みを伝える森を造成する
景観を高めるため、要所に展望台を設置する
中央広場は集いの場として活用できるよう、広いスペースを確保する
この構想を踏まえ、基本方針は以下のようになっています。
総合公園として、運動、休養、遊戯、教養等、多様な活動が行えるようにする
住宅地の中にある貴重な自然的風致の存在を公園の利用にも活かす
大人から子供まで全市民が利用できるよう配慮する
この基本構想・基本方針が公園内各ゾーンの計画に落とし込まれています。
こちらが、簡単なゾーニングを表したのがこちらの図面です。それぞれのエリアごとに、当時の計画を見ていきましょう。
1.プロムナード
広場的な性格を持たせ、ベンチや彫刻等を置き、屋外美術館のイメージを再現すると計画されています。なお、入口周辺には園内の案内や管理のための管理棟を設置することとなっています。以前は管理棟に管理者を配置していたのですが、現在は管理者は常駐していません。
2.花の広場
福山市のばら公園に続く、第2のばら公園となるよう、ばらを主体とした明るく華やかな西洋風の広場とすると計画されています。
3.芝生広場
静的な公園の中にあって、最も一般的な利用が期待できるエリアとして、巨木と芝生の拡がりによって、周囲を緑で囲みつつ、明るいイメージを持つ広場として計画されています。
4.中央広場
プロムナードの先にあるモニュメント「太陽の滴(しずく)」のあるエリアです。プロムナードの終点としての完結性と、芝生広場との結節点としての機能を満足させるため、モニュメントを配置して両者を調和させることを目的に計画されています。
5.木漏れ日の広場
園路に沿ってパーゴラが設置されています。池を見渡せるように、園路より高さを下げて、より池に近い高さから、池を望むことができるように計画されています。
6.四季の森
四季折々の景観が感じられる樹木が植えられています。
この森の中の高台となっている場所にもばら園が整備されています。こちらは緩やかな法面に花木、落葉樹、低木を植栽するとともに、展望台を設け、休憩のためのスペースとして計画されていますが、現在は樹木が遮り春日池を望むことができない状況になっていますので、少し手を加える必要があるのかもしれません。
7.冒険の森
遊具を設置し、北側にある児童公園と一体的に利用できるよう計画されています。この児童公園は高台の住宅団地の住民が利用する小さな公園で、地域とのつながりを意識していることが分かります。
8.湿地園
池の奥まった場所を埋め立てて湿地園が整備されています。
園内には花菖蒲を主体にアヤメ、カキツバタ、ジャーマンアイリス等が植えられ、園内の散策を楽しめるように橋板が設置されています。
教養施設
春日池公園は春日池の水面が公園の半分を占めており、スペースの確保が難しいことから、教養施設の設置は見送られました。代わりに、樹木にラベルを付け、公園全体を樹木の見本園にしようという工夫がなされています。
モニュメント「太陽の滴」
このモニュメントは「太陽の滴」と呼ばれており、世羅町出身の環境彫刻家 杭谷一東さんの作品です。”造形と人間がひとつに溶け込む語らいの場”になることを期待して造られました。
杭谷さんは、イタリア国立アカデミーの卒業時に最優秀ミネルヴァ賞を受賞されており、ローマ法王にも謁見されたことがある方です。作品は身近なところにもたくさんあり、尾道市瀬戸田町にある「未来心の丘」なども有名です。
人口減少局面を迎える転換期
最後に、人口動態についても少し目を向けてみましょう。
我が国の人口動態として、右肩上がりの時代に終わりを告げ、これから急激に人口が減少していくことが分かります。
こちらは春日池公園近隣地域の年齢別人口区分を示したグラフになります。
福山市の平均値(赤色の折れ線グラフ)と春日池公園近隣エリア(緑色の棒グラフ)を比較したときに、70代の方など高齢者が非常に多く、20代~30代の子育て世帯、ファミリー世帯が少ない点が特徴で、オールドタウン化が顕著にみられます。
こういった地域の実情についても、公園づくりの中で少し意識しておく必要がありそうですね。
この後、藤井さんの説明を聞いての感想を参加者の皆さんと共有しました。
春日池公園は、春日池を中心に作られているので池を大切にしなければならないと感じた
基本計画が想像以上にしっかりつくられていた驚いた。とても共感できる内容だったので、書かれていたことを尊重し維持できるようにしたい
福山には綿花の歴史があるので、デニムに関連するイベントなどができると歴史を知る良いきっかけになりそう
歴史や成り立ちを振り返っていくと、その当時の人々の暮らしや想いが見えてくる気がしました。公園づくりを考える上で、大切にしなければならないことを皆さんとあらためて確認することができました!
