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ロシアのマスメディア

テレビ放送

 ロシアのテレビ局は、国営の「ロシアテレビ」「第1チャンネル」の他、ロシア公共テレビ、商業放送のNTVなどがある。

  1. Channel One (О компании)
    ロシア連邦で最初に設立された国営テレビ局。巨額の送電コストと総職員数1万人の肥大化した給与で1998年には財政破綻に陥った。国営銀行の融資を受け、閉鎖的な株式会社となり、政府寄りの偏った放送を行っている。取締役会には、プーチン大統領報道官、報道補佐官、ロシア政府参謀長などがメンバーに入っている。

  2. Russia 1 
    ロシアの2番めに大きな視聴者数を誇る国営テレビ局。多くの地域向けに各言語で放送されている。政府寄りの強いバイアスがかかっていると批判を受けている。捏造した内容の報道を行うこともあった。

  3. NTV
    1993年に設立されたロシアのテレビ局。当初は政権批判も辞さない自由な報道姿勢で知られていたが、2000年にオーナーのグシンスキーが詐欺の疑いで逮捕された時、株式の半数を国営企業のガスプロム社が保持することになった。旧経営陣は一掃され、プーチン政権寄りの経営陣に変わることになった。

  4. RT(旧称ロシア・トゥデイ)
    2005年12月10日に開局した、ロシア連邦政府が所有する実質的国営メディア。編集方針は、ロシア、旧ソビエト連邦諸国の文化、生活習慣の発信といった文化面に加えて、大西洋主義と米国の覇権主義に対する批判とロシア批判に対する告発といった政治的な目的を持っている。フェイクニュースの捏造と拡散を行っていると批判されている。

  5. Звезда (スター)
    1998年TVチャンネルを獲得。2022年10月「ロシアの偽情報とプロパガンダの拡散に関与した」という理由でカナダの制裁リストに掲載された。

 テレビ放送においては、多大な費用が必要となり、ロシアにおいてはどの放送局も国からのお金が投入されているように見える。そのため、テレビ・メディアは政権批判の放送はできないような仕組みが出来上がっているのかもしれません。

新聞

  1. Московский Комсомолец (Moskovsky Komsomolets モスコフスキー・コムソモーレツ)
    【左翼ポピュリズム】
    1919年に設立されたモスクワを拠点とする、ロシア連邦の代表的な大衆紙。もともとはモスクワの共産党青年部門であるコムソモールの公式機関紙。ロシアの政治と社会に関する話題を取り上げている。

  2. Аргументы (argumentua)

  3. Комсомольская правда (Komsomolskaya Pravda コムソモリスカヤ・プラウダ)
    【親プーチン】
    1925年創刊のモスクワに本社をもつ日刊タブロイド紙。当初はソビエト連邦共産党(CPSU)の青年部門であるコムソモールの公式機関紙。1990年に発行部数21,975,000部と、日刊紙として世界一を記録。共産主義青年同盟解散後は改革派の独立紙となる。
    半国有の大企業ガスプロムと密接な関係にあるメディアパートナーが所有。
    なお、それとは別にウクライナにはコムソモリスカヤ・プラウダという新聞があり、ロシアの新聞とは関係なく、現在はKP(КП в Україні)と名称変更しています。(https://kp.ua/ua/

  4. Независимая Газета  (Nezavisimaya Gazeta ニェザヴィーシマヤ・ガゼータ 独立新聞)
    【中道主義】
    1991年以降に全国展開した日刊紙。エリツィンの黒幕、政商とも言われたボリス・ベレゾフスキー(Бори́с Абра́мович Березо́вский)に買収されベレゾフスキーメディアグループの一部となる。
    2007年にコンスタンチンレムチュコフ(Konstantin Remchukov)と彼の妻イェレナに買収され、プーチン政権にやや批判的だったが、ノバヤガゼータやメドゥーサと比較して遥かに穏健。現在イズベスチャから発行されている。朝日新聞の特約海外新聞。

  5. Правда (Pravda プラウダ)
    1991年まではCPSUの中央委員会の機関紙で、1912年から共産党の機関紙として開始。国内で最も影響力のある新聞の1つ。
    1996年エリツィン大統領によってギリシャのビジネスファミリーに売却され、民間企業プラウダインターナショナルの管理化に置かれましたが、1996年に内部紛争が発生したため、プラウダは分割され、現在ロシア連邦共産党によって運営されています。
    ただし、プラウダ・オンライン(Provda.ru)は、元プラウダのジャーナリストが運営する個人所有のオンライン紙です。

