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僕、ベタ日記①出会いの時間

僕はベタ。もうすぐ名前がプレゼントされるんだって!楽しみだなぁー。僕は淡水魚で、ダブルテールっていう種類のベタなんだ。僕らはタイとかマレーシア、つまり南国から渡ってきた魚だから、正直言って寒いのは苦手。日本の冬は寒いって聞くから、今からちょっとビクビクしてるんだ。『でも、君、水の中に居るじゃん?!』って思うでしょう?でも、外が寒ければ当然、水の温度も下がるから、これ、魚にだってカンケイーある話でしょ?

その日、《売られている》僕を見に来たのはパパ、ママ、娘ちゃんの3人だった。みんなは最初、ハーフムーンという種類のベタを探していたみたい。ヒレがとっても立派なやつ!でも、気に入った色の子が居なくて、がっかりしていたの。そこで僕は決めたんだ!『よし!ちょっとアピールしてみよーう』って。本気を出せば僕だって…と思うと気持ちが高ぶった。並べられた水槽を真剣に見比べる《あの人》の目にどうすれば映り込めるだろう?僕はそればかりを考えて、必死に泳いで見せた。ヒレをふりふりしたりね。どうやらこの作戦は成功したようで、すぐにママが気づいて言ったんだ。『この子、元気だねー』って。続けてママは、生き物は元気が一番!であることを娘ちゃんに力説してた。ただ、僕はね…。他の子達に比べて、元気には自信がある!上手に泳げるし、ご飯だってパクパク食べれるよ。でも、小さい。《こぶり》なんだって。お店の人が、申し訳なさそうに説明している姿を何度も見てきた。

僕たちベタは美しいヒレを優雅に見せつけるように泳ぐことで、人から『綺麗』と称賛される。だから、ヒレの美しさや状態はとっても大事なんだって。僕のヒレは小さい。だって、これは仕方ないよ。身体が小さいんだからね。パパが隣りの水槽のブルーの子に目を向けたことに、すぐに気づいた。悔しいけど、彼の方がヒレが綺麗だもの。何度もこんな思いをしているから、もう分かるんだ。慣れっこだよ。お店の人が『フレアリングを見てみます?』と言って、それぞれの水槽の間の仕切りを外した。これ、苦手なんだよね…。仕切りが上がったその瞬間、待ってました!とばかりに、左隣りのブルーと右隣りのブラックが大きくヒレを広げ、見せつけるポーズを取った。真ん中の僕はどうしたかって?そんなの決まってる!真っすぐママの方を見て、ピロピロと小さなヒレを振ってみた。両手バイバイをしているみたいにね。だって、彼らと同じ方法で勝てる自信は全くないもの。

ベタは闘魚とも言われている。だから、美しくて勇ましい子を選びたいパパは正しいんだ。でも、僕は最後まで諦めずに、何度も何度も、ママや『大きな目が可愛い』と言ってくれる娘ちゃんの目に留まるよう、元気に泳いでみせた。だって他にどうしたらいいのか分からなかったから…。でもね、気づくと3人の姿は無かった。『駄目だったんだ…』とひどく落ち込む僕に、隣りのブルーは言った『まぁ、次があるさ』って。ブラックは『その小さなヒレじゃ、一生無理だぜ!』とからかうように言った。でも、僕には分かる。彼らも本当はひどくがっかりしてるんだ。

しばらくして、目の前にもう一度《あの子》が現れた時、それはもう!僕ら3匹、驚いた。ママは僕をジーっと見つめ、何か定員さんに聞いている。そして娘ちゃんに向かってこう言った。『この子でいいの?』って。すると、娘ちゃんは『この子がいい』きっぱり答えてくれたんだ。

パパは『大きくなるといいなー』と最後まで、希望を口にしていたけど、どうだろう…。こればっかりは分からない。僕は最後に、《ここ》の仲間たちにヒレバイバイをした。ブルーもブラックも面白くないって感じでこちらを見ていたけど、君たちの気持ちは分かる。大丈夫。きっと、君たちにだって、他の皆にだって、必ずいい出会いがあるはずだよ。だって、ここの誰より小さなベタの僕に、今日家族ができるなんて誰が思った?僕は仲間たちと、そして僕自身の幸せを心から願って、《売り場》を後にした。

ビニール袋に入れられた僕を両手で抱きかかえ、転ばないように、大事に静かに運んでくれた娘ちゃん。物静かだけど、君が優しい女の子なんだってすぐに分かったよ。これから、もっと仲良くなりたいな。君のパパとママともね。何だかドキドキする。だってね。今、気づいたけど、この家で魚は僕だけなんだもーーん!
またね。

ぼくベタ日記①を読んでいただき、ありがとうございます。新シリーズ開幕です。娘が知ったら、『大丈夫…?』と言うことでしょう・笑。新しい家族、ベタくんの今後の活躍にも期待です!

それでは、次回もどうぞよろしくお願いします。


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