春日池公園のエリアごとの特徴
ここからは現在の春日池公園における場所ごとの現状や特徴をあらためて把握することで、公園での過ごし方をより具体的にイメージしていきます。
春日池公園は、15.6haもある大きな公園です。
そのため、基本計画においても、場所ごとに計画が考えられていたことからも分かるように、それぞれ異なった性格を持っています。
そこで、今回のプログラムでは、春日池公園を以下の7つのエリアに分類しました。
① 自然・散策ゾーン
② 春日池
③ 中央広場
④ 芝生広場
⑤ 冒険の国
⑥ ばら園(花の広場)
⑦ ばら園(四季の森)
それでは各エリアの現状・特徴を簡単に確認していきましょう。
①自然・散策ゾーン
生き物たちの豊かな住処
このエリアは広く、様々な特徴があります。
例えば、菖蒲園では多様な生き物が暮らしているビオトープがあったり、もう少し南に行くと様々な樹木が植えられていたりと、どのエリアよりも自然が豊かで、生き物が主役となるようなエリアです。
②春日池
春日池公園のシンボル
春日池は、公園の約半分の面積を占める春日池公園の象徴です。
先ほどご紹介いただいた歴史からも分かるように、福山市民の生活を支える水源となっています。野鳥の姿も見ることができ、公園に豊かな風景をつくりだしています。
③中央広場
人々を誘うエントランス
公園を訪れた人が最初に立ち寄る場所です。
プロムナード(園路)としてだけでなく、広場的な使い方ができ、美術館のようなイメージを持って作られていると紹介いただきました。また、その終点には公園の”へそ”とも言える特徴的なモニュメント「太陽の滴」も設置されています。
④芝生広場
明るく開放的な自遊空間
春日池公園の中でも、人が一番自由に使える場所で周囲を樹木で緩やかに囲まれ、明るく開放的な空間です。木々の隙間から春日池の風景を眺めることもできます。
⑤冒険の国
子どもたちの成長の場
遊具が設置されており、子どもの遊び場になっています。
今後、この場所に障がいを持つ子ども、持たない子ども関係なく一緒に遊べる遊具(インクルーシブ遊具)が設置される予定で、より色々な子どもたちが遊びながら、学びを得られる場所になっていきます。
⑥ばら園(花の広場)
福山・第2のばら公園
福山市で第2のばら園を目指してつくられた経緯もあり、2,300本40品種以上のばらが植えられ、ばらに特化した広場になっています。西洋風のデザインで、ほかの場所との差別化が図られているのも特徴です。
⑦ばら園(四季の森)
四季を感じる展望の丘
こちらのばら園にも1,000本のばらが植えられており、⑥のエリアよりも静かにばらを楽しむことができる場所です。また、春日池を眺望できる高台としても整備されており、きれいなロケーションも特徴の1つです。
エリアごとの活用イメージを考える!