  6. Лента.ру (Lenta.ru)
    【右翼】
    ロシア語のオンライン新聞。モスクワを拠点とし、ロシア最大のWebポータル、ランブラー(Рамблер)を持つランブラー・メディア・グループが所有している。

  7. Газета.ру (Gazeta.Ru)
    1999年にアントン・ノシク(Anton Nosik)は、Foundation for Effective Politics (Фонд эффекти́вной поли́тики)のプロジェクトとして発足させた。現在は、ランブラー・メディア・グループが所有している。ニュース速報、写真やビデオ、ユーザー投稿によるコメントを特徴とする。
    2016年ブルームバーグのレオニード・ベルシドスキーは、「親プーチンメディア」であると評し、2022年「ベル」はプロパガンダ・メディアとしてリストアップした。

  8. РИА Новости

  9. Вести

  10. Российская газета (Rossiyskaya Gazeta ロシースカヤ・ガゼータ ロシア新聞)
    1990年創刊。本社はモスクワ。ロシア連邦政府の発行する新聞(官報)であり、政府の法令を公式に発表する媒体。国庫からの予算が支出されている。2011年6月21日から日本語版「ロシアナウ」が発行をはじめ、毎月第3火曜日に東京新聞購読者向けに折込されている。

  11. ТАСС (タス通信)
    ロシアの国営通信社。モスクワに本社を置き、国内及びCISに70の支局、世界各地に68の支局を持つ。ロシア最大の通信社であり、世界でも有数の通信社。
    2022年2月27日、「公平なニュースを提供できない」として、欧州通信社連盟(EANA)は、タスを全会一致で排除することを決定した。

  12. Коммерсантъ (Kommersant コメルサント)
    【中道右派、経済自由主義】
    1909年に創刊された、政治・経済記事を中心とする日刊紙。1917年に発行停止になったが、1990年に復刊。ソビエト連邦よりも歴史が長いことをアピールするために現在のロシア語では廃止された黙字「ъ」を末尾につけている。
    1997年、エリツィンの黒幕、政商ボリス・ベレゾフスキーがコメルサント出版を買収した。2006年には、ガスプロム・インベスとホールディング代表ありシェル・ウスマノフ(Алише́р Бурха́нович Усма́нов )に売却した。プーチン政権の言論抑圧制作下で貴重な独立系報道機関となっており、2008年BBCは、コメルサントをロシアを代表するリベラルな報道機関であると述べましたが、12月9日、英語の記事配信は停止され、ロシア語版の発行・発信は継続しています。

  13. Новая газета (ノーバヤガゼータ)
    ロシアの政治・社会情勢を批判的かつ調査的に報道することで知られるロシアの独立系新聞。モスクワ、ロシア国内の地域、いくつかの外国で出版され、印刷版は月、水、金に発行される。
    2022年3月に政府の検閲強化により発行を停止。ウエブサイトもロシア国内ではブロックされ閲覧できません。9月5日にメディアライセンスが取り消された。

  14. REGNUM Информационное агентство 
    ロシアの通信社でありオンライン出版を扱っています。

  15. Новые Известия

  16. Газета СПб

  17. Медуза (Meduza メデューサ)
    【中道主義】
    ラトビアを拠点とする、ロシア語、英語のニュースサイト。2014年にLenta.ruから解雇されたガリーナ・ティムチェンコは、ロシアで独立したメディアの設立が不可能であると判断し、意思を同じくして辞表を提出した20名のジャーナリストのチームと共にリガを拠点として設立。
    2022年2月24日に戦争に反対する論説を発表したため、ロシア国内から閲覧できないようブロックされ、ロシアからの広告掲載も阻止された。財政難に陥り、寄付やサブスクリプションによって資金を集める国際的なキャンペーンが行われた。また、3月11日に国境なき記者団によってミラーサイトが作成された。

  18. Известия (Izvestia イズベスチヤ)
    【親政府】
    イズベスチヤはロシア語で「報道」「新聞」の意味。ソビエト連邦共産党の機関紙プラウダと対の関係にあり、ソ連政府の政府見解が発表されるロシアの全国新聞。
    ソ連崩壊後は、プラウダが政府よりの路線に傾きつつあるのに対して、プーチン大統領に批判的な最後の大手新聞だったが、2005年、半国有企業ガスプロムによって買収された。2008年には、ナショナル・メディア・グループ(NMG)に売却した。
    ナショナル・メディア・グループは、ロシアの国営メディア企業が共同所有し、膨大な数のメディアの株式を所有するメディア・コングロマリット。グループ内で大きな影響力を持つのは、プーチンの個人銀行家として知られるユーリー・コヴァルチュク(Ю́рий Валенти́нович Ковальчу́к)です。

