涸沢に登ってきた

2年ぐらい前からちょっとずつ山に登り始め,先週休みを取って涸沢まで行ってきた.山に登り始めたきっかけは,書店をうろついているときに登山雑誌が目に留まったことだった.雑誌の表紙に載っていた涸沢の紅葉の写真が気になったのだ.何も考えずにその雑誌を買った.それから山登りについて考え始めた.渋谷の桜丘,再開発で姿を消したあおい書店でのことだ.

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「涸沢に登ろう」と思ったとき,登山はほぼ未経験だった.涸沢に行くとなれば泊まりだ.泊まりの登山は体力が要るだろう.まずは近場の山に登って慣らしていくか,と考えた.登った山は高尾山,御岳山,大山,鍋割山,塔ノ岳.赤城山,あたりの日帰りで行ける山である.最初は高尾山を歩いただけで身体が痛かった覚えがある.それが1泊2日で13時間歩けるようになるとは感動だ.体力がつくことを実感することは少ないので,まだまだ俺にも伸びしろがあるんだなと思った.

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涸沢ヒュッテはわりと有名な宿泊小屋で,北アルプスの山を間近で見ることができる.その場にいたおじさん曰く,「山に登ると山が見えないから,涸沢に泊まると山が見れて楽しい」とのことだった.確かに,山に登ってしまうと憧れの山が見れない.なので涸沢あたりから山を見るのが楽しいらしい.

山に登ると山が好きな人しかいない.連帯意識みたいなのがあるのかわからないが,小屋の付近をうろついていると結構な割合で会話が発生する.話しかけたり話しかけられたりしながら,暇をつぶしていた.1人だったし.大体話しかけてくるのはおじさんとおばさんで,同世代との会話を期待したが,そもそも同世代の人間が少なかった.登山って若者の間で流行ってなかったっけ?

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ネタバレが嫌なのであまり現地について調べないようにしていたのだが,小屋で水が汲めることは事前に知りたかった.夜ご飯で隣の席だった男性と「水を汲めるなんて知らなかった」「持ってくる水の量半分でよかった」と会話をしていた.案外そういう人は多いらしい.秋の1泊2日なら途中で水を汲むことを前提として1.5リットルをザックに入れて登れば十分なのではないか.また登る機会があれば今回よりも荷物を軽くできるかもしれない.

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別館の部屋を割り当てられたので本館のことはわからないが,別館の奥の部屋にはコンセントがあった.ネットはテラスで微弱に拾えるが,天気によっては通信状態は悪い.売店は夕方まで営業しているので,それまではご飯を食べられる.水はいつでも汲むことができるので,湯を沸かす装置とフリーズドライの食事があればいつでもご飯は食べられる.私は家に備蓄してある非常食を山に登るたびに持っている.今季からモンベルのジェットボイルを導入したけど,魔法みたいな速度でお湯が沸くので便利.



COVID-19の影響により,部屋を広々使うことができた.混雑時は布団一枚に三人が寝るような運用らしいが,スクロールで区切った部屋に3人が割り当てられていた.布団は一人一枚,十分すぎる広さだった.その辺を歩いていたおじさん曰く,「昔は床にぎゅうぎゅうに押し込められて寝ていたもんだから,トイレに行って帰ってきたら自分の寝てたスペースが無くなっていた,なんてこともあった」とのこと.神経質な性分なので多分平常時に泊まることは無理だろうなと思った.次はテント泊かなあ.

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上高地のバスターミナルから20分歩いた上高地温泉ホテルには外来入浴ができる温泉がある.清潔感があり,露天風呂もある.またお客も少ないので,あの辺りの山に登った人は早めに下山できるように計画を立てて寄ってみることをオススメする.

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これは紅葉の時期の涸沢に登るきっかけとなった雑誌

紅葉の時期に涸沢に行くことは,私が欲しかったものなんだろうと思う.だけど欲しいものと自分の間にはギャップがあった.山に登る体力が無かったり,装備が無かったり,そもそも紅葉が見れるシーズンが限られていたので,紅葉が綺麗な日を狙って予定を立てて調整する必要があった.しかも宿の予約はすぐに埋まってしまう.それらの足りないモノを見つけては埋めたり,計画を立てて物事を進める作業は,涸沢に登ることとは別の意味で楽しいものだった.冒頭に掲載した写真は,道中撮影した写真の中で一番のお気に入りだ.PCのデスクトップ背景に設定して毎日眺めている.色々と足りないモノを埋めてみることができた風景なので,とても大切にできる写真を撮ることができた.何かを大切にできるのというのは,気分が良いことであることがわかった.

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