上記の7つに分けたエリアごとに特徴も異なるため、それぞれの場所での過ごし方にも違いがあります。
そこで、今回のワークショップでは、それぞれのエリアの特性を踏まえた上で、それらのエリアごとに「●●して過ごしたい」といった活用イメージをみんなで考えていくことにしました。
ワークショップを進める上で、グループを4つに分けています。
グループA
①自然散策ゾーンをメインに②春日池や⑦ばら園(四季の森)を含み、より”自然”や”生き物”がキーワードになるグループです。
グループB
③中央広場や④芝生広場に加え②春日池を含み、”人間”が中心の活動がキーワードになります。
グループC
⑤冒険の国が対象エリアとなり、”子ども”を中心とした遊びや学びがキーワードとなります。
グループD
⑥ばら園(花の広場)と⑦ばら園(四季の森)の2つのばら園のエリアで、”花(ばら)”の特徴を活かすことがキーワードです。
この4つのグループに分かれ、グループディスカッションを行いました。
[グループA]
①自然・散策ゾーン(②春日池・⑦ばら園(四季の森))
基本計画に自然に関することが多く書かれていたので、春日池公園においてはとても大切なポイントであると考えました。その中で”五感”を使うことも書かれており、四季の変化を感じられるイベントや、ガイドがあれば”五感”で楽しみ、学ぶことができると思います。
ばら、もみじ、桜、菖蒲などがメインになっており、それ以外の季節はあまり注目されていないので、四季を通じて魅力を伝えることができると良いと考えます。
植物や生き物の生物多様性と、きれいな景観の両方を活かせるよう、バランスをうまく取っていけると良いと思います。
食べられる実がなる樹木を植えることができれば、学びにもなるし、もしかしたら防災にもつながるかもしれません。
春日池公園が自然豊かな場所であることは分かるのですが、実際にどんな生物がいて、どんな樹木が植えられていてといったことは分からないので、みんなで調査するような機会があっても良いと思います。
[グループB-1]
③中央広場・④芝生広場(②春日池)
公園は多様な人々の利用があるので、個人、グループ、家族など、どんな人々も尊重されることが大切と思います。
芝生広場では、読書や音楽を楽しむ、フリーマーケットなどのイベントの開催ができると思いますが、どんな利用シーンにおいても、他者を認め合い、お互いに刺激をもらえるような場所になればよいと思います。
世代を超えた交流によって、色々なアイデアが生まれると考えます。人口減少・高齢化という社会問題に対し、高齢者の方の健康維持というキーワードはとても大事で、高齢者の方が永く健康で活動できると医療費も抑制され高齢者を支える世代も助かります。
その役割を果たす上で、公園は最適な場所ではないかと思いますので、高齢者の方がやりがいを感じて活動できる場にしていきたいです。
[グループB-2]
③中央広場・④芝生広場(②春日池)
現状では、利用者や使われ方が少し限定的であると感じるため、今は公園をあまり利用していない方をどのように巻き込むかを議論しました。
中央広場は、草が生えすぎているなどの問題もありますが、賑わいのイベントで使うことで、みんなでキレイにしていくようになると思います。
また、色々な方が訪れることができるよう、イベントを実施する時間帯にも配慮する必要があります。
ウォーキングイベントや、イルミネーション、BBQ、焚火を行えば、色々な人が集まるのではないかと考えました。
また、広場の周囲の樹木が少し多く、広場の様子が見えにくいという意見も出ました。
[グループC]
⑤冒険の国
誰もが楽しめる遊具で、安全に利用できる場所にしたいです。
子どもだけでも遊べる遊具があれば、保護者は安心して見ていることができます。健常者の子どもも、障がいのある子ども一緒に遊ぶことができれば、保護者としても、とても安心して過ごせます。
また、保護者が付き添わなくて良ければ、子ども同士で話しをしやすくなり、子どもたちの交流も増えるのではないでしょうか。
そのためには、多目的トイレなどの施設も整備する必要があると思います。
[グループD]
⑥ばら園(花の広場)・⑦ばら園(四季の森)
ベンチに座ってゆっくりばらを眺めたい、写真を撮りたい、また散策したいという意見が出ました。
ばらの品種ごとの特徴を詳しく紹介するプレートもあると良いと思います。また、春日池公園に隣接している児童公園(ニュータウンえびす公園)にもばら園があるそうで、それら3箇所を回遊できる地図などがあれば良いですね。
みんなでばらを手入れできる仕組みがあれば良いと思います。
自分たちで手入れをすることで愛着が生まれ、一緒に育てることで交流が生まれるといったことにつながるのではないでしょうか。
今回のワークショップでは、公園やエリアごとの特徴をしっかりと押さえ、公園全体のコンセプトや、各エリアの活用方針の基となるたくさんのキーワードを抽出することができました。
次回はこれらを整理し、方針として取りまとめていきます。
最後に、全体を通じての総括をいただきました。
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■ 当日の資料はこちらからダウンロードいただけます。
(福山市公園緑地課ホームページ)
次回のワークショップ
次回は2月18日(日)に開催します。
これからのFUKUYAMA ParkLife LABも是非ご注目ください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
文責:事務局(中電技術コンサルタント(株))田中
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