  19. Московская правда(Moskovskaya Pravda モスコフスカヤ・プラウダ)
    【共産主義、左翼ポピュリズム】
    名前の意味は「モスクワの真実」。1918年に発行されたモスクワで最初で最も古い日刊紙。印刷版は2016年6月30日の発行が最後となり、その後は電子版で毎日発行されています。

  20. РБК daily (RBK daily)
    【右翼ポピュリズム、経済自由主義】
    2006年10月に創刊したモスクワで発行されている総合ビジネス新聞。ロシアでは珍しいフルカラーで発行されている。ロスビジネスコンサルティング(RBC)グループの一部です。
    汚職や権力の乱用に関する調査報道でロシア国内で評価されている。元編集長のローマン・バダニン(Роман Сергеевич Баданин)は、プーチンの娘、カテリーナ・ティホノワと当時の夫キリル・シャマロフに関する調査を行い、当局からの圧力により辞任した。(「Putin's People」)また、元編集長のイェリザヴェータ・ニコラエフナ・オセチンスカヤ(ЕлизаветаНиколаевна Осетинская)はドンバス戦争へのロシア軍の参加やウラジーミル・プーチン大統領の家族のビジネスコネクションなどを取り上げ、ロシア法務省から外国代理人(Иностранный агент)と宣言され、行動が制限されている。

  21. Vedomosti (Ведомости ベドモスチ)
    【リベラルな保守主義】
    1999年、オランダのダーク・ザウアー、アメリカのダウ・ジョーンズとイギリスのピアソンの共同ベンチャーとして設立された。2016年に外国人がメディアの株式を20%以上所有することを禁止する法律ができ、政商ボリス・ベレゾフスキーの元同僚であるコメルサントの元最高経営責任者でデミャン・グドリアフツェフ(Demyan Kudryavtsev)とアルカン・インベストメント(Arkan Investment)が株式を取得した。
    急いで売却しなければならなかったので、かなりの安値で売却されたにもかかわらず、アルカン・インベストメントは多額の借金を抱えることになった。そもそも同社には資産と呼ばれるものがほとんどなく、銀行からどのようにお金を借りたかも不透明だった。

  22. Наша версия (Nasha Versia)
    1998年に設立された、モスクワに拠点を置く、週刊タブロイド紙。

  23. Труд (Trud トゥルード)
    【左派ポピュリズム】
    1921年2月19日、モスクワで創刊。労働と経済の分析に重点を置き、公式の政令も掲載されていた。1990年に発行部数21,500,000部に達し、ギネスブックに載った。
    ソビエト連邦崩壊後は21,000,000の読者が失われ、衰退していった。2007年に持株会社Media3の一部となったが、2012年にLabor紙がMedia3から買収した。

 新聞は、比較的自由な発言が許されていたようですが、現在は締め付けがあると思われます。たとえ反体制的な発言ができたとしても、以下のように、ロシアの新聞購読率は非常に低くなっています。

本川裕「社会実情データ図録」より

 「国境なき記者団(RSF)」の言論の自由ランキングで、ロシアは2022年に180国中155位となっています。2015年からの推移を、ロシア周辺の国も合わせて見てみると以下のようになります。


 地図に自由度スコアーを使って色付けしてみました。ロシアのランキングが下がっただけではなく、ウクライナのランキングも下がっています。

ウクライナの報道統制

 2023年1月7日のロシアの新聞「モスコフスキー・コムソモーレツ」で、ウクライナでは、「ウクライナには報道機関がない」「ゼレンスキー大統領が独立系報道機関をつぶしている」とあります。

 実際、ゼレンスキー政権下で2021年2月に3つのテレビ局が放送停止にされています。しかし、そのいずれもが親ロシア派の議員タラス・コザク(Тарас Романович Козак)が所有するテレビ局であり、ロシアのプロパガンダを流していました。

 閉鎖されたNewsOne、ZIK、112 Ukraine(112 Україна)は、タラス・コザクが2019年6月に買い取るまで、最初からロシアのプロパガンダのためのテレビ局であり閉鎖されていたものです。

 タラス・コザクはまた、ドネツク州とルハンシク州で炭鉱を支配し、ロシア勢力へ資金を提供していたと言われています。

 つまり、ロシア側から言えば、ウクライナでロシアのプロパガンダに利用できるメディが廃止されたことに対して憤っているということになります